Column
前々回記事及び前回記事で、1970年代以降同時多発テロの発生まで、3回のマネーの大量バラマキがあったという話を取り上げました。
1回目は、オイル・ショックというエネルギー価格急騰に対処するためのもの。2回目は、2000年のコンピューター誤作動問題を未然に対処しておくべく、予備的にマネーを供給しようとしたもの。そして3回目は、同時多発テロの発生で世界同時不況を恐れてのものでした。今回はその続き、最終話です。
リーマン・ショックとゼロ金利政策のはじまり
2000年に入ってから証券化商品の開発が活発化し、どんなものにでも金融工学を駆使して金利を付加すれば投資商品として販売できるということで、米国の大手投資銀行などが次から次へと証券化商品を開発しては販売し、手数料等を荒稼ぎしていました。
「99.9996%の確率で安全かつ、金利が稼げる」という謳い文句の証券化商品を、金利が欲しい世界中の金融機関は飛びつくように購入していました。ところが2008年に入ってから、絶対にありえないだろうと高をくくっていた、確率0.0004%の裏目が出るようになります。これはマズイということで売りが殺到し、米国の大手証券会社、投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻しました。これが2008年9月のリーマン・ショックです。
米国金融当局は、「バブルの後始末は自己責任」ということでリーマン・ブラザーズは救済しませんでした。しかしそれが株価をはじめ金融商品の大暴落を招いてしまったため、「銀行は大き過ぎて潰せない」というお題目を掲げ、1970年代から数えて4番目の大量マネー供給を行いました。この時各先進国が行ったのは、マネーの大量供給だけではなく、政策金利をゼロにまで引き下げる超ド級の金融緩和政策です。中国も、国内景気刺激策として50兆円もの資金投入をし、その資金が巨額の不動産投資へと流れ込んでいきました。
なりふり構わぬ大量のマネー供給で、確かにリーマン・ショックで懸念された金融マーケットの底割れは防げました。金融恐慌に陥ることもありませんでした。
しかし、マネーの大量供給とゼロ金利政策は、インフレの種をまき散らす結果となりました。
極めつけはコロナ
2020年2月の終わり頃から、世界各国はコロナの感染防止でロックダウンや人々の移動制限という政策を次々と打ち出しました。その結果、各国とも経済活動が空白化します。
そこで各国は、中小企業や飲食店等に所得補償をし、国民に現金給付を実施し、リーマン・ショック時をはるかに上回る規模の金融緩和を実施し、政策金利もゼロあるいはマイナスにまで持っていきました。これが、1970年代から数えて5回目の大量のマネー供給です。
通常、中央銀行の財務規模は、その国のGDPの10%台にあります。
ところが、米FRBはGDPの40%近くまで財務を含まらせて、大量の資金を供給しました。ヨーロッパ中央銀行はEU全体のGDPの60%まで、日銀に至っては日本のGDPの130%まで、財務規模を膨らませました。
1970年代以降の大量マネー供給の歴史を図示したものが下図です。
今日までの約50年間を振り返ると、投入されてきたマネーの総量は、その間の世界経済の成長発展に必要なマネー量をはるかに超えていることが分かります。
過剰なマネー供給の結果もたらされたもの
1970年以降のこれまでの5回のマネー供給は、緊急時の経済活動停滞の穴埋めに不可欠であったとはいえ、穴埋め分を上回る量のマネーが供給されてきたのは事実です。
それでも、これまでインフレの気配が持ち上がってこなかったのは、前回記事に書いた通り世界経済のグローバル化により低コスト労働力が供給されたからです。しかしここへきて、ついに世界的なインフレ圧力が台頭してきました。
経済活動は、全て需要と供給の力関係で動きます。そして、大量に供給されたものは価値が下がるのが鉄則。大量に供給されたマネーも然りです。
参考文献(澤上篤人著『暴落相場とインフレ 本番はこれからだ』)
本日のオマケ
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私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
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