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戦略投資と純投資
株式投資は一般的に、投資収益の獲得を目的として行います。国債や預金等の価値の変動が小さい資産への投資は、投資による収益が限られていますが、株式は価値の変動が大きく、高い収益を得ることも可能です。このような投資収益を得ることを目的とした投資を、「純投資」言います。「純投資」は、将来的に売却することを前提としています。
一方、将来的に売却することを前提としていない株式投資もあります。例えば企業型の会社を買収して子会社化するなどのケースにおいては、その株式取得目的は配当や売却益を得ることではなく、事業を行うことによる、ビジネス上の業績向上の効果を期待したものです。このような投資を、「戦略投資」と言います。
株式市場の参加者
日本の株式市場の参加者は下図の通りで、それぞれの面積は日本の株式市場における存在感の大きさを表しています。
株式投資を行う参加者は、大きく分けて機関投資家と個人投資家に分かれます。
機関投資家は投資を行う主体が会社組織であり、投資そのものを業としている会社もあれば、本業に付随して投資が行われている場合もあります。
個人投資家は、株式売買を職業としているデイトレーダーから株主優待を主な目的とする人に至るまで多彩です。
株式売買の構成をみると、海外の機関投資家の存在(約67%)が際立っています。わずか10年前の2011年には51%のシェアでしかなかった海外投資家が、今は約7割を占めています。その次にくるのが、日本の個人投資家で、シェア約25%です。
機関投資家の大半は、資産運用機関です。資産運用機関は、投資そのものを本業とするもので、年金や投資信託からの運用を受託、あるいは投資信託そのものを運営している機関もあります。
銀行も機関投資家の一部で、収益多様化の一環として株式投資を行うほか、「株式持ち合い」と呼ばれる株式を大量に保有していました。しかし、自己資本比率規制の厳格化や、時価会計の影響もあり、売買というより売却が多く、大幅に売り越しています。
様々な投資手法
機関投資家の運用方法には複数のアプローチがあり、通称「ロング・オンリー」と呼ばれるファンドと、「ヘッジファンド」に区分できます。
またロング・オンリーの中で、ラージ・キャップとスモール・キャップに分かれています。時価総額が相当額以上の銘柄を扱うのがラージ・キャップ、相当額未満の銘柄を扱うのがスモール・キャップです。以下、グロース投資、バリュー投資、ヘッジファンドについて順に述べます。
グロース投資
グロース投資とは、企業の将来における成長性に基づいて、業績の伸びが期待できる企業に投資する手法です。投資を行うにあたっては、例えばSWOT分析が考え方の基本となると思います。
大型のグロース銘柄の分かりやすい例としては、GAFA等のテクノロジーを背景に、消費者市場における存在感を拡大し続けている企業群です。また創業から急成長を続けている企業など、利益水準が低く赤字の場合も少なくありません。
アメリカのテスラ等もその例で、株価収益率(PER)は128倍であり、アメリカのS&P500の平均PERが現在約18倍であることを考えると、足元の収益は関係なく、成長への期待が株価形成につながっていることが分かると思います。
バリュー投資
世の中は、成長を期待できる会社ばかりではなく、むしろ伝統的な安定した経営を誇りにしている企業の方が多いかもしれません。そうした企業含め、良い企業も悪い企業も関係なく、市場で取引されている株式が、本来評価されるべき価格より安いような銘柄を対象とするのが、バリュー投資です。そのため、バリュー投資は「割安株投資」とも呼ばれています。
しかしバリュー投資は、単純にPERやPBRをソートして、低水準の銘柄を買うだけでありません。企業価値を分析し、市場がその企業を過小評価していると判断出来て初めて積極的な投資を行うのです。つまり、市場が読み違えている場合や、情報を十分に反映していないことで生じる市場価格のゆがみを利用した投資スタイルです。
バリュー投資は、過小評価されている状態から妥当な評価へと、市場がその銘柄を再評価することが前提となっています。それまで時間がかかったり、本当に市場が再評価してくれるのかという不確定要素が存在しているので、その点も考慮に入れる必要があります。
PERもPBRも、上位に入るものは比較的小規模で新しい企業が多く、伝統的な企業ほど低位です。
なお低PBR株は特徴的で、地銀のオンパレードになっています。これは、地銀の低収益性に対する厳しい評価と、成長性の欠如、将来的な経営環境の悪化を、市場が織り込んだ結果ではないかと思います。
ヘッジファンド
ロング・オンリーとヘッジファンドに区分できると述べましたが、ロング・オンリーという名前なのは、「ショート」しないためです。「ショート」とは、空売りを意味しており、保有していない株式を他から借りて売却する取引のことです。また、空売りしている状態を「ショート・ポジション」、買い持ちしている状態を「ロング・ポジション」と言います。
例えば、X社の株価が下がる(120円から100円に)と予想するのであれば、先に株を借りて120円で売っておいて、後で100円で買い戻し、借りた株を返すことにより、20円の利益を出すことが出来ます。
なお、ヘッジファンドの投資スタイルも、いくつかタイプがあります。
①ロング・ショート
ロング・ポジションとショート・ポジションを組み合わせて投資収益を狙う手法です。この投資戦略は、株式市場全体が悪化する見通しでも、改善する見通しでも、市場の方向性に限らず収益を追求することが出来ます。
②イベント・ドリブン
株価に大きな影響を及ぼすようなイベント(M&Aや破綻など)をテーマとして投資機会を追求するのが、イベント・ドリブンです。
③グローバル・マクロ
各国の景気や社会情勢を含むマクロ経済の動向を予測して、良い方向でも悪い方向でも良いので、市場の方向性に賭ける投資手法です。
ヘッジファンドは、ハイリスク・ハイリターンのイメージが強いですが、多彩な金融取引でリスク管理しながら収益を追求する、リスク抑制的な側面もあるということです。
本日のオマケ
私の本日の取引
1.日本株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う