『借金の底なし沼で知ったお金の味』の著者、金森 重樹さんは、東京大学法学部を卒業後、25歳の時に1億2,500万円もの借金を負ったものの、マーケティングの技術を活用して35歳で借金を完済し、現在不動産、建設、ホテル、福祉事業など年商100億円の企業グループのオーナーをされている方です。
本書は、そんな著者が、借金の苦しみから得た気づきを基に、自らの体験を綴った奇跡の生還記です。
「谷深ければ、山高し。泥の沼のどん底まで沈んで、コツンと底に足がつけば、人間必ずそこから這い上がれます。」
環境は人生にどう影響するか
「水は方円の器に随う」ということわざがありますが、これは、人は環境や友人によって、良くも悪くも変わるというたとえです。
お金に対してマイナスのイメージ(お金は卑しい、お金持ちは悪い人等)を持った人の中にいれば、自分も同じような考え方に染まっていきます。そしてその環境の中にいる限り、そのおかしさに気づくことが出来ません。「井の中の蛙大海を知らず」です。
私たちのお金の考え方は、主に親や学校の先生、友人から多大な影響を受けています。ほとんどの親や先生、友人はお金持ちではないため、その人達からの影響を受ければ、自分も同じようにお金持ちではない考え方や行動に近づいていきます。
つまりお金持ちになりたければ、お金、ビジネス、仕事に関しては、親や先生、友人のいうことを聞いてはいけないということです。
ほとんどの親や先生は、いい大学に入っていい会社に就職することしか知りません。その思考は大体20年前の常識で作られたものです。しかしそれは、今の社会では通用しません。
人生を変えたければ、どんな人と接するのかをしっかりと決めなければなりません。
「税金の仕組み」を知ることはなぜ必要なのか
私たちは学生時代、微分積分、ベクトル等を学びますが、実際に社会に出てからほとんど役に立ちません。逆に、実社会で必要なお金の勉強はほとんどしません。私たちは、お金に無知な状態で社会に出るのです。
無知だから、リボ払いをしたり、複数の保険に入ったり、まともな投資とそうでないものの区別がつかず、投資詐欺にあったり、投資と称した投機をしたりします。
本来、税金、投資等は、早めに学んでおく必要があります。例えばお金持ちは、ベンツやポルシェなどの車を、「節税」目的で買うことが多いです。そのような車を、必死に働いて貯めた貯金で買うようなものではないと著者は言います。
Kさんとの出会い
25歳でフリーターだった著者は、ある日Kさんの元でアルバイトをすることになりました。Kさんは、上場企業の社長で既に現場から引退し、学校法人や不動産のオーナーという本物の富裕層でした。
著者はKさんと過ごすことで、今まで接していた人と全く違うお金持ちの考え方や姿勢が自然と身についていったと言います。
Kさんはいつもトレーナーを着ていて、冠婚葬祭等以外ではスーツを着ません。寒い時にはダウンジャケットを着ます。車は国産車、時計も国産、見た目も非常に地味です。そして、年中無休で午前3時から4時には起きて仕事をし、9時になったら毎日オジヤを食べて出かけていくという生活ぶりでした。この質素で倹約な生き方が、本物の富裕層なのです。なぜならお金持ちは、お金を使うことよりも、富を蓄積することに満足するからです。だから、お金持ちはお金の無駄遣いをしないのです。
服、車、家など、他人よりも良いものが欲しいと思っている思考そのものが、貧乏思考なのです。
なんでもないような電話から人生の悪夢は始まる
ある日、著者のもとに先物取引業者から一本の電話がありました。「今なら絶対に生糸を買えば儲かる」というのです。
それを聞いた著者は、それまでコツコツためてきた1,150万円全額を投資します。投資のプロに「私を信じてください」と言われたので、「間違いない、きっと儲かる」と思ったからです。
結果、その投資したお金は数か月で溶けてなくなり、著者は貯金0のフリーターとなってしまいます。
人は、知らない物事に遭遇すると、次の2通りの方法を取ります。
- 自分の力で理解しようとする
- 自分の力で理解することを放棄して、相手に委ねる
お金に関しては、絶対に人任せではいけません。どれだけ儲かると言われても、自分で勉強して理解するまでは投資してはいけないのです。何も考えずに人にお金のことを任せた状態は、自分の運命のハンドルを人に握られている状態と同じだからです。
