2022年は投資家にとってはアゲンストの年でした。プロの運用がいかに厳しかったかは下図に示す通りで、ここのところ投資家に人気があったために新規設定が相次いでいた外国株投資信託177本の平均リターンも、△13.81%と、低迷していたことなどが分かります。
このようなマーケット状況の中、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏がどのようにかじ取りしてきたのでしょうか。
空前の規模の買い出動
下図は、バフェット氏がCEOを務めている投資会社、バークシャー・ハザウェイの公表資料をもとに、『株式投資2023 不安な時代を読み解く新知識 』の著者、前田昌孝氏が作成された株式投資動向です。
図中の黒い棒は、各四半期の新規投資をした金額から、売却・換金した金額を差し引いた「売買代金差額」を表しますが、2022年1月~3月期に大きく上に伸びていることが分かります。大きく買い越した(約400億ドル)ということです。バフェット氏が買うのは主に米国株ですので、2022年に入ってからの米株式相場の調整(下落)を見て、大胆に買いに動いたことが見てとれます。
パークシャー・ハザウェイでは、2021年9月末までキャッシュポジション(待機資金)が非常に多く30%を超えていましたが、2022年1月~3月期に実施した空前の規模の買い出動の結果、2022年3月末のキャッシュポジションは一気に19.8%にまで低下しました。
この時バフェット氏が購入した銘柄は、オキシデンタル・ペトロリアム、シェブロンといった石油株です。下図は、2022年6月末にバークシャー・ハザウェイが組み入れている米国株式45銘柄を全て掲載したものです。(日本の大手商社株や中国の電気自動車メーカーBYD等米国に上場していない外国企業の株式は含みません。)
保有株式の時価評価額は目減り
下図(再掲)のグレーの棒グラフは、推定評価損益を表しますが、2022年4月~6月期に大きく下に伸びていることが分かります。大きく評価損が出た(約668億ドル)ということです。またその次の2022年7月~9月期も、8月中旬までは回復傾向でしたがその後暗転し、9月までの通算では結局、約84億ドルの評価損が出ました。
これらの評価損は、2022年に新たに購入した石油株から生じたものというより、主に既に保有していたアップル、バンク・オブ・アメリカ等から発生した評価益の減少ですが、いずれにしても2020年4月~6月期以降の株式相場は、バフェット氏にとっても厳しい局面が続いていると言えるでしょう。
バークシャー・ハザウェイの株式保有額は2020年6月現在、米国市場上場銘柄だけで3,001億ドル、外国株も合わせると3,464億ドルに達しますが、インデックスファンドの運用と異なり、特定の少数銘柄に絞って保有する集中投資型の運用になっています。同社が2022年6月までに1度でも保有したことがある銘柄数は190を超えますが、3/4は既に売却し、現在保有している銘柄数は45に過ぎません。大勢の契約者に帰属する資産を運用している割には、アップル1銘柄だけで米国株ポートフォリオの41.7%を占め、保有上位10銘柄で米国株ポートフォリオの87.9%を構成するという超集中投資です。
バークシャー・ハザウェイの新規購入銘柄は、市場参加者の注目を集めますが、保有銘柄が常に値上がりしているわけではなく、ここ数年を振り返ってもIBMへの投資はほとんど成果は出ませんでしたし、航空会社株への投資は失敗と言ってもいい状態でした。
米国株式相場のベンチマークとの比較
「投資の神様」と言われているバフェット氏も、米国株式相場のベンチマークであるS&P500の騰落率と比較して、いつも勝っているわけではありません。
ある一定期間をとれば、投資に大成功する人も大失敗する人もいますが、どんな銘柄が上昇するかを予想することは、どんなに勉強を積み重ねたとしても、やはり非常に難しいのです。
家族にはインデックスファンドを推奨
バフェット氏は、2022年2月26日に公表したバークシャー・ハザウェイの「株主への手紙」の中で、自分の投資は株価の変化を追い求めているのではなく、投資先の会社の事業を買うのが目的だと言っています。
バフェット氏は、家族には以前から、個別株投資ではなくS&P500に連動するインデックスファンドを買うように勧めています。株式投資には、必勝法も必敗法もなく、バフェット氏を真似すれば勝てるというわけでは、残念ながらないのです。
参考文献(前田昌孝著『株式投資2023 不安な時代を読み解く新知識 』)
本日のオマケ
私の本日の取引
本日休場のため取引自体はしていませんが、日々行っている「自動買付」の積立設定を変更しました。この変更は、来週以降反映されるはずです。
この先もしばらくインフレが続くのではないかと思っているため、少し出遅れ気味ではあるのですが、コモディティを投資対象に加えました。本当は個別株式も売買したいのですが、今勤めている会社の規程により残念ながらそれが出来ないので、投資信託の銘柄入れ替えや売買のみ、行っています。
<変更前> 1.日本株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
<変更後> 1.日本株式インデックスファンド 7,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 7,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド) 3.コモディティインデックスファンド 7,000円 (自動買付) (三菱UFJ国際-eMAXISプラス コモディティインデックス)
私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う