Knowledge
債券の価値の変動要因
債券の価格は、主に次の3つの要素から大きな影響を受けます。
第一に、最も本質的なのは市場金利の動きです。特に中長期の金利の上下により、債券価格は大きく変動します。このメカニズムは後述します。
第二に、債券ごとの個別要因に由来するのが、債券の信用力です。債券の信用力の源泉は、その発行体の返済能力です。国債であれば、国家財政の状況などが影響します。社債であれば、発行会社の財務状況等が影響します。そして、この信用力をプロの目で評価するのが格付け機関であり、決算などの業績動向以上に、格付けの動きが債券価格へ影響を及ぼすことも少なくありません。そのため、格付け機関が唐突に格付けを変更することは珍しく、見直しの検討について示唆する「ウォッチリスト」や格付け変更の見通しを示す「アウトルック」等の公表を行いながら、市場への影響を軽減する措置が取られます。
第三に、金融市場やマクロ経済環境の動向です。例えば新型コロナ禍やリーマンショックなどの金融危機に際しての金融緩和により「過剰流動性」が流れ込み、ある種のバブルになりました。また、債券市場以外の市場動向にも左右されます。株式市場の見通しに不確実性が増すと、投資家は比較的安全な資産へを運用を変えます。これをリスクオフといい、債券市場にお金が流れ込む傾向があります。特に国債などの安全資産への流入が顕著になり、債券価格は上昇します。
債券価格と金利
金利が上昇すると債券価格は下落します。逆に金利が下落すると債券価格は上昇します。
例えば、利率1%、期間3年の国債を100万円購入したとします。この場合、毎年1万円(=100万円×1%)の金利を受けるので、3年間で3万円(=1万円×3)の金利を受け取ることになります。
しかし購入した直後に金利が急騰して10%になったとします。その時に発行された国債を100万円購入すれば、毎年10万円(=100万円×10%)の金利を受けるので、3年間で30万円(=10万円×3)の金利を受け取れることになります。この場合、利率1%で購入した、あなたが保有している国債の価値はどうなるでしょうか。
3年間で受け取れる金利の合計額を比較すると、保有する国債よりも新規で発行される国債の方が27万円(=30万円-3万円)も多く金利を受け取ることが出来るので、あなたが保有する国債を27万円値引きすれば買い手が見つかる可能性があります。つまり、買い手は73万円(=100万円-27万円)で国債を買い取ることにより、3年後に100万円が償還されると共に、3年間で3万円の金利を受け取ることになるので、合計103万円受け取れます。この時利益は30万円(=103万円-73万円)で、金利10%の国債を3年間保有していた場合に受け取る金利と同額であることが分かると思います。
さらに期間が3年ではなく5年であった場合、同様に金利上昇を想定すると、5年間の金利合計は保有している国債が5万円(=1万円×5)であるのに対し、金利上昇後に発行される国債は50万円(=10万円×5)になります。この場合、差額は45万円(=50万円‐5万円)となるので、55万円(=100万円‐45万円)でないと買い手が見つからないということになります。
この例は時間価値を考えない単純計算に過ぎませんが、金利の上昇が債券価値を害すること、また期間が長い方がその影響度が大きいことが分かると思います。
逆も同様で、金利が下落する場合は債券価格が上昇します。
債券の利回り
債券の利回りを構成する要素は以下の3つです。
債券利回り = リスクフリーレート + クレジット・スプレッド + 長短金利スプレッド
リスクフリーレート
金利の土台部分を形成する要素が、「リスクフリーレート」です。
具体的には、既に発行された長期国債で満期までの残存期間が1年を切った債券の利回り、あるいは「国庫短期証券」という名称の短期国債の利回りを言います。なお、国庫短期証券は、割引方式で発行される、利率がゼロの国債です。つまり100円で償還される債券を、100円を下回る価格で発行、募集する形態(割引方式)で、その差額部分が利回りの計算根拠となります。
クレジット・スプレッド
リスクフリーレートの元となる国債は、基本的に元利金が安全に支払われる、デフォルトリスクのない債券です。一方社債などその他の債券は、政府保証などの特殊条件が付されていない限りはデフォルトリスクがあります。デフォルトの可能性が高ければ、より高い利回りがないと買い手がつかないので、信用リスクの高さによって金利が上乗せされます。この上乗せ部分を「クレジット・スプレッド」と言います。
長短金利スプレッド
債券の期間の長さに伴うものを「長短金利スプレッド」と言います。
一般的に次の3つの理由から、期間が長期化するほど、この上乗せ金利部分は増えます。
- 長期になれば発行体の財務状況が変わる可能性があり、発行体の財務状況が変わることによりデフォルトの可能性が上昇するリスクがあるため。
- 長期になれば金利の変化にさらされる期間が長くなることから、短期のものよりリスクが大きくなるため。
- 債券の期間が長ければ長いほど、現金が手元にないことによる利便性の低下が避けられないため。(=流動性プレミアム)
実務的な債券利回り
債券市場の実務の世界では、リスクフリーレートとその他という形での分解を行うことはなく、簡単に基準金利と債券スプレッドという2つの要素で債券利回りを説明しています。
債券利回り = 基準金利(期間に応じたスワップレート) + 債券スプレッド
基準金利は信用力の高い債券の利回りであり、具体的には平均的な銀行の信用力を示すものです。そしてこの基準金利に用いられるのが「スワップレート」です。スワップレートは年限ごとに存在しており、期間4年の債券であれば、4年物のスワップレートが基準金利になります。
また、このスワップレートにどれだけ金利を上乗せすることにより買い手が見つかるのかで、債券スプレッドが決まります。
本日のオマケ
私の本日の取引
1.日本株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
私の投資方針は、これらの本を読んで決めたものです。これらの本を読むか読まないか、知っているか知らないかで、将来の資産形成は大きく変わると思います。
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う