Column
何のために投資するのでしょうか。考えてみたことはありますか?
小学5年生の時に父親から100万円与えられて株取引を始め、12歳で既に1000万円以上を稼いだという投資家がいるそうです。驚きませんか?毎朝5時に起きてその日の大まかな相場をチェックし、ワールドビジネスサテライトを見て経済誌を読み、経営者である父親と日々色々な時事問題を討論し、母親も金融機関勤務という、金融に親しむ環境が日常的にある稀有な境遇にある方です。
しかしそれにしても、高パフォーマンスを上げ続けるのは並大抵のことではありません。すごいと思う一方で、お金を増やすことが目的化してしまうのではないか、それで良いのかと思う面もあります。(参考:「義務教育を無駄にするのは人間失格」1年で1000万円稼いだ”小学生投資家”の日常 授業中はスマホでトレード、朝は5時起きで相場をチェック… | 文春オンライン (bunshun.jp))
日本の家計の過剰貯蓄は年間約30兆円といわれています。逆に言うと人生を豊かにするはずのお金がそれだけ使われずに貯蓄されているということなのですが、資産運用の本来の目的は、将来使えるお金を増やすことであって、使わないお金を増やすものではないはずです。
しかし、高い投資成果を得るという体験は、時としてお金を増やすことが目的化することにもつながり、「いかに上手にお金を使うか」という視点が欠けてしまうことにもつながります。
ゴールベース・アプローチ
アメリカには、「ゴールベース・アプローチ」というライフプランのイメージを描く考え方があります。
この考え方では、まず結婚、子育て、住宅購入、高級車の購入、早期退職等のライフイベントを決めます。次に、キャリアアップしていく中でのキャッシュ・インフロー、定常的な生活資金に加えて、それぞれのライフイベントに伴うキャッシュ・アウトフローの計画を作成します。最後に、これらを総合的に踏まえた運用方針を決定します。
ライフイベントの重要度や必要資金額によって運用におけるリスク許容度は人それぞれ異なりますし、ゴールに合わせてポートフォリオを複数設定することもあります。また退職後のライフスタイルや価値観も変化する中で、退職前後でそれまでには考えもしなかった新たな目標も見えてくることもあるでしょう。リフォーム、引っ越し、趣味、子供や孫への資金援助等、これらをイベントに設定し、それに適した運用を行う、それがゴールベース・アプローチです。
人的資本と財務的資本の考え方
人的資本と財務的資本の考え方は、運用姿勢を考える上で重要です。
財務的資本は、金融資産のほか、住宅などの不動産、美術品なども含まれます。一方で人的資本とは、キャリアを歩む中で得られる収入を現在価値に割り引いたものを合計したものです。
そのため、人的資本は若い世代ほど大きく、歳を重ねるにつれて徐々に減少していきます。逆に財務的資本は若い世代ほど小さく、時が経過するにしたがって徐々に積み上がっていくはずです。
そして、人的資本が大きい(若い時)ほど、リスク許容度が高いと考えられます。人的資本が大きければ、投資における失敗を吸収できる余地があると考えられるからです。これらを前提にして、ポートフォリオを組むのです。
ハーディングを抑える効果
行動経済学では、群衆行動のことを「ハーディング」と言います。Herd=群れです。
このハーディングによって、バブル相場では「バンドワゴン効果」という、ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する者を更に増大させる効果が生じ、上昇が上昇を呼ぶ状態になります。逆に金融危機などの相場急落場面では、ハーディングによって、下落が下落を呼ぶ状態になります。
ゴールベース・アプローチでは、このような「ハーディング」を抑える効果があります。
アメリカの投資顧問会社がまとめた、「顧客が2008年金融危機時(リーマンショック時)にどう反応したか」の調査によると、相場が大幅に下落した際、ゴールベース・アプローチに基づいて運用する投資家は、そうでない投資家に比べ、落ち着いた判断を行ったことが分かったそうです。つまり、一般投資家が下落への恐怖から売りに走る一方で、ゴールを設定していた投資家は、そうした感情に基づく群衆行動に流されにくかった可能性があるということです。具体的には、一般投資家がリスクポジションを大幅に引き下げた(大量に売却した)一方で、ゴール設定をしていた投資家の多くが、リスク資産に手を出さない(売却しない)どころか、増やした(追加購入した)投資家も少なからず存在したということです。
相場には急な上げ下げがつきもので、そこで感情に任せた売買を行うと損をする傾向があります。そのような中で冷静さを保ち、周囲に同調しないことが大切なのですが、ゴールを設定することによってそれが可能になるようです。
本日のオマケ
私の本日の取引
1.日本株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
私の投資方針は、これらの本を読んで決めたものです。これらの本を読むか読まないか、知っているか知らないかで、将来の資産形成は大きく変わると思います。
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う