堀江貴文著『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』は、なぜ働くのかということをテーマにした本です。堀江氏は東大を中退してインターネット事業会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を設立し、東証マザーズに上場後、会社を時価総額8,000億円までに成長させました。「時代の寵児」と目されましたが、2006年1月、証券取引法違反容疑により逮捕されます。
2013年3月27日に仮釈放され、11月10日に刑期が満了となりました。本書が発行されたのが2013年10月31日、刑期満了の直前です。堀江氏が再スタートを切った、まさにその時に発行された本です。『ゼロ』。本書より、次の7つのポイントでご紹介します。
- 何のために働くのか
- 「小さな成功体験」を積み重ねよう
- お金から自由になる
- どんな仕事にも「やりがい」はある
- 「やりたいことがない」は嘘である
- 塀の中にいても、自由になれる
- 堀江氏の、「最大の反省点」
目次
何のために働くのか
刑務所で自由がない時に、堀江氏が一番考えたことは、「働きたい」ということでした。私たちは働くことで、世界中の人とつながることが出来、誰かの役に立つことが出来ます。誰かに貢献することを実感することで幸福を感じるように、人間はプログラムされています。
しかし、現代のほとんどの人は、働くことを何かを我慢することだと思っています。そしてお給料を、我慢と引き換えに受け取る対価だと思っています。しかし私たちは、人生の多くの時間、仕事をして過ごします。つまり、仕事を我慢の時間にしてしまうと、人生のほとんどの時間が我慢の時間になってしまいます。
もし、今の仕事が我慢の時間なら、もっと自分のやりたいことにチャレンジするべきです。たとえ失敗しても、人生にマイナスなんて存在しません。全てを失ったとしても、ゼロというスタートラインに戻るだけだからです。所詮失敗しても、死にません。それよりも危険なのは、失敗を恐れてチャレンジしないことです。
人生の最も多くの時間を過ごすのが仕事の時間なので、仕事は楽しめることを選びましょう。

「小さな成功体験」を積み重ねよう
堀江氏は、学生時代に友達とヒッチハイクをしていました。その時の経験が、自信につながり何でもチャレンジしてみるという今の堀江氏を作っているそうです。
そのヒッチハイクとは、1円も使わずにどこにでも行くという旅です。本当に1円も使わずに、全国色々なところをまわることが出来たのだそうです。この、何もない状態でも自分のやりたいことを達成できるという体験が、堀江氏の自信につながっています。皆が無理だと思っているような無茶な事を達成すると、大きな自信につながります。
貧乏状態から復活するのも自信がつきます。貧乏を経験すると、どんな状態でも死なないということが実感できるからです。恐怖心がなくなり、ちょっとした無双モードのようになります。
このように、皆が困難だと思うような状態でも、自分は出来ると思って行動し、実際にそれが出来たら自信がつきます。この小さな自信が積み重なって、どんどんチャレンジしていけるようになり、最終的には何でも出来るという大きな自信に育ちます。

お金から自由になる
多くのビジネスマンは、自らの提供する「価値」をお金に換えているのではなく、「時間」をお金に換えています。たとえ会社員であっても、自らの給料を「稼ぐ」意識を持つ必要があります。積極的に稼ぐためには、「価値」を提供しなければなりません。これからの時代は、「時間」以外に提供可能な「価値」を持っていない人や、給料をもらうだけの人は淘汰されていくでしょう。
人生が豊かになっていない根本原因は、何よりも「時間」です。貴重な時間を奪われている状況、時間以外の価値を提供できていない状況が、人生を不幸にします。儲けるために働くのではなく、お金から「自由」になるために働きましょう。「自由」を手に入れるために働きましょう。
どんな仕事にも「やりがい」はある
どんな仕事にも「やりがい」はあります。なぜなら、やりがいは見つけるものではなく、自らの手で作るものだからです。やりがいを作るとは、「どうすればもっと良くなるだろう」と工夫することです。自分の創造性を発揮することで、仕事の喜びは生まれてきます。
自分の創造性を発揮して仕事が改善されていくと、成長を感じて、さらに仕事が楽しくなるというポジティブなループが生まれます。「成長」と「創造」が、仕事を楽しくする要素です。
したがって、全ては仕事に対する取り組み方の問題であり、やりがいを作るのも自分であれば、やりがいを見失うのも自分なのです。

「やりたいことがない」は嘘である
やりたいことが見つからないという学生に、「ジャスティン・ビーバーやメッシの生活って楽しそうじゃない?」と聞くと、「楽しそう」と答えるそうです。
また、「コンビニで一生働く人生より、ブラピの人生の方が楽しそうじゃない?」と聞くと、「楽しそう」と答えるそうです。
つまり、やりたいことがなかったり、理想の生き方がないわけではなく、ただ、「自分にはどうせ無理だ」と決めつけているだけなのです。
確かに、サッカーをしたことがないのにメッシにはなれませんが、そこを目指すことである程度までは到達する可能性が上がります。出来ると思って目指すのが大事なのです。全く目指していなかったのに、ある日突然メッシになるということはあり得ません。まずは目指さないと出来るものも出来なくなるということです。
ほとんどの人が最初から「出来ない」と諦めています。出来ないことばかり考えていると、やりたいことが浮かばなくなり、欲望のサイズがどんどん小さくなっていきます。どうせできないという思考では、ワクワクするようなことは全部、自分以外の別の世界の話になってしまいます。
逆に「何でもできる」という考え方になれば、やりたいことは無限に出てきます。「やりたいことがありすぎて」という人は、全ての物事に対して、自分は出来ると確信している人です。
成功できる人と出来ない人の差は、能力ではなく考え方の違いです。成功しない人は、出来ない理由を考え、成功する人は、どうすればできるだろうかと考えます。
ほとんどの人は、「どうすればメッシになれるだろう」と真剣に考えることはしません。普通に考えると、無理だし馬鹿げているからです。成功者は、馬鹿げているものを真剣に目指すので、ある意味馬鹿だということです。
塀の中にいても、自由になれる
刑務所で自由を奪われていた堀江氏のもとに、自由であるはずの一般読者から、仕事や人生の相談を受けていました。ここから分かるのは、自由とは心の問題だということです。
普段私たちは、拘束されているわけでもないのに、つい不自由を感じてしまいます。しかしこの不自由は、自分の心が生み出しているものにすぎません。「出来ない」といっていいのは、刑務所の中だけ。私たちは本当は、何でもチャレンジ出来る環境にいます。

堀江氏の「最大の反省点」
堀江氏は逮捕されてから、コミュニケーションに対する考え方、やり方を変えました。
昔は、世の中にはびこる不合理なものを嫌う、徹底した合理主義者でした。あいまいな感情の言葉よりも端的な理論の言葉を使っていました。つまり、正論をズバズバ言っていたということです。彼はそれを、「あるべき」コミュニケーションの形だと思っていました。
しかし、理詰めの言葉だけでは納得してもらえないし、誤解を生み、人を傷つけることもありました。自分の考えを理解してもらうためには、まず自分という人間を理解してもらう必要があります。そのためには、言葉を尽くして丁寧に説明しなければなりません。
堀江氏は、その認識が全くなく、多くの誤解を生んでしまいました。これが最大の反省点だと、彼は言っています。

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私は堀江氏好きなのですね。思ったことをそのままはっきり言う方ですが、私は彼の言うことにはほぼ全て同意です。
この本を読むと、彼の心の内が分かります。私は泣きました。良書です。
本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』 をご参照ください。
☆堀江氏の他の本の紹介記事、お金のために働かない。正社員の幻想『非常識に生きる (ShoPro Books)』も、ご参照ください。
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