貴方の会社で、こんな会議をしていませんか?
- 分厚くて読み切れないほどの資料が配られる
- 質疑応答もあるが、発言するのは偉い人たちか、一部の人
- 大会議室に、多数の関係者が集められる
- あれこれ話しても何も決まらずに、次に持ち越しという結果になる
これ、私は非常に心当たりがあります。
その、開こうとしている会議の目的は何ですか?わざわざ人を集めて会議を開かなければならない合理的な理由はありますか?なければ、その会議は無駄なのでやめましょう。
このような無駄な会議を何とかしたいと思っている方へ、『amazonのすごい会議―ジェフ・ベゾスが生んだマネジメントの技法』という本の中で紹介されている、Amazon で実際に行われているすごい会議を、次の2つのポイントでご紹介します。
- 会議の資料のルール
- 会議の種類
目次
会議の資料のルール
「会議の成否は、資料で決まる」
この考え方がAmazonのスタンダードなので、会議資料に関するルールが3つあります。
1.パワーポイント資料は禁止
Amazonでの良い資料の定義は、「誰でも、いつでも、正しく分かる」資料のことです。
パワーポイントの資料は要点のみが書かれており、口頭説明があること前提で作られています。つまりこの資料では、会議を開かないと内容を正しく理解することが出来ません。
例えば、パワーポイントに「最高の顧客体験を提供します」という文言と、イメージ図が掲載されているとします。会議の当日に口頭でどのようなことを実行するのか等の説明を受けますが、後日改めて資料を見た時に、確実に内容を思い出せるでしょうか。
人の記憶はあいまいなものです。「誰でも、いつでも、正しく分かる」ためには、会議にいなくても、後日でも確実にわかる資料でなければなりません。
だからこそ、Amazonではパワーポイントの資料ではなくワードで資料が作成されます。
2.箇条書きではなく文章で書く
箇条書きは便利ですが、行間の解釈は人によって異なります。そのためAmazonでは、箇条書きではなく文章で資料を作ります。
文章で資料が書かれているため、会議の始まりは資料の黙読から始まります。そして資料を全員が読み終わった後、疑問点について議論に入ります。
ですので、「資料を読めばわかる」という説明の時間がありません。
また、パワーポイントの資料がNGという理由にも通じますが、「誰でも、いつでも、正しく分かる」資料のためには、解釈が人によって異なる資料はNGです。
例えば、「高価格商品の販売により、顧客単価アップを狙います」という資料はNGです。なぜ高価格商品なのかという背景、顧客単価アップを狙う理由等々を、資料に文章で書くのです。
資料の作成は大変ですが、会議は効率的になり、その後の認識の違いによるロスも無くなるため、かえって組織全体で見れば効率的になると、Amazonでは考えられています。
つまり、「誰でもすぐに理解できる文章を書く力」は、Amazonでは必須のスキルだということです。

3.会議資料は2種類、1ページか6ページ
文章を書くと言っても、無駄に長い文章はNGです。
Amazonの基本は、1ページの資料です。(表面のみ)
A4の紙1枚に、背景、課題、実行したこと、目標等の概要を文章で分かりやすく書く必要があります。
この分量におさめるのは大変ですが、分量が少ないからこそ、会議のはじめに文章を読む時間を取ることが出来るのです。
なお、もっと大きなプロジェクトの場合は、1ページでは書ききれません。そのような場合のみ、6ページの資料になります。