このままではどうしようもない、そこから更なる深みに嵌る
著者は当時、フリーターで月15万円前後を稼いでいましたが、貯金0円になった著者はふてくされ、昼間はその稼いだお金をパチンコでうち、夜は銭湯の帰りにコンビニで100円のお酒を買い、それを飲みながら愚痴をこぼす日々を過ごしていました。
そしてある日、また先物取引業者から電話がかかってきます。「1,000万円借りて先物取引をしよう」というのです。あろうことか、著者はそれに合意して、人から借りたお金で投資するという底なし沼にはまっていきます。
著者は既に1,150万円を失っていたので、今更1,000万円失うことへの心理的ダメージが低かったのです。また1,000万円の投資に成功すれば、今までの悪夢が帳消しになるかもしれません。そう考えたら、人は愚かな選択をしてしまうものです。
結果、1か月半後に借りた1,000万円が0になりました。そして、またお金を借りて投資で溶かすを繰り返しているうちに、借金は5,000万円にまで膨らみ、金利も毎年600万円になっていました。そしてその金利が払えないので、延滞金も毎年960万円ずつ増えていくという状態に陥ります。
借金が膨らみ続け、最終的には1億円を超えます。当時の法律では、投機で借金を作った場合は破産することも出来ませんでした。(現在は、ギャンブルや浪費によって過大な債務を負担してしまったような場合であっても、裁量免責が認められる場合があるようです。参考:自己破産・裁量免責について)
著者はこの時、もう一生涯、普通に結婚したり家を買うこともないと思いました。何を食べても美味しいと感じなくなり、何を見ても何も感じなくなりました。
一生かかっても返しきれない借金を背負い込んだらどうするか
会社や家、実家にヤクザが来て取り立てをしてくるようになります。ついに実家にも帰れなくなり疲れ切った著者は、ある日突然吹っ切れるのです。
焼き肉を腹いっぱい食べてビールを飲み、ぐっすり寝るようにしました。そして起きたら、もう一度冷静に物事を考えるのです。そのお陰で、普通の人ならまいってしまう状態でも、著者は平然としていられるようになりました。
「ヤバいときは寝てしまえ」
そうすれば、何とかなります。これが、極限まで追いつめられた著者の心を守ってくれたものでした。そして決心するのです。他人任せはやめて、自分の力で理詰めで億万長者になるということを。
再起のための社会勉強
筆者はまず、ある不動産会社に就職して会社員になります。とはいえ会社員の給料は30万円程度ですので、普通にやっていても、雪だるま式に増えていく借金を到底返すことは出来ません。
著者の狙いは、会社員として働き続けるということではなく、不動産会社からノウハウを学ぶことでした。どうやって不動産という高額の商品を効率的に売っているのかを学ぼうと考えたのです。
筆者が気づいたのは、商品を購入可能性の高い連絡先、いわゆる「見込み客リスト」の重要性です。他にも、広告の出し方、言葉の選び方等、様々なマーケティングスキルを学んでいきました。さらに、仕事終わりに簿記の勉強に没頭します。簿記を学ぶと会社のお金の流れが分かるからです。独立するために働いている人は、会社からノウハウを学ぼうとするのです。
どん底で見つけた成功法則
会社や勉強から得られた知識と経験を活かし、著者はまず借金をして広告を打ち、見込み客リストを作り、そのリストの見込み客に対して商品を売り込み、売れたら借金を返済する。
そしてもっと大きな借金をして広告を打ち、見込み客リストを作り、そのリストの見込み客に対して商品を売り込み、売れたら借金を返済する、ということを繰り返しました。そして借金をどんどん返済していくのです。
結果、35歳の時に1億2,500万円もの借金を完済しました。その後、そのマーケティングのスキルを活かし、ホテルや不動産、歯科医院などを経営して億万長者になっていきます。
「結局僕は多額の借金を背負わなければ、自分の人生は『いつか誰かが何とかしてくれるだろう』という当事者意識のない傍観者のままで終わっていたのではないか」
本書の詳細は『借金の底なし沼で知ったお金の味』 をご参照ください。
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