天野敦之著 『会計の神さまが教えてくれたお金のルール』は、1人のさえないサラリーマンが、「近代会計の父」と呼ばれる数学者、ルカ・パチョーリと出会い、お金のルールを学び、人生を大きく好転させていていく物語です。
「生きている以上はお金とは無縁ではおられへんやろ。そしたら会計リテラシーは不可欠や。会計リテラシーがなかったら、一生お金に振り回されて生きることになるぞ。」
(本書ルカ・パチョーリの言葉)
「会計リテラシー?」僕、営業部なんですけど
会計リテラシーとは、会計の知識を活用したり応用したりする力のことです。ビジネスでは、簿記の何級を持っているかと言うことはどうでも良く、会計の知識を活かせるかどうかが問題です。
簿記の勉強をして、貸借対照表や損益計算書が読めるようになったとしても、経理や財務の仕事をしている人でもない限り、その知識を仕事や人生で生かす場面は少ないでしょう。しかし、本当にリテラシーがある人であれば、仕事や人生のあらゆる場面で有効に活用できるのです。
お金には「コスト」がかかっている
お金には「コスト」がかかっています。
銀行からお金を借りた時の利息だけでなく、株主から出資された資本金である、自己資本にもコストがかかっています。分かりやすいのが配当金ですが、それだけではありません。負債(銀行から借りたお金)のコストは、利息や返済期日が決まっているのでコストを理解しやすいのですが、自己資本は利益が出た時に配当するものであるし、返済義務もないので自己資本のコストは意識されづらくなっています。だから、負債以外のお金にはコストがないという間違った理解をしている人も多いのですが、実際は、負債のコストよりも株主などから調達する自己資本のコストの方が高いのです。
例えば会社が倒産した時、負債は優先的に返済されますが、株主にはお金が戻らないリスクがあります。ということは、株主は会社にお金を貸すよりも高いリスクを払っていることになり、その分高いリターンを得られなければ、株主はそもそも投資をしようと思わないということです。だから、負債よりも自己資本のコストの方が高いのです。
ポイント2倍でもリボ払いは「悪魔の商法」
ポイントにつられてリボ払いを選択する人は、会計リテラシー0といっても過言ではありません。なぜなら、リボ払いは、サラ金とほぼ同レベルの15%程度の金利がかかるからです。つまり調達コストが年間15%かかるということなので、本来の考え方であれば、そのお金で15%以上の利益を生み出さなければ会計リテラシー的にはダメなのです。
(ただ、15%の高金利がかかるということを理解した上で、それでも買うと判断したのであれば、問題はありません。)
預金はどれくらいもてばいいか?
会計リテラシーの観点でいうと、銀行にただ預けている現預金は「死に金」です。なぜなら、物価は基本的には上がっていくものなので、例えばインフレ率2%であれば、今の100万円と1年後の102万円は同じ価値になることになるので、銀行に預けているだけのお金の価値は目減りしていきます。
だからこそ、必要最低限である生活費の3か月程度の現預金のみを確保したら、後は投資などに充ててお金を活かすことが重要です。
「株式投資=ギャンブル」は思い込み
「株式投資はギャンブルみたいで怖い。」投資と聞いて、このような感想を抱く人も少なくないですよね。
しかし、このような人は投機と投資の違いを理解していません。投資とは、将来有望な投資先に長期的にお金を投下することであり、投機とは、短期的な価格変動にかけてお金を投下することです。つまり、投機はギャンブルであり、チャートの変動などで予測するデイトレードもギャンブルです。応援したい会社や世界経済などの長期的に資産を投下して、長い目で利益を得ることが投資なのであって、投資で一獲千金などと言っている人は、投機によるギャンブルをしているだけなのです。
「複利のパワー」を最大限に活用する
長期投資をするのであれば、毎月分配型ではなく再投資型が、複利の効果を最大限活用できるためお勧めです。毎月分配された方がお金が増えているようでうれしいと感じるかもしれませんが、分配型にすると、単利での運用になり、複利の力を活用することが出来ません。
