『シンプルに考える』の著者森川 亮氏は、LINE株式会社CEOを退任し、現在動画メディアを運営するC Channel株式会社の代表取締役社長をされている方です。
「何が本質なのか?」を徹底的に考え、本当に大切な1%に100%集中することで、仕事も人生もうまくいくと森川氏は言います。
本書を次の5つのポイントでご紹介します。
- ユーザーが本当に求めているものを提供する
- 「お金」や「名誉」を求めない
- ビジネスは「戦い」ではない
- 「偉い人」はいらない
- 実質のみを追求した結果、生まれた方針
ユーザーが本当に求めているものを提供する
本書全体の趣旨は、「たった一つの本質に集中すること」、これだけです。
会社にとって一番大切なことは、「ヒット商品を作り続けること」です。
だからビジネスの本質は、「ユーザーが本当に求めているものを提供し続けること」です。
そのためには、ユーザーのニーズ応える情熱と能力を持つ人、世の中に対する理想を持つ人だけを集めることです。そしてその社員たちが、何ものにも縛られることなく、その能力を最大限に発揮できる環境を作り出すことが重要です。
そのための必要なことだけをやり、不要なことはすべて捨てます。徹底的にシンプルに考えるのです。「あれもこれも大事」と、色々と付け加えてはなりません。
何が本質かをとことん考えつくし、最も大切なものだけ残し、それ以外は切り捨てます。
人材、資金、時間などの限られたリソースを、あれも大事、これも大事と分散させてはなりません。「ユーザーが本当に求めているものを提供する」という本質のみに、全力で集中するのです。ビジネスで成功させる方法は、これしかありません。
仕事で意識しなければならないのは、「新しい価値を創造すること」だけです。本当は、世の中はいたってシンプルなのです。

「お金」や「名誉」を求めない
世間では、安定・収入・地位を求める人が多いです。
例えば、大企業に就職すれば安定だ、このビジネスは儲かる、出世は名誉だ等といった考え方です。しかしこうした生き方は、ビジネスの本質からずれているため危険です。
ビジネスとは「需要と供給」の世界です。
原始時代に、どのように貨幣が生まれ、どのように仕事が生まれたかを考えるとイメージしやすい。例えば、おなかがすいた人に食料を分けてあげる、寒い日に衣服を差し出す等、人々が求めているものを与えることが出来れば、どんな時代でも生きていけるのです。
ビジネスとは、価値の交換です。つまり、このようなサービスがあれば喜ぶ人がいるというものを提供するということです。
安定・収入・地位を求めている人は、相手に価値を提供するという本質を見失っています。本質を見失ったままでいると、いずれ社会の分業体制や貨幣経済から排除されることになります。価値を提供しない人が、そのうち社会の中で苦しい立場に追いやられるのは、当たり前なのです。
実際、価値提供より儲けを優先させ始めると、ユーザーはその変化に必ず気づきます。そして、その変化に気づいたユーザーは一気に離れ始めます。間違った思考は、間違った結果を引き寄せるということです。
価値を生み出すことだけに集中していれば、路頭に迷うことはありません。いい仕事をするためには、常に本質を考え、人々が本当に求めているものを感じ取る能力を磨くことが大切です。

ビジネスは「戦い」ではない
ビジネスを「戦い」だと考えると、顧客志向ではなくなってしまうため、本質から離れます。ビジネスは、ユーザーを第一に考えなければなりません。
例えば、ライバルからシェアを奪い取ること、ライバルより価格を下げること等、ライバルばかりに気を取られていてはいけません。大切なのはユーザーです。
目的は、ライバルに勝つことではなく、世の中に価値を提供し、多くの人に喜んでもらうことです。本質を忘れてはなりません。
シンプルに、どうすればもっと価値を提供することが出来るだろうか、ということだけを考えることです。最終的に勝利するのは、このようなタイプです。本物のブランディングは、「価値を提供すること」のみに集中することで生まれるのです。
人生も同じことがいえます。人生の本質は、「幸せになること」です。競争に勝つことではありません。また、競争の人生は、最終的には全員が負けるようにできています。

「偉い人」はいらない
リーダーは、意思決定が重要な仕事ですが、意思決定も本質のみに集中することが大切です。トップに立つ人の決めるべき最重要の項目は、決める人を決めること、つまり誰に任せるか、です。その1点のみに集中し、決断すれば良いのです。
現場がフルスピードで走っている時は、リーダーは的確かつスピーディに意思決定しなければなりません。しかし、一人で全ての意思決定をするのは不可能です。
ここで、シンプルに考えるのです。つまり、自分が直接決断する内容を減らすのです。自分にしかできない意思決定に集中すればいいのです。それ以外は全て人に任せます。
対象について、自分より詳しい人に権限を与えて、全ての意思決定を一任するのです。その一任する相手を誰にするかということが、リーダーの最も重要な意思決定です。
会社なら、現場にすべての意思決定をさせた方が良いのです。ユーザーに最も近い現場スタッフが、最もユーザーの気持ちが分かるからです。その道のプロに決定権を与えて、自由にやらせることが会社の成功の秘訣です。
決定権限を与えて自由にやらせることで、チーム全体でフロー状態に入ることが出来、いい仕事が出来るようになります。
「決める人を決める」、これだけがリーダーが集中するべき最重要の意思決定です。そして、全てをその人に任せて、口を挟まないことです。

実質のみを追求した結果、生まれた方針
筆者が実質のみを追求した結果生まれた方針を、理由とともに列挙します。
- 戦わない:ライバルではなくユーザーだけを見るため
- ビジョンはいらない:未来を予測するより、目の前の事に集中するため
- 計画はいらない:計画があるから、変化に弱くなるため
- 情報共有はしない:余計な情報を知れば、余計なことを考えるだけだから
- 偉い人はいらない:本物のリーダーは、自分の夢で人を動かすから
- モチベーションは上げない:やる気のない人はプロ失格だから
- 成功は捨て続ける:自分の市場価値を高める唯一の方法だから
- 差別化は狙わない:ユーザーは、「違い」ではなく「価値」を求めているから
- イノベーションは目指さない:目の前のニーズに愚直に応え続けるため
- 経営は管理ではない:自由こそイノベーションの源だから
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「シンプルに考える」ことは、全てのことに当てはまります。
プレゼンも、たった一つの事だけ話した方が、相手の記憶に残ります。
日常でも、マルチタスクよりもたった一つのことに集中した方が、生産性が上がります。
人生でも、たった一つの目標に向かって突き進むタイプの方が、夢をかなえます。
「シンプルに考え」、本質的なことに1点集中し、様々なことを実現していきましょう!

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本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『シンプルに考える』 をご参照ください。
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