会議の種類
Amazonには、次の4種類の会議があります。
1.意思決定会議
意思決定会議の目的は、何かを決めることです。
会議が終わった後、特に何も決まっていない、「何を(What)、誰が(Who)、いつまでに(When)」やるのかが分からないような会議は、Amazonでは行われません。
この 「何を(What)、誰が(Who)、いつまでに(When)」 を具体的に決めてこそ、意思決定会議の目的は果たせたと考えます。
例えば、「来月くらいまでに売上を向上するためのプランを営業部が決める」というのは具体的に決まっていないからNGです。売上向上プランのレベル感はどの程度なのか、営業部の誰が主軸になるのか、来月のいつまでにどのような形式で出すのか等ということが、曖昧です。
会議資料には必ず 「何を(What)、誰が(Who)、いつまでに(When)」 を書いておく必要があります。
またAmazonの意思決定会議には、 “Have backbone; Disagree & Commitment” の精神を共有しているという前提が重要です。
“Have backbone; Disagree & Commitment” の精神とは、しっかりとした考えを持ち、反論があれば会議の場で唱え、一度同意したらコミットすることです。
言い換えると、納得するまで議論し、納得したら全力で取り組むということです。後から文句を言うことは許さないという精神です。
そのため、Amazonでの最高の意思決定会議とは、「一言もしゃべらない会議」です。
資料を読み、疑問点がないから発言しない。そしてその内容で承認するので、コミットするということだからです。

2.アイデアだし会議
Amazonでは、アイデアを求められる場合に良く「ブレスト(=ブレインストーミング)」を行います。
このような会議は、あまり実施されていないのではないでしょうか。このような会議をもっと実施するべき、というのが本書の主張です。
ブレストが効果的な場面とは、ゴールを達成するための解決方法が分からない、自分1人では思いつかないという時です。思考を横に広げて、様々な可能性を検討する時等に有効です。
ブレストのやり方は、以下のようにすると良いです。
- ホワイトボードに書く:参加者が見えるように
- クイック&ダーティ:多くのアイデアを出す
- メンバーには多様性を:同じような思考を持つ人で集まるより、全く別の思考を持つ人とする方が良い。
- フレームワークでグループ分け:アイデアは、ある程度の制限、枠組みを設ける方が出しやすい。既存のフレームワーク(3CやSWOT分析等)を活用すると良い。
ブレストで気を付けなければならないのは、やりっぱなしにしないことです。
アイデアだしの目的も、新たな解決法を実行フェーズに進めることなので、ここでもやはり3つのW( 何を(What)、誰が(Who)、いつまでに(When))を決めて、終わりましょう。

3.進捗管理会議
プロジェクトの成否は、進捗管理で決まります。
プロジェクトは、実施して終わりではなく、進捗がどうなっているかを確認しながら走ることが大切です。
例えば、新商品を発売し、1年後の目標が100億円であった場合、初月の売上はどうなっているのか、目標通りに進んでいるのか等を管理していくことが必要です。
ここで重要なのが、”KPI” の設定です。”KPI” とは、最終的に達成したい目標を分解して、数値に落とし込み、見える化したものです。
先の例では、最終目標である100億円を分解します。単価1万円、初月売上5億円等とします。つまり、”KPI” の数値を積み上げていくと最終的な目標を達成できるような構造にするということです。
いきなり「売上100億円」と言われるより、細分化された “KPI” を追いかける方が、何をやるべきかが明確になり、 “KPI” に届かなかった場合、早い段階でその原因を分析し、対策を打つことも可能になります。
Amazonでは、「進捗管理会議」を週1回程度実施するくらい、この会議を重視しています。
ただ報告するだけではなく、”KPI” に対してそのような結果になった理由や対策を、担当者は深堀して会議にのぞみます。「後日調べて報告します」という回答をしてはいけません。それが出来ない場合は、会議は開きません。
また、例え最終目標を達成しても、手放しで喜んではいけません。なぜなら、その内容が、設定した “KPI” が積みあがった先にあったのかどうかという方が大事だからです。
ビジネスは単発で成功すれば良いのではなく、継続性が何よりも大切なので、設定した “KPI” の結果はどうだったのか、把握したうえで評価し、改善を重ねていく必要があります。

4.情報伝達会議
基本的には必要ない会議と考えられています。
メールや電話で出来ないか、あえて会議にする必要性は本当にあるのかを考え、極力この「情報伝達会議」を減らす努力をするべき、というのが本書の主張です。
わざわざ部署の人全員で集まり、色々な人の報告を聞き、会議が終わった後、何か得るものや次の行動につながるものがないという会議は、思い切ってやめましょう。

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本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『amazonのすごい会議―ジェフ・ベゾスが生んだマネジメントの技法』 をご参照ください。
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