単利と複利では、同じ利率であっても、数十年後には何倍もの差が生じます。
自己投資した以上にお金を稼ぐ
「自己投資だから、短期的には利益は出なくてもいい」等と言って、自己投資にはいくらお金をかけても良いことのような風潮がありますが、会計リテラシーの観点からはそうとは言えません。
投資したお金とそのコスト以上にお金を増やすことが出来るかどうか、その勉強したこと、その資格を活かして、かけたコスト以上のお金を増やすことが出来るのか。それが出来るのであれば良い自己投資であり、出来ないのであれば悪い自己投資です。
例えば1年で万円分の本を読んだとして、本で得た知識をもとに10万円+コスト以上のお金を増やすことが出来るのかを考えてみましょう。だからこそ本書では、何かを学んだら実践すること、そして投資したお金以上に稼ぐことをコミットすることを一貫して語っています。
「在庫」くらい十分に用意しておけよ
なぜ会社は欠品のリスクがあっても、在庫を出来るだけ抑えようとするのでしょうか。これは、お金の流れを具体的にイメージすると理解できます。
会社が調達したお金は、商品の一部になったり、建物になったり、人件費になったり、家賃になったり、形を変えながら、最終的には売り上げにつながり、利益になっていきます。在庫が増えるということは、このお金の流れが滞ることになります。
例えば、100万円投資して、明日110万円回収できるのと、1年後に110万円になって返ってくるのでは、どちらが嬉しいでしょうか。当然、なるべく早く利益になって返ってくる方が良いですよね。在庫が増えるということは、このお金の回転を遅らせることになるので、在庫は出来るだけ少なく、売上を上げることが良いのです。
「入金」を早く、「出金」を遅く
お金の回転を上げるために最もシンプルなことは、入金を早く、出金を遅くすることです。つまり、支払うための猶予期間は出来るだけ遅く、支払ってもらう期間は出来るだけ早くするということです。私たちの生活でいうと、給料は早く支払ってもらって、クレジットカードの支払いは出来るだけ遅くしてもらうイメージです。
例えば給料の支払いが25日で、クレジットの引き落としが15日である場合、給料が入ってくる前にクレジットの支払いが発生するので、その分現金を準備しておく必要があります。一方、給料の支払いが25日で、クレジットの引き落としが27日であれば、給料が入ってからクレジットの支払いが発生するので、残しておくべき現金が少なくなり、その分を投資等にまわすことが出来ます。
金額の規模が大きくなればなるほど、この効果はとても大きなものになります。
限界利益を増やす
限界利益 = 売上高 - 変動費
変動費とは、材料費などのように売上に比例する費用のことです。この限界利益を増やすことは、稼げる利益の額に直結するので、利益を増やすアプローチとしてはシンプルです。
限界利益を増やす方法は、売上(価格)を上げるか、変動費を減らすか、です。ただし、変動費を減らすために品質を落としてしまうと、お客様が離れてしまう原因にもなるので、基本的には価値を高めることで価格を上げ、限界利益を増やします。
固定費を減らす
固定費とは、売上に連動しない費用のことです。広告宣伝費等も、これに該当します。
例えば、広告宣伝費を100万円かけると売上が100万円から300万円へ、3倍に上がることが見込まれる場合、限界利益率を用いてこの広告宣伝費は出した方が良いのかを判断します。限界利益率30%の場合、下図の通りになるので、広告宣伝費はかけない方が良いという判断になります。
一方限界利益率70%の場合、下図の通りになるので、広告宣伝費はかけた方が良いという判断になります。
このように、固定費を減らす際にも、この固定費は売上を増やすのか、限界利益を固定費負担以上に増やすことにつながるのかという観点で考えると、会計リテラシーを活用した仕事が出来るようになります。
本書の詳細は『会計の神さまが教えてくれたお金のルール』をご参照ください。
にほんブログ村
投資信託ランキング