「結婚適齢期」と「出産適齢期」は、同じではない|知っておきたい現実

最近、出産について考えることが増えた。
私の周りでは、30代後半から40代前半で出産する人が珍しくない。
仕事を頑張って、キャリアを築いて、経済的にもある程度余裕ができてから結婚する。そして、結婚してから子どものことを考える。
私の周りでは、それがむしろ普通になっている。
だから、「30代後半くらいになったら結婚して、その後に子どもを考えればいい」と自然に思っている人も多いのではないだろうか。
私も若い頃は、そこまで深く考えていなかった。
考えずに結婚して、出産した。
でも、今になって思う。
結婚することと、出産することは、同じようには考えられない。
結婚は、何歳になってもできる。
でも、出産には生物学的な時間制約がある。
これは、多くの人に早い段階で知っておいてほしいことだと思っている。
日本では、30代後半の出産も珍しくない
まず、実際には何歳くらいで出産する人が多いのだろうか。
2024年の日本では、第1子を出産した母親の平均年齢は31.0歳だった。
1990年には27.0歳だったので、30年あまりで4歳上がっている。
(出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計」)
一方で、30代後半から40代で出産する人も少なくない。
2024年の出生数を母の年齢別に見ると、35~39歳は162,625人、40~44歳は43,463人だった。
(出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計」)
つまり、30代後半から40代で出産すること自体は、今の日本では珍しいことではない。
私の周りでもそうなので、感覚としてはよく分かる。
ただし、ここで注意したいのは、
「30代後半で出産する人がたくさんいる」ことと、「30代後半まで待っても妊娠しやすさは変わらない」ことは、まったく別の話だということである。
平均年齢が上がっていることと、女性の妊孕性が年齢によって変化しないことは、同じではない。
出産には、生物学的な時間制約がある
女性の妊孕性、つまり妊娠する力は、年齢とともに変化する。
特に30代後半からは、その低下がより明確になってくる。
もちろん、年齢だけですべてが決まるわけではない。
30代後半や40代で自然妊娠して出産する人もいる。
一方で、「もし妊娠しにくかったら、そのとき不妊治療をすればいい」と考える人もいると思う。
もちろん、不妊治療によって妊娠・出産につながる人はたくさんいる。
でも、不妊治療は、年齢による妊娠しやすさの変化をなくしてくれる魔法ではない。
ここで知っておきたいのが、ARTという言葉である。
ARTとは、Assisted Reproductive Technology(生殖補助医療)のことで、体外受精や顕微授精、凍結融解胚移植など、卵子と精子を体外で扱って妊娠を目指す治療を指す。日本産科婦人科学会では、これらを生殖補助医療として統計にまとめている。
(出典:日本産科婦人科学会「生殖補助医療の種類」)
日本産科婦人科学会の2023年のARTデータを見ると、ARTの治療成績は年齢によって大きく変化している。
治療1周期あたりの生産率は、35歳で20.5%、38歳で15.5%、40歳で10.6%、42歳で5.6%、43歳で4.4%、45歳では1.7%まで低下している。
(出典:日本産科婦人科学会「2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」)
ここでいう「生産周期」とは、出産(生産)に至った治療周期のことである。日本産科婦人科学会のARTデータでは、生産周期数を「出産(生産)に至った周期数」と定義している。
もちろん、これは「35歳の女性が最終的に20.5%しか出産できない」という意味ではない。
あくまで1回の治療周期あたりの数字であり、個人の最終的な出産確率とは違う。
それでも、年齢が上がるにつれてARTの治療成績が低下していくことは、この数字からも分かる。
つまり、
「子どもが欲しくなったら、そのとき不妊治療をすればいい」
と簡単に考えられるほど、出産は自由に時期を選べるものではないのである。
不妊治療は、決して珍しいことではない
では、実際にどれくらいの夫婦が不妊治療を経験しているのだろうか。
