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為替レートとは
為替レートとは、ある国の通貨の価格を他の国の通貨で表したものです。言い換えると、異なる通貨間の取引価格と言えます。
金融自由化前は、「実需原則」に基づいて、実際に外貨を用いる必要性に応じて外国為替取引が行われていました。しかし現在は、個人が外貨預金やFX取引(外国為替証拠金取引)を通じて為替リスクを取りながら、株式やビットコイン等と同様に、価格変化による利益を求めることが日常化しています。
例えば、手元現金が10,000円で、1ドル100円の場合、ドルの円に対する値上がりを狙って為替取引を行うとすると、100ドル(=10,000÷100)買えます。思惑通り1ドル100円から120円になった時に100ドルを売却すれば、12,000円となり、2,000円(=12,000‐10,000)の利益が出ます。思惑と逆に1ドル100円から80円になれば、2,000円(=10,000-100×80)の損失になります。
FX取引では、こうした外国為替の売買による利益を少ない資金で行えます。1万円を「証拠金」としてFX業者に差し出せば、現金取引の25倍までの取引が可能です。仮に10倍の取引を行うとすれば、先ほどの事例では10倍の損益となるので、1ドル120円に上がった場合は20,000円の利益、1ドル80円に下がった場合は20,000円の損失になります。つまり、FX取引は少ない資金で大きな取引が出来ますが、当然その分大きなリスクを伴うことになります。
なお、例えば「1ドル100円から1ドル120円になること」を、円安と言います。為替レートになじみがない人は、100円から120円に値上がりしたのに円安とはどういうことかと思うかもしれません。これは、1ドルが100円から120円に値上がりしたということなので、「ドル高が進んだ」という表現に変えれば納得しやすいと思います。もしくは「1円0.1ドルから1円0.00833ドルへ円安が進んだ」という表現を使えば同様に分かりやすいかもしれません。
(実質)実効為替レートとは
為替レートは他の国の通貨で測った通貨の値段ですが、二つの通貨間の交換比率だけでは、客観的にそれぞれの通貨の価値を評価するのは難しいですよね。そこで、「実効為替レート」という概念が出てきます。
実効為替レートとは、ある国の通貨と、その他すべての通貨との通貨間為替レートとを対比して評価したものです。ただし、日本円の実効為替レートを算定する際に、アメリカのドルと、ベネズエラの通貨ボリバルを同じ比重で評価するのは適切ではありません。そこで、国際通貨基金などが公表する実効為替レートは、それぞれの国と他の国の貿易額をベースに加重平均しています。
なお、良く使われるのは「実効為替レート」ではなく「実質実効為替レート」です。「実質」とつくものは、インフレ率を調整したものです。日本ではデフレの状況が長く続いていましたが、世界には激しいインフレに見舞われている国々もあるため、通貨の実力は物価上昇を踏まえた購買力で比較した方が適切です。従って、「実質実効為替レート」では、各国のインフレ率を反映した上で、インフレ率の高い国の通貨は低く調整されます。
上図は日本円の実質実効為替レートの40年間の推移をあらわしたものです。上図の場合、数値が大きいほど「円高」という意味です。
1980年初頭の円ドルレートは1ドル200円程度で、2022年8月末は1ドル約140円ですので、数字だけ見ると円高になったと言えますが、全世界の通貨をベースとした評価では、1980年代よりも円安になっていることが分かります。通貨の実力は、2通貨間の評価では分からないということですね。
なお、直近2022年7月の実質実効為替レートは「58.84」と、51年ぶりの低水準となり、統計が残る中で最低の1970年8月に記録した「57.1」に近い水準でした。(参考:“悪い円安” 実質実効為替レート51年前の水準 政府や日銀の対応は | NHK)
為替レート決定理論
為替レートがどのように決定されるかを精緻に分析できれば、FX取引で大儲けがっ出来るでしょう。しかし、世の中そう旨くはいきません。とはいえ、長期で見ると「大体こういう形で為替レートが決まる」という理論的な枠組みはあります。
購買力平価説
もっとも古典的でありながら、説得力のある理論が「購買力平価説」です。
仮に、ビックマックが日本で1個400円、アメリカで1個4ドルとします。日本で買ったビックマックをアメリカで売ることを考えると、交換比率は1:100になります。そのため、為替が1ドル100円であれば、アメリカでも日本でも同じ価格でビックマックを食べられることになります。
これは、世界的な「一物一価」、つまり1つの物の値段が世界中どこに行っても変わらないという前提に立っています。これが「購買力平価説」です。
この理論は分かりやすい反面、ビックマックを劣化させずに日本からアメリカに瞬時に移動させることを前提にしているという非現実性があります。
なお下図の通り、この「購買力平価説」によると、現在のドル円為替水準は行き過ぎた円安水準であると考えられます。
金利平価説
この理論は、短期的な為替レートの動きが金融資産の取引により決定されるという発想で組み立てられています。
仮に世界にアメリカと日本しか存在せず、お金を運用する手段が円預金かドル預金しかないと仮定します。円の預金の収益率は預金金利になります。一方で、円のお金をドル預金に投資した場合の収益率は、ドル預金の金利とドルの値上がり率になります。
この収益率が少しでも違えば、資金がいずれかに集中して流れ込むことになるでしょう。
結果的に、円の預金金利は上がり、ドル預金の金利は下がり、ドルの値上がり率を加味した上での双方の収益率が一致するところまで資金の動きは続くでしょう。
2つの通貨で運用を行っても、収益率が変わらなくなるのが「金利平価説」です。
この理論は、次の式で表現できます。
円金利=ドル金利+為替レート予想変化率(ドル高率)
物は輸送手段の制約から為替レートで値段が調整されるには時間がかかりますが、金融市場は常にリアルタイムで世界に通じているため、短期的な為替レートの動きを説明するには、このモデルの実用性が高いのです。
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私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う