円安が止まりません。2022年4月19日現在、128円/ドルを突破しています。4月に入ってから、まだ1日も、円高方向に振れた日がありません。
下図は、本日よりちょうど3か月前、1月19日と比べて、各通貨の価値がどのように推移したのかを表したものです。一番下の薄い水色が、日本円です。今、日本円の価値が諸外国の通貨と比較して突出して下がっています。これは、何を意味するのでしょうか。
「円の価値が下がっても、私は海外にほとんど行くことはないから、円以外の通貨は使わないから関係ない」とは言えません。なぜなら、日本円の価値が下がるということは、円の購買力が下がるということであり、購買力が下がれば輸入品の価格が上がるからです。私たちが日常的に買う物の値段が、上がります。同じ金額を持っていても、買える物が少なくなります。
私たちが保有している円預金の価値も、「元本保証だから」価値が減らないということではありません。預金の元本は保証されているので、確かに1,000万円は1,000万円なのですが、その1,000万円で買える物が減ります。1,000万という数字は同じでも、価値が減ることがあります。元本が減るかもしれないから投資が恐いと考えているその思考こそが、本当は一番恐いと思います。
人口の2割しか投資していない日本
野村総合研究所のデータによると、2021年現在で投資している人は25~69歳の人口の21.1%にあたる1,470万人と推計されています。2015年以降、急速にその割合が増えていることが分かります。(下図)
特に25~29歳等、若年層で投資を行うようになった人の割合が顕著に増加し、2021年は、3年前比11.3%増!の17.9%となりました。(下図)今後この年齢層及び30歳から39歳の年齢層で、投資を行う割合が増加すると見込まれています。
2014年に一般NISAが、2018年からつみたてNISAがそれぞれ開始されたことの影響が大きいと考えられます。しかし逆に言うと、これだけ啓蒙され、これだけ税金も優遇されている制度があるにもかかわらず、まだ投資をしている人口が2割にとどまっているとも言えます。
なお、この「1,470万人」という推計値は、個人証券口座数が2021年12月末、約2,933万口座(日本証券業協会 (jsda.or.jp))であり、証券取引をする個人は、口座を複数開設する方も多いだろうこと、25歳~69歳以外でも証券口座を開設している人がいることから、凡そ妥当だろうと考えられます。
また残高について、家計の金融資産は下図の通り2021年12月末、2,023兆円あるのですが、このうち現金預金が1,092兆円(54%)であり、保険等540兆円(26.7%)が続き、債券、投資信託、株式等の証券は、合計しても332兆円(16.5%)と、金融資産残高合計の2割を切っています。なお、現金預金1,092兆円のうち、外貨預金は7兆円に過ぎません。
つまりほとんどの個人は、資産を「円預金」で保有しており、投資人口も、投資残高もは2割前後に過ぎないということです。
格差は拡大する
現在円安が急激に進んでいます。またインフレもじわじわと進行しています。円安は外国通貨に対する円の価値の下落、インフレは物に対する円の価値の下落を意味します。そのため、資産を「円預金」で保有しているだけでは、知らないうちに資産価値が減っていってしまいます。
しかし、投資をしていない日本の約8割の人達は、「円安」という事象に気づかないか、例え気づいたとしてもその事の意味に気づかないかもしれません。インフレに関しては、それが起こっていることは認識は出来ても、それが何を意味するかは分からないかもしれません。その場合、取るべき対策を取れない可能性があります。
「円預金」ばかりしていては危ないと気づいた人たちは、外国資産への投資、株式投資等を始める(既に始めている)と思います。
金融リテラシーが高く、元々外貨建資産を持っている人達は、最近の円安の状況下では円で換算した時の資産残高が急増したのではないでしょうか。そのような方々は、元々ある程度余裕があり、知識があり、資産を持ち、余裕をもって行動している方々です。
そして、そうではない人たちとの間の格差は、更にどんどん拡大していきます。