2025年に実施された国立社会保障・人口問題研究所の第17回出生動向基本調査によると、不妊の検査や治療を受けたことのある夫婦は22.8%、約4.4組に1組だった。
(出典:国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査」)
これは、決して珍しい数字ではない。
不妊治療というと、特別な人が受けるもののように感じるかもしれない。
でも、実際には多くの夫婦にとって身近な問題になっている。
そして、不妊治療には時間もお金もかかる。
身体的な負担もあるし、精神的な負担もある。
何度治療しても、必ず妊娠・出産できるとは限らない。
だからこそ、
「子どもが欲しくなったら、そのとき考えればいい」
ではなく、
「自分は子どもが欲しいのか」
「欲しいとしたら、いつ頃を考えているのか」
ということを、もっと早い段階で考えておいてもいいと思う。
「結婚してから考える」には、時間がかかる
出産のタイミングを考えるとき、出産だけを考えても仕方がない。
子どもが欲しいなら、その前に結婚がある。
そして結婚するには、相手が必要である。
出会って、付き合って、相手を知って、価値観を確認して、この人と結婚したいと思う。
さらに、結婚してから「子どもはどうする?」と話し合う。
つまり、
出会う → 恋愛する → 相手を見極める → 結婚する → 妊娠を考える
という時間が必要になる。
30代後半になってから「そろそろ結婚して子どもが欲しい」と思ったとしても、そこから相手を探し始めるのであれば、実際の出産はさらに先になる。
しかも、結婚したからといって、すぐに妊娠できるとは限らない。
国立社会保障・人口問題研究所の2025年の調査でも、妻の初婚年齢が30歳以上の夫婦では、結婚時に予定していた子ども数を実現できていない夫婦が半数に上るという結果が出ている。これは、晩婚化だけが原因だと断定できる数字ではないが、結婚のタイミングと出生の実現には無関係ではないことを考えさせられる。
(出典:国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査」)
この時間を考えると、「結婚や出産について考え始めるのは、まだ早い」とは必ずしも言えないと思う。
子どもを望んでいるのであれば、結婚について考えることも、出産について考えることの一部なのではないかと思う。
早く産むことが正解、という話ではない
もちろん、私は「20代で結婚して、早く子どもを産むべきだ」と言いたいわけではない。
仕事をしたい人もいる。
結婚したくない人もいる。
子どもを望まない人もいる。
経済的な事情や、パートナーとの関係、さまざまな事情もある。
30代後半や40代で出産する人が悪いわけでも、20代で出産する人が正しいわけでもない。
そもそも、人生に一つの正解があるわけではない。
ただ、
「私は将来、子どもが欲しいのか」
ということだけは、もう少し早い段階で考えておいてもいいと思う。
もし子どもが欲しいのであれば、
「いつか欲しい」
ではなく、
「何歳くらいまでに欲しいと思っているのか」
まで一度考えてみる。
そうすると、恋愛や結婚に対する時間の使い方も変わってくるかもしれない。
「まだ大丈夫」と「選択肢が多い」は違う
30代後半でも出産している人はたくさんいる。
40代で出産する人もいる。
だから「まだ大丈夫」と思うこと自体は分かる。
でも、
出産できる人がいることと、自分にも同じようにできることは別である。
平均年齢も、周囲の友人も、SNSで見る出産報告も、自分の身体の状態を保証してくれるわけではない。
そして、結婚や出産のタイミングは、自分一人の意思だけでは決められない。
だからこそ、私は「早く産め」と言うより、
「自分が子どもを望むなら、その可能性を残すために、早いうちから人生設計を考えておこう」
と言いたい。
結婚だって同じである。
「いつか結婚したい」と思っているなら、30代後半になってから突然婚活を始めるのではなく、もっと早い段階から恋愛や結婚について考えておいてもいい。
結婚は、焦って決める必要はない。
でも、何も考えずに時間だけを過ごす必要もない。
人生は、自分の思い通りにならないことも多い。
それでも、自分が何を望んでいるのかを早く知っておくことで、選べる道は増やせる。
自分がどんな人生を送りたいのかを考えることは、早すぎることなんてない。


