現代の日本は、毎年2万人以上の方が自殺するストレス社会です。

また、こころの病気を持つ患者数も増え続けています。

これらは、長年蓄積された疲労が原因であることが多いのだと、『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 』の著者、下園 壮太さんは言います。こころの病気になると、1年も2年も治療に費やすことになります。いかなる理由であれ、仕事のために身体を壊していいはずはありません。
本書を、次の6つのポイントでご紹介します。
- ムリを称える日本社会
- 個人のムリは「4つの面」に表れてくる
- 短期目標で乗り切ろうとしない
- 「動」と「静」のストレス解消法をもつ
- 時間で管理する
- 「しがみつき」をしていないか
ムリを称える日本社会
自衛隊の間でよく言われている言葉に「適切な道具を使い、決して無理に力を加えるな」というものがあります。なぜなら、無理に力を加えると道具が壊れてしまうからです。壊れたら、新しいものに取り換えるしかできません。
人間も無理をすると、壊れて「うつ」や「自殺」という形で表れます。だから、無理をせずに、休むべきなのです。しかし、ほとんどの人は自分が無理をしているという自覚がありません。なぜなら、他の人と比べてしまうからです。
例えば、疲れていて休みたいのに、他の人がもっと残業や休日出勤しているから、自分ももっとやらないといけないと思ったことはありませんか?真面目な人ほど、自分よりも頑張っている人を見て、「自分は甘い」と思い、自分を追い込み、うつ病になってしまいます。
また人が無理しすぎてしまう理由に、「頑張っている自分が好きだから」というものもあります。
子供の頃は、身長も体力もどんどん成長するので、頑張って努力すれば何でも段々と出来るようになっていきます。しかし大人になると、成長は遅くなり、生まれながらの才能を持っている人には、頑張って努力しても勝てないことが多いことに気づきます。
つまり大人になると、子供の頃の頑張りから抜け出して、今の自分を認めてあげる必要があります。そうしないと、「うまくいかないのは頑張りが足りないからだ」と考え、頑張り続けてしまいます。そうして自分を追い込んでいるうちに、うつ病になってしまうのです。

個人のムリは「4つの面」に表れてくる
無理をしても自覚がないことは良くありますが、無理をしている場合には必ず異変が起こります。
無理をすると、初めに身体に異変が起こります。おなかが痛くなったり、眠れなくなったり、食欲がなくなったり、笑わなくなったり。
身体の次は、人間関係に異変が起こります。人にイライラするようになったり、友達に話す内容のほとんどが次や弱音になったり、不安で頭の中がいっぱいになったり。人に当たってしまうのです。
そして人間関係の次は、行動に異変が起こります。酒やたばこの量が増えたり、無性に甘いものが食べたくなったり。
最後に、心に異変が起こります。これが「うつ病」です。つまりうつ病は、無理をし続けた最終形態です。
そうなると、性格が変わって全く別の人のようになります。常に不安になり、自分などいない方が良いという考え方に支配されるようになります。
そして、複雑な思考が出来なくなります。仕事でミスを連発したり、話の内容が頭に入ってこなくなります。「次、仕事で注意されたら死のう」等、常にシンプルでネガティブなことしか考えられなくなります。
元気になれば、うつ病だった時の自分がどうかしていたことに気づけますが、うつ病の時はまるで夢を見ているような状態で、自分の考えていることがおかしいことに気づけません。
このように、無理を続けていると、「身体、人間関係、行動、心」の順に、不調をおこしていきます。だから、何らかの異変を感じているなら、自分は無理をしているのだと自覚しなければなりません。一旦心が壊れてしまうと、回復するのに何年もかかります。

短期目標で乗り切ろうとしない
無理をしやすい人は、短期目標で乗り切る癖があります。一般的には短期目標の方が力が出やすいのですが、短期目標をやり続けると、人は疲れ果ててしまいます。
例えば3キロ走る場合、長期目標を目指す人は3キロ先のゴールを目標に、ペース配分を考えて走ります。一方短期目標を目指す人は、3キロを100mに区切り、100mを30回全力で走るということを繰り返すようなやり方をします。短期目標を何度も繰り返す方が断然疲れるだろうということは、何となく想像できるのではないでしょうか。
この世の中は、短期目標に突き動かされて疲れ果てている人が驚くほど多いのです。短期目標は、2、3回ならいいのですが、何度も何度も続けてしまうと、自分を疲れさせる原因になります。
「動」と「静」のストレス解消法をもつ
「動」と「静」のバランスを取ることが出来ると、ストレスを解消することが出来ます。
例えば、普段から身体を「動」かす仕事をしている人は、休日は身体をあまり動かさない「静」の物事、例えば読書、映画鑑賞等をするのが良く、逆に普段あまり身体を動かさない仕事をしている場合は、休日は運動をすると良いということです。

時間で管理する
やりすぎるとどこかでバランスを崩してしまうので、例えば17時に仕事を終えると決めたのなら、例え仕事が終わっていなくてもすぐに帰るのが良いです。このように、時間で管理すると、限界まで無理することを防ぐことが出来ます。
ダラダラと仕事をするくらいなら、時間になったらスパッとやめて、日を改めて頑張った方が圧倒的に効率的です。決めた時間を過ぎたら、仕事のメールも電話も出ない、そんな気持ちでいると、長く続けることが出来ます。
「しがみつき」をしていないか
会社を休めないし、やめることも出来ないという人もいると思います。しかし、それは本当は「やめられない」のではなく、自分で「やめない」という決断をしているのです。
会社は、あなたに絶対に働けとは言っていません。そしてあなたがうつ病になっても、会社は責任を取ってくれません。あなたがいなくても会社はまわります。
一時的に無職になるという不安はあるかもしれませんが、病気になったら社会保障に頼ればいいですし、最悪生活保護もあります。また、世の中を広く見ると、いろいろな仕事があることに気づけるでしょう。それでも無理をしているのであれば、自分で自分を追い込んでいるだけなのです。
仕事を辞める必要はありませんが、しっかり自分の身を守って休むことが何より大切です。今、疲れているけれど会社を休めないという人は、ひと呼吸して、冷静に今後のことを考えた方が良いと思います。健康ほど、大切なものはありません。

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本書に興味を持っていただいた方、詳細は『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術 』をご参照ください。
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