『脳にまかせる勉強法』の著者池田義博氏は、2013年から2019年まで6年連続で記憶力日本選手権大会で優勝し、2013年にロンドンで開催された世界記憶力選手権においても日本人初の「記憶力のグランドマスター」の称号を獲得された、いわば記憶の天才です。1時間あればランダムに並んだ数字の順番を1,000桁以上覚えることも出来るそうです。
覚える力は年齢と関係なく伸ばすことが出来ます。記憶をするための脳の仕組みを理解し、その性質を利用すると、誰でも短時間で効率よく記憶することが出来るのです。
記憶のスキルは、資格、語学だけでなく色々なところで役に立ちます。本書を次の7つのテーマでご紹介します。
- どんな人でもいつからでも記憶力は上がる
- 脳をだまして記憶力を上げる方法
- 記憶の定着には必ず復習が必要
- 脳に任せて記憶する
- 勉強の完成度が高くなる「3サイクル反復速習法」
- 「読み」に徹してハイスピード学習を続ける
- 脳に任せて言葉にする「1分間ライティング」
目次
どんな人でもいつからでも記憶力は上がる
今まで一般的に、年齢とともに脳の力は衰えていく一方だと考えられてきました。
しかし近年の研究によって、年をとっても脳を使うことによって新しい神経回路を増やすことが出来ることが明らかになりました。神経回路を増やせるということは、能力アップできるということです。
池田氏は、40代半ばで若い人たちに交じって記憶力を競う大会「記憶力日本選手権大会」に挑戦されました。それは、「脳はいつからでも鍛えることが出来る」ことを実証するためでした。
元々著者は記憶に自信がなかったそうですが、脳の仕組みを知って、記憶力や集中力が増すテクニックを使ってそれを克服されました。
記憶力を上げるのに必要なのは、元々の脳の性能ではなく技術です。
著者が実践したテクニックを使えば、暗記が苦手な方でも確実に記憶力を上げることが出来るはずです。

脳をだまして記憶力を上げる方法
記憶は、脳を使って行う作業です。そのため、脳の記憶の仕組みを理解する必要があります。
脳には、記憶をコントロールしている「海馬」と呼ばれる部位があります。そして記憶を長く残せるかどうかのカギとなるのが、この「海馬」です。
「海馬」は、この情報は重要だから残す、この情報は必要ないから捨てるという判断を行います。そのため、脳をだます=この情報は重要だと思わせる ことが出来れば、たくさんのことを覚えることが出来ます。
そのためには、「集中」することと「回数」が必要になります。
脳に、「この情報は重要だ」と思わせて記憶スイッチを押させる(記憶に残す)には、集中できる環境を整える必要があります。なぜなら、ながら勉強等をしてしまうと、その情報は「海馬」が不要な情報だと判断するからです。
また、脳は何度も頭に入ってくる情報に対して、「こんなに何度も入ってくる情報なら重要に違いない」と判断します。勉強をする時、復習が必要な理由はここにあります。
そもそも、記憶することは脳にとって非常に負荷がかかるため、なるべく記憶しない仕組みになっています。だからこそ、記憶するためには「集中」して「何度も」その情報に接しないと、記憶できないようになっています。記憶の定着は、復習の回数とも言えます。

記憶の定着には必ず復習が必要
勉強したことを覚えているということは、5分だけではなくずっと覚えているということです。
しかし脳は、パンクしないためなるべく物事を記憶しない仕組みになっています。しかもかなり急激に忘れるようになっています。
下図はエビングハウスの忘却曲線です。記憶の忘却について調べた実験結果から作られたものです。これによると、人は何かを覚えてから20分ほどで約42%、1時間後には56%、1日後には67%、1か月後には79%の記憶が失われることが分かります。

