Column
流動性危機に陥った暗号資産取引所の米FTXトレーディングの問題に伴い、ここ数日、暗号資産(仮想通貨)が軒並み暴落しています。(参考:暗号資産下げ止まらず、業界への懸念続く | ロイター (reuters.com))
ブロックチェーンを用いた暗号資産、ビットコインがデビューした頃は、その技術や考え方や新鮮で、どちらかというと好意的に受け止められていたように思います。しかしビットコインが実際に投資対象になってから既に11年が経過した現在、暗号資産が私たちの生活の中で何か便利なものをもたらしたと言えるでしょうか。
暗号資産の価格を上げる、もしくは維持するには、新たな暗号資産投資家をリクルートする以外にありません。いわゆる「ねずみ講」のようなものです。今回の暴落にあるように、ただのカジノのようなものでしかなくなってしまったのではないでしょうか。
「既に暗号通貨はマルチ商法みたいなものになった。もうこんなものに関わりたくない」
(あるDOGECOIN開発者)
暗号資産とは何か
暗号資産とは何かという問いに対し、一般的に次の4つ主張があります。
- 暗号資産は通貨である
- 暗号資産はコモディティである
- 暗号資産は一種の証券である
- 暗号資産とは一種の芸術であり、美術である
1.暗号資産は通貨なのか?
暗号資産は通貨の概念には当てはまりません。なぜなら、現在これを決済手段として使うことがほとんどできないからです。ビックカメラ等で使うことは出来ますが、金額も決済方法も限定されており、あまり普及していません。ボラティリティが大きすぎるからです。
ビットコインを買い物に使っている方がほとんどいないということは、暗号資産が交換手段としての役割を担うことはほとんどできていないと言えます。
2.暗号資産はコモディティなのか?
原油、ゴールド、木材等はコモディティと呼ばれます。コモディティとは他のサービス、グッズ、もしくは生産に使われる材料のようなものです。
例えば、原油が生成されてガソリンが作られ、それが車を走らせます。また原油はプラスチックの原料にもなります。ゴールドは投資用にも使われますが、ジュエリーとしての需要もあり、半導体にも埋め込まれます。つまり、コモディティには投資以外の「本源的価値」があります。
一方でビットコインはどうでしょうか。デジタルゴールドだと主張する方もいますが、消そうと思えば簡単に消えてしまうのが暗号通貨の特徴です。
3.暗号資産は一種の証券なのか?
例えば株式という証券は、会社が株式が発行して、投資家が株式を買うことによって投資をします。暗号資産も、発行したコインを多数の人が買うことによって投資するので、その点は似ています。
しかし、根本的に違う点があります。
それは、株式が将来キャッシュフローを生む会社が発行しているものであるのに対し、暗号資産は将来キャッシュフローを生むものではないという点です。将来キャッシュフローを生まないものの本源的価値は、ゼロです。
よく、ゼロサムゲームやマネーゲームという話がありますが、暗号資産はゼロサムでもありません。ゼロサムとは、誰かが勝って誰かが負けた結果、トータルはゼロになるということです。暗号資産は、これがネガティブサムになります。なぜなら、ビットコインのマイニングをしている人達は報酬でビットコインをもらっており、それがコストに当たるからです。
4.暗号資産は一種の芸術なのか?
最近NFTが流行っています。NFTとは、Non Fungible Token(非代替性トークン)であり、ブロックチェーンのようなものです。デジタル芸術作品についてのデジタルオーナーシップの売買をするという話ですが、とんでもない高額で取引されている例があります。
暗号資産を支持する人達
暗号資産を支持する人達は、政府はなるべく小さくていいとするリベルタリアンです。彼らが目指すのは究極の自由であり、そのためには政府の力は極力削るべきであり、なるべく税金も払いたくない、あわよくば自分たちのところ(ビッグテック企業)に権力を集中させたいと考えています。
この考え方はブロックチェーンのコンセプトに似ています。ブロックチェーンは中央組織がなくても、信頼が生まれて機能します。なぜなら過去の取引が改竄できないという特徴を備えているからです。
しかし、これが本当に一般人にとっていいものなのかをよく考えなければなりません。
過去の取引が改竄出来ないということは、盗まれたものを取り戻すことが出来ないということです。ハッキングされたら取り戻せない、一旦起きた取引は戻せないということです。この点クレジットカードが不正に使われていたら請求できたり、間違って送金されたり引き落とされれば取り戻すことが出来る他の決済方法とは異なります。
もし、リベルタリアンが主張するような世界が実現しても、そんな世界で恩恵を受けられるのは、一部の権力者と犯罪者(銀行を使えない人たち)ぐらいしかありません。
ステーブルコイン・テザーの正体
ステーブルコインは価格が動かないコインとされています。例えばテザーというステーブルコインは1テザー=1ドルとされ、テザーを発行するテザーホールディングス社(テザーHD)によると、同社が1テザー発行したら、バックには本物の1ドルがあるというものです。
現在テザーの時価総額は10兆円(全暗号資産中第3位)に達しています。本来のテザーの約束であればテザーHDは10兆円(700億ドル)の現金を保有していなければなりません。しかしそれには、以前から疑問が呈されていました。つまり、テザーを発行して、それを使ってビットコインを買い、ビットコインの相場を作ってきたのではないかということです。
テザーHDが公開した資産の内訳をみると、その半分以上が短期社債であるCP(コマーシャルペーパー)であることが判明しました。そしてCPのうちの大半が、おそらく中国大企業のCPで、これらは暴落中のものばかりだといいます。つまり総合的に考えると、テザーというステーブルコインにはほとんど中身がないということです。テザーも、そろそろ限界かもしれません。(参考:テザーというステーブルコインが、ビットコインの足をすくうかも? – SAKISIRU(サキシル))
テザーが崩壊すれば、暗号資産の相場は今回同様大きく沈む可能性があります。そうなると、一般的な投資家も損を被ることになります。現在米国のSECがステーブルコインに銀行免許の取得を義務付けようと動いているところです。
参考文献(エミン・ユルマズ著『エブリシング・バブルの崩壊』)
本日のオマケ
私の本日の取引
1.日本株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う