2014年7月、青島で中古住宅を買った。総額89万元(約1,691万円)で、頭金25万元は夫婦で出した。64万元はローンを組む。返済金は月に4,066.3元(約77,000円)となる。
(「房奴(=住宅購入奴隷)」として生きる)
64万元をローンで借りたと言っても、現実感はなかった。しかし月給から考えると体が震えた。4,066.3元というのはほとんど僕の月収と同額だったのである。
「子曰、吾十有五而志乎学、三十而立、四十而不惑、五十而知天命、六十而耳順、七十而従心所欲不踰矩。」これは有名な孔子の言葉で、孔子自らの生涯を要約した言葉だと言われています。
「15歳のとき学問で身を立てようと決心し、30歳でその基礎ができ、40歳で自分の進む方向に確信が持てるようになった。さらに50歳で天命を自覚し、60歳のときにはどんな意見にも素直に耳を傾けられるようになり、70歳になると、欲望のままにふるまっても人間の規範を逸脱しないような自在の境地に達することができた。」という意味です。
2020年、中国では1990年生まれが30歳を迎えました。この年代は、史上稀に見る中国の経済発展をけん引してきた若者たちで、彼らの消費行動は、中国巨大市場の代名詞でもあります。
しかし彼ら輝ける世代の若者たちは、30歳を迎えても「基礎が出来る(=自立)」とは程遠いと言います。ビジネス社会の激烈な競争に身を置き、夜7時も会議の最中という生活。しかもカード使用による負債が増大していて、見た目がまるで60年代生まれと変わらない・・・。女性も同様で、目の周りはクマが出来、生理は遅れがち、結婚は予兆すら見えない・・・。
彼らには、貯金もありません。
「(無理をしてでも)他人よりもいいものを持ちたいから」
「房奴」として生きる
2000年以降、不動産熱が中国全土に広がった時期に、「房奴」という言葉が広まりました。「房奴」とは、住宅奴隷という意味で、マイホームを購入するために高額ローンを組み、毎年年収の40~50%あるいはそれ以上をローンの元利返済に充てている人を指します。
日本にもローンに追われるサラリーマンは多いですが、中国の比ではありません。北京や上海などの大都会において、会社員の平均月収は8,000元~1万元(約15万2,000円~19万円)、内マイホームローンの月々の返済額は凡そ3,000元~5,000元(約57,000円~95,000円)と言われています。中国では女性もほどんと働いていますが、一家の収入の半分以上をローンの返済に回さなければなりません。残りのお金で生活するわけですが、子供が生まれれば高額な教育費がかかります。
それでも持ち家を買おうとするのは、中国社会固有の事情があります。
まずは「結婚に必要だから」です。中国の男性は、家を持っていないと結婚できません。中国は今男性超過社会になっているため、売り手市場の女性側は高いハードルを設定できます。それが「最低でも家を持っていること」という条件です。
そして「住宅の賃貸料が高いから」です。某中国人は、最初に借りたアパートは1,400元(約26,600円)だったが、同じ部屋が数年後には4,500元(約85,500円)まで上がったと言います。
不動産購入のために偽装結婚するケースも多発しています。
2013年、中国政府は不動産価格を抑制する目的で、1世帯が2戸以上の不動産を所有する場合、売却益の20%を徴収する政策を導入しました。夫婦で2戸の住宅を持っている場合、離婚して1人1戸となれば税金を払わずに売却できることになります。しかし、「納税が終わったらまた籍を入れる」ことを目論んで離婚したものの、そのまま離婚に至る不幸なケースもあります。
「996」の台頭と、躺平族(=寝そべり族)の出現
「996」とは、朝9時から夜9時まで、週6日勤務という意味です。この労働形態は、数年前より多くの中国企業で一般化しつつありました。
中国では凄まじい内部競争(=内巻)が勃発しています。誰もがいい職場、人気のポストに就きたいと願うので、競争は激烈になるのは当然です。中国では残業は基本無給ですが、誰かが残業を始めると他の人も後に続きます。996は常態化し、こうまでしなければお金を稼ぐことが不可能になっています。
「誰もが競争を強いられていて、どんなに努力してもこの運命から逃れることは出来ない。得られる利益の総額は限りがある。人は、回り続けるコマだ。回転を止めたくても止められない。必死で走り続けるしかないのだ」
さて、この競争(=内巻)に疲れ果てた後にたどり着くのはどういう境地なのでしょうか。
「躺平(タンピン)」学です。躺平とは、「横たわる」という意味で、つまり競争社会から離脱し、お金儲けも放棄し、大使も抱かず、欲望もほどほどにして、静かに生きていくということです。この躺平学こそ、「現代の競争社会に対する最大の武器」なのだそうです。
「いくら頑張っても希望が持てない、目標となる夢も持てない、終わりのない道・・・。一生涯努力を続けても、家の一つも買うことが出来ず、配偶者すら見つけることもかなわず、頼るべき金持の両親もいない、となれば『寝そべり族』以外の選択肢はない。家を買わない、車も買わない、残業も拒否、高い結納金も払わず、となると、これらは現代では全て罪悪となった。今や正義は、住宅ローン、そして996である。疲れた・・・」
中国は2028年までにはアメリカを追い抜き、世界最大の経済大国になると言われていますが、その中核となる30代、40代のこの状況を、私たちは知っておく必要があります。
参考文献:青樹 明子著『家計簿からみる中国 今ほんとうの姿 』(発売日:2022年5月6日)
本日のオマケ
私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う