ディストピア - 反理想郷・暗黒世界
デジタル弱者が住みにくい韓国
新型コロナは社会の慢性病ともいえる「格差問題」をさらに深刻化させています。
韓国が誇るIT技術の発達もその一因で、コロナによって町中に急増したキオスク(タッチスクリーン方式無人端末機)は、デジタル弱者が日常生活で直面する最も大きな難関です。
AI時代の到来と主に最低賃金が急激に上昇した韓国では、人件費の削減を理由に「無人店舗」や「無人販売機」がハイペースで普及していきました。コロナによる非対面・非接触の新生活様式がその流れに拍車をかけ、キオスク導入に最も積極的なファストフード業界の場合、ビッグ3と呼ばれるロッテリア、マクドナルド、バーガーキングの導入率は70~90%に達します。設置店ではキオスクを使った注文が80%にもなり、店員とのやり取りはほとんどありません。
大型ディスカウントスーパーのチェーン店でシェアトップ3を占めるEマート、ロッテマート、ホームプラスも無人レジを設置した店舗が50~80%に達します。他にも若者が多く訪れる映画館、コンビニ、カラオケ店、薬局や病院でも対面窓口が減らされ、キオスクが増えています。導入が爆発的に増加したことで、関連産業の市場規模は3,500億ウォン(約350億円)まで膨らみ、サムスン電子やLG電子なども参入しているほどです。
しかしその裏では、このような社会の流れについていけず不満を抱く人たちがいます。
「・・・今や生まれ育った韓国に住んでいながら、一歩家の外に出るのが怖い。最近はどこに行っても機械、機械。私のような老人は外で飯を食べることすら簡単じゃない。どんどん自分が馬鹿になってるみたい。」
消費者院が2020年9月に高齢者300人を対象にキオスクの利用についてインタビューしたところ、「複雑すぎる」(51.4%)、「次のページに富んだ時にボタンを見つけられない」(51%)、「後ろの人の視線が気になる」(49%)、「絵や文字が良く見えない」(44.1%)等の不満が相次ぎました。
ITネイティブの若者たちも、キオスクに仕事を奪われるかもしれ2ないという漠然とした不安を感じていると言います。2021年8月、求職・求人サイトが行っ2,868人のアルバイトを対象に行ったアンケートによると、「最近、キオスクによって職を奪われる不安を感じたことがある」(58.6%)、「将来、自分の業務がキオスクにとってかわられると思う」(47.5%)と答えています。
デジタル格差はもはや逆行することが出来ない全世界的な問題です。
しかし、大した準備期間もなく突然、非対面・非接触社会へと転換した韓国では、デジタル弱者に対する社会的配慮があまりに欠けていると言えます。
銀行も次々と閉鎖される
モバイルバンキングなどネット上で決済が出来る銀行のサービスが普及したことで、この6年間で全国の銀行の支店が1,500か所も閉鎖されました。その店舗数はソウルを含む首都圏が最も多く、全体の60%程度にのぼります。銀行側は、店舗を訪れる顧客が減ったことを理由にあげ、致し方ないと理解を求めていますが、デジタル弱者に対する配慮が全くないと非難の声も上がっています。
2021年12月のある日、ソウルのある銀行の支店前には、約50人の高齢者が集まっていました。対面業務を完全に廃止し、ネット上での対応に一元化するという銀行側の方針に対応するためです。
「生活が苦しいこのご時世に銀行の支店まで閉鎖され、我々にどう暮らしていけというのか」
ある高齢者は、テレビショッピングで購入した物品の代金の振り替えや、親戚・知人の香典やご祝儀などの送金、税金や公共料金の納付などをするために、銀行窓口を利用するそうです。これらを窓口で行う場合、金額によって手数料が500~4,000ウォン(約50円~400円)かかります。これをもしモバイルバンキングで行えば、手数料は0です。
しかし、老年層のモバイル利用率は格段に低く、韓国ギャラップの2021年3月の調査によると、1年以内にモバイルバンキングを利用したことがあると答えた60代以上の高齢者は、男性が25%、女性が22%に過ぎませんでした。
「朝鮮日報」は、韓国銀行と統計庁などの資料を基に、銀行の窓口を利用する場合と、デジタル金融サービスを活用した場合との手数料や利子などの比較を記事にしたことがあります。それによると、両者の間では、年間1人当たり最大180万ウォン(約18万円)もの差が生じ、その金額は、デジタル金融サービスが使えない高齢者夫婦の1カ月の生活費の90%に達します。
韓国では、高齢者貧困率が2018年に43.4%を記録し、OECD平均の3倍に達します。急激に襲ってきたデジタル社会という潮流に飲まれた格好の高齢者は、更に生活が苦しくなっていくでしょう。
商業圏も崩壊へ
韓国不動産院によると、2021年第3四半期の明洞商店街(ソウル最大の繁華街)の中・大型焦点の空室率は47.2%、小型商店は43.3%で、まさにシャッター街と化しています。
「1日に売り場を訪れるお客さんは10人以下です。その中で化粧品を買ってくれるのは5人ぐらいで売り上げは10万ウォン(約1万円)にもなりません」
日本でも大変な人気を集めた『梨泰院(イテウォン)クラス』の舞台となった地区も、内需の低迷と高いテナント料のため、19年から空室率が急増しています。2021年第3四半期の空室率は18%でした。
国を代表する商業圏がドミノ倒しのように崩壊している原因について、メディアはコロナによる景気低迷を1番に挙げています。しかし、商店街とは対照的に、韓国のEコマース企業がコロナ禍で過去最高の実績をあげている点を考えると、商店街崩壊の背景には、オフラインからオンラインに急激に移行したショッピング文化があると考えられます。
韓国を代表する衣類流通の中心地である東大門ファッションタウンには32の商店街があり、35,000余の卸・小売り店舗で50万人以上の労働者が仕事をしています。しかし「東大門ファッションタウン観光特区協会」の発表によると、2018~2020年上半期の2年間で、そのうち1万店舗余が廃業に追い込まれてしまいました。韓国でコロナ禍が始まったのは20年1月以降なので、東大門商店街の不況はコロナだけでは説明できず、むしろネットの影響が大きいと考えられます。
参考文献:金 敬 哲 著『韓国 超ネット社会の闇』
本日のオマケ
私の取引
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またこれらとは別に、日経平均225(ダイワ上場投信-日経225(大和日経平均)【1320】株の基本情報|株探(かぶたん) (kabutan.jp))も、少しずつ購入しています。
今週は、27,900円から100円下がるごとに1口ずつ買うように指値注文を入れていました。
結果、今週合計12口追加購入ができました。現在評価額は1,157,345円(43口)、含み損は35,002円(△2.94%)です。平均取得価格は200円以上下がり、27,729円/口になりました。
引き続き、株価が下がる場合はどんどん追加購入していきます。
私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う