脳は忘れる仕組みになっているので、忘れるのは当たり前なのです。
ここで大切になるのが「復習」です。復習を繰り返すことにより、先ほどの忘却曲線の下落が緩やかになり、最終的には水平になります。水平になるということは、完全に脳の中に記憶された状態ということです。
誰も、勉強した内容を一度で覚えることは出来ません。だからこそ、復習に力を入れるのが大切だということです。
その際の復習の仕方は、とにかくスピードを優先して出来るだけ早く全範囲の勉強を終わらせ、それを何度も繰り返すのが効率的です。
例えば100個の英単語を覚えるとき、①4時間かけて1日で覚えようとするのと、②1日1時間で100個覚えようとするのを4日続けるのでは、圧倒的に②の方が覚えられるという結果になります。
つまり、薄い記憶を何回も行う方が、じっくり時間をかけて一度で覚えるよりも定着するということです。
脳に任せて記憶する
効率よく記憶するための最大のポイントは、「脳に任せる」ことです。
記憶することは根性がいるイメージがあるかもしれませんが、実はあまり関係ありません。記憶に必要なのは、「覚えよう」とする意思だけです。その後の学習自体は「作業」として淡々と進めれば良いのです。
脳は、寝ている間に昼間入ってきた情報を自動的に整理して記憶の強化のために働きます。そのため自分がやるべきことは、覚えようとする作業を単に繰り返すだけです。それさえしておけば、あとは脳が勝手に記憶してくれます。
ほとんどの人は、「今これを一回で覚えよう!」と思って暗記するのですが、結局覚えられず、落ち込んで、記憶することをやめてしまいます。
そうではなく、「自分は作業をするだけ、記憶は脳に任せる」という気持ちで勉強に取り組むと、変なプレッシャーもなくなり、着実に覚えていけるということです。

勉強の完成度が高くなる「3サイクル反復速習法」
例えば英単語のように1ページずつ覚えていく場合、その1ページを3回繰り返しながら勉強を進めていきます。
1ページの学習を終わらせ、ページの数字に〇をします。そしてもう一度1ページの学習を終わらせ、ページの数字に〇をします。(2回〇をしているので◎になっているはずです)
そして、次のページである2ページ目の学習を終わらせ、ページの数字に〇をします。
◎になったら次のページに進み、次のページで〇をしたら◎になっているページに戻るということです。
数字で表すと、次の通りです。
①⇒①⇒②⇒[①⇒②⇒③]⇒[②⇒③⇒④]⇒[③⇒④⇒⑤]⇒[④⇒⑤⇒⑥]⇒[⑤⇒⑥⇒⑦]⇒[⑥⇒⑦⇒⑧]・・・
それぞれの数字が3回登場しているのが分かると思います。
なお、上の例では1ページを1つの範囲(①等)としていますが、慣れてきたら例えば10ページを1つの範囲(①等)としても良いです。

「読み」に徹してハイスピード学習を続ける
「3サイクル反復速習法」の最大の目的は、記憶を保つことです。
脳にとって復習と言うのは、少し時間が過ぎてから行うことに意味があります。その時覚えていないことが分かった部分について、脳は、この部分の記憶が弱いのだと自覚し、覚えてくれます。
この勉強法のもう一つの重要ポイントは、スピードです。そのためには読むことに徹するのが良いです。
例えば問題集の場合、問題を読んだ後すぐに解答を読めばいいのです。(つまり答えを見ながら解くということです。)そして、分かりづらいことがあっても構わず次に進みます。そこで分からなくても後で理解できる問題であることも多いので、そこで時間を取られるよりも先に進んだ方が効率的なのです。とりあえず頭に入れておくだけで、無意識の間に脳が勝手に考えてくれるのです。
「3サイクル反復速習法」をハイスピードで行うと、短期間で全範囲を効率よく記憶することが出来るのです。
脳に任せて言葉にする「1分間ライティング」
「3サイクル反復速習法」はとにかく読むだけでしたが、「1分間ライティング」では書きます。「3サイクル反復速習法」を行った翌日に行います。
記憶は寝ている間に整理されて定着するため翌日に行うのです。
「1分間ライティング」でやることは、前日に覚えた内容を、思いつくままにひたすら手を止めずに書くということです。制限時間を1分間にする理由は、最高レベルの集中力を引き出すためです。脳は時間を制限した方が本気で働いてくれるからです。
もし、1分間すらすらと書き続けられたら、しっかり記憶が定着しているということです。逆にほとんど何も書けなかった人も、慣れるまでは難しいことなので、特に気にしなくて良いです。
最も大事なのは、1分間ライティングで判明した覚えられていない箇所を、もう一度読んで復習することです。1分間ライティングが終わった後は、脳が足りない部分を埋めようとしている状態になるので、その状態で復習すると足りなかった部分を効率よく記憶してくれます。
そして復習が終わったら、もう一度その項目について1分間ライティングを行うと効果的です。
「1分間ライティング」⇒復習⇒「1分間ライティング」⇒「3サイクル反復速習法」という具合です。

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記憶することが苦手で、とにかく苦痛だと思っていた私には、目からうろこの内容でした。参考にしてみてください。
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本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『脳にまかせる勉強法』をご参照ください。
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