私の知り合いに、近々カフェ併設型のお洒落なコインランドリー事業を始めようとしている方がいるので、興味を持って調べてみました。
今、コインランドリーの数が増えています。厚生労働省や株式会社TOSEIのデータによると、1996年度には約9,200店舗だったコインランドリーが、2021年には約25,000店舗へと、この約20年で2倍以上に急増しています。その背景には共働き世帯の急増があり、かつては1人暮らしの学生が、自宅に洗濯機がないから利用するというイメージだったコインランドリーが、仕事で多忙な人が時間短縮のために利用するものになりました。(下図参照)

例えば、コインランドリーにあるLサイズの乾燥機専用タイプのものであれば、1度に約25kgの衣類を30分から40分で乾かすことが出来ます。一方家庭用の洗濯乾燥機では、10kg容量のもので、一度に乾燥できる衣類は約6kg、時間も3~4時間かかります。確かに、コインランドリーを利用すると、洗濯乾燥時間を短くすることは出来ると言えます。
このように需要が増える中、それに呼応する形で、土地の有効活用をしたい等の理由から、個人でコインランドリーを投資として、事業として始める方が増えています。
無機質なイメージがあったコインランドリーも、最近ではお洒落なカフェ併設型のコインランドリーも増えています。例えば、次の3つのようなコインランドリーを見ると、そのイメージが変わるのではないでしょうか。
- Baluko Laundry Place(カフェ併設)
- IDOBATA Laundry(ドーナツ専門店併設)
- MYMY LAUNDRY(コインランドリー店アワード2021最優秀賞受賞)
さて、投資や事業としてコインランドリーをどう考えるかですが、色々調べましたが、私の個人的な感覚からすると、手を出すべきではないと思います。先に挙げた例のように、確たるコンセプトをもって、コインランドリーを使った芸術品のようなものを作ることを目的とするのであれば、良いのではないかと思います。
しかし、投資額を回収することを目的とするのであれば、もっと利回りが良く、もっとリスクが低く、もっと手間のかからない手法は、他にいくらでもあると思います。なぜコインランドリーを投資・事業としてするべきではないと考えるのか、私ならやらない理由は以下の通りです。
- 競争が激しい
- 売却が困難
- 初期投資額が大きく、回収額が小さい
- その他
競争が激しい
先述した通り、コインランドリーの店舗、供給側の数が約20年で2倍に増加しています。これに対して需要側はというと、共働き世帯は1.35倍ほどにしかなっていません。
また他にコインランドリーの需要がありそうなのは単身世帯だと思いますが、単身世帯は増加傾向とはいえ、増えているのは高齢者単身世帯であり、若年層はむしろ減っています。(下図参照)

一方で、大和コーポレーションによる「コインランドリーユーザーの実態」調査によると、2019年から2021年までの3年間、一貫して高齢者層よりも若年層の方が利用率が高いと言えます。(下図参照)ここでいう利用率とは、直近1年以内に利用している人の割合です。
つまり、高齢者単身世帯が大幅に増える見込みであっても、その世帯はコインランドリー利用者とはなりづらく、コインランドリー利用者が今後も増え続けることは考えづらいと思います。

また、コインランドリー投資が注目され、増え続けているということは、近くにライバル店舗が出来る可能性があります。新しく出来るライバル店舗は、既にあるコインランドリーを研究していますし、新しい分綺麗かつ、最新設備を備えている場合が多いでしょう。新しいライバル店舗が近くに1つ出来ただけでも、その売上へのマイナスの影響は大きいのではないかと思います。
売却が困難
投資を考えるときは、出口戦略を考える必要がありますが、コインランドリー投資においては出口で苦戦する可能性が高いと思います。
コインランドリーは、店舗改装費、洗濯機乾燥機の購入費用等で、開業資金として凡そ2,000万円~3,000万円程は必要だと言われています。しかし、洗濯乾燥機の機材は、そう簡単に売却できないようです。普通の不動産や車などは豊富な中古市場があるのですが、洗濯乾燥機の機材に中古の需要が少ないため、なかなか思うような値段が付かないようです。
事業ごと売却することを考える場合も、同じです。中古の洗濯乾燥機が良い値段で売却できないということは、事業収支が黒字でもない限り、事業ごと売却するのも難しいと考えられます。
コインランドリー事業からの撤退方法を模索したのに出来なかった例を見つけましたので、リンクをはっておきます。(参考:【コインランドリー経営】出口戦略は悲惨な選択肢しか残されていない | | コインランドリー事業に3000万円投資!アインの100%経営報告日記 (ainecoinlaundry.com))
コインランドリー事業に1度参入したら、簡単には撤退できないということを覚えておきましょう。

初期投資額が大きく、回収額が小さい
先述した通り、コインランドリーは、店舗改装費、洗濯機乾燥機の購入費用等で、開業資金として凡そ2,000万円~3,000万円程は必要だと言われています。
これに対して売り上げがどのくらい上がるかというと、乾燥が1回100円、洗濯は1回500円〜1200円が相場です。ガス代、電気代、水道代、洗剤代等、売上と連動して変動する費用が、売上の30%~35%程かかるようです。
更にここから、家賃、インターネット代等、必ずかかる固定費があります。また、店舗の清掃を外注すれば管理費(掃除等)が、広告をすれば広告費がかかります。いかに黒字化が難しいビジネスであるかということが想像できます。
コインランドリー事業での実際の収支を公開されている例を見つけましたので、リンクをはっておきます。(参考:【コインランドリー経営】2019年3年目の実績公開!単体黒字は達成できたのか?否! | | コインランドリー事業に3000万円投資!アインの100%経営報告日記 (ainecoinlaundry.com) この方の場合、1年目の収支(=売上-経費)は赤字だったのですが、2年目から収支(=売上-経費)は黒字化されています。しかし、借入金まで含めたキャッシュフローベースでは常にマイナスであり、借入金の返済が完了するまでは、キャッシュフローがマイナスという状態は継続すると思います。
その他
その他、洗濯乾燥機は機械ですので故障することもあるでしょうし、円安などの影響なども受けて燃料高騰によりガス代、電気代もさらに高騰するかもしれません。予想外のトラブルもあるかもしれません。機械は経年劣化しますので、将来的には洗濯乾燥機の入れ替えが必要で、その際に予期せぬコストがかかるかもしれません。
コインランドリー投資・事業は、それらあらゆるリスクを考え、覚悟を決めてやるべき投資・事業だと、私個人としては思います。

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