最近、「1人あたりGDPで日本を超える」とか、事実上の8大強国になったという意味で「G8」と自称する等色々と自慢が増えた韓国ですが、1997年の経済破綻を経て、2000年代になってからの韓国経済発展は、民間の債務(借金)による成長でした。
韓国の場合、民間が債務を負う形で経済破綻を乗り越えたので、政府が債務を負う形で乗り越えた日本と比較すると、政府債務はそれ程問題になっていません。しかし、家計と企業においては、既に債務が限界に達しており、最近の金利引き上げにより、その「砂上の楼閣」としての姿が明らかになってきました。
この借金の背景には、「序列意識」「恨(ハン)」「私以外の誰かが悪い」とする特有の感覚が存在しています。また「私たちは優秀な民族である」という意識から「借金して、成功してやる」という流れが加速しているのです。
マンションを買えば貴族になれる
韓国で、各種の債務問題が、国家そのもののリスクとして警戒されています。特に懸念されるのは、青年層である20代、30代の人達が、今から崩れていくであろう経済の主役になってしまっていることです。
一部の青年たちは、「マンションを買えば貴族になれる」という儚い夢のため、何十年かけても返せるかどうかわからない借金を背負っています。しかもマンション価格は下落を続けています。
20代の借金は、1年間で40%以上増加し、自殺率は大幅に跳ね上がり、合計特殊出生率は世界最低の0.7人台に入りました。韓国の20代の40%は、生活を親に依存しています。2021年基準で、15歳~29歳の約21%はニート(職業なし、求職もせず)です。
家計債務総額、世界一
韓国の家計債務の総額は、2022年4~6月期基準で1,869兆ウォン(約187兆円)で、IIF(国際金融協会)データでは世界第1位、BIS(国際決済銀行)データでは世界第3位です。
IIFより2022年10月30日に発表された「世界債務報告書」によると、IIFに加盟している35か国の中で、家計債務がGDPを超える国(GDP比102.2%)は韓国だけでした。(⇔日本は64%、米国は77%)なお、通常他国では家計債務に含める「自営業者の債務」は韓国データには含まれておらず、それも含めると、家計債務はGDP比150%を超えるとの指摘もあります。さらに、韓国特有の借金システムであるチョンセ保証金、リボ払い、一部の貸付業者(後述する第三金融圏)のデータ等も、この1,869兆ウォンには含まれていません。
韓国国内外の専門家が金融危機を警告
韓国の中央銀行である韓国銀行が2022年11月27日に発表した「2022年下半期システムリスクサーベイ結果」によると、国内外の大勢の専門家が、韓国で1年以内に金融システム全般に影響を及ぼす大きな衝撃が起きるだろうと予想しています。
そして最も多くの専門家が考える金融危機発生の要因は、家計債務です。「家計の高い負債レベル及び返済負担の増加」(69.4%)、次いで「資金調達が出来ず、企業が不良化するおそれ」(62.5%)、「国内市場金利の急激な上昇」(43.1%)と続きます。
韓国人の借金返済割合
全般的に見て、韓国人は年収のどれぐらいを返済に使っているのでしょうか。それは、DSR(Debt Service Ratio、総負債元利金償還率)のデータから垣間見ることが出来ます。この場合のDSRとは、1年間に返済しなければならない元金と利息の合計が、所得に占める割合を言います。
2022年11月9日、韓国で金融機関の監査や金融消費者保護等を担当する「金融監督院」が提出した資料によると、平均金利が7%になった場合、このDSRが70%を超える人が190万人になります。DSRが70%を超える場合、所得から税金及び最低限の生計費を除けばローンの元利金を返済できない水準です。(当時家計ローンの平均金利は5.5%水準でしたが、年末には7%を超えるとも言われており、7%は現実的な数字です。)
また、2022年5月9日のハンギョレ新聞に掲載された別の韓国金融研究院のデータによると、韓国には赤字世帯が354万世帯あるようです。韓国の総世帯数は2,050万世帯ですので、その17%にも上ります。彼ら354万世帯の年間平均元利金返済額は4,500万ウォン、年間所得が4,600万ウォンですので、年間所得の98%が、借金の返済で飛んでいっているということです。
個人信用等級と多重債務者
しかし、本当に家計債務の脆弱層はDSR70%を超える190万人だけでしょうか。家計債務の「質」という側面からアプローチすると、実はその数は452万8,000人まで増えます。この数字はどこから来たのか。その説明のため、まずは韓国の金融圏の概念を説明します。
韓国は、第一金融圏、第二金融圏、第三金融圏に分かれています。第一金融圏は、日本でいう普通の銀行のことで、第二、第三に比べると金利は比較的安いのですが、お金を借りる場合のハードルは比較的高くなります。第二金融圏は、貯蓄銀行、信用協同組合、単位農協などのことで、金利は第一金融圏より高く、貸し出しが受けられるハードルはより低くなります。そして第三金融圏は、合法的に運営している貸付業者のことで、預金はなく、貸出を専門に行っています。金利は高く(20%が最低ライン)、借りられるハードルは第二金融圏よりさらに低いというものです。
韓国では2000年代から「個人信用等級」が導入されており、韓国人全員に1等級から10等級の等級がつけられています。最も信用が高い人、即ち1等級の人は、貸し出しを受ける際に良い条件が受けられますが、等級が落ちると、第一金融圏からは相手にされなくなり、第二金融圏に行くしかなくなります。そこでも相手にされなくなったら、第三金融圏に行きます。さらに第三金融圏でもうまくいかなかった場合は違法な貸付業者のところに行きます。韓国では「私債(サチェ)業者」又は、「私金融(サグミュン)」と呼びます。私債業者・私金融たちの利率は、平均で年利200%を超え、1,000%を超える事例も少なくありません。人が暮らせる世界の話ではありません。年利5,200%を取られた事例もあります。
違法業者は論外として、韓国では第一、第二、第三金融圏の3か所以上の金融機関から貸し出しを受けているている人を「多重債務者」と言います。家計債務問題における本当の脆弱層が彼らであり、2022年9月末基準で452万8,000人(上述の数字)おり、金額は618兆2,000億ウォンです。1人あたり1億3,650万ウォン(約1,365万円)にものぼります。また、多重債務者は20代と60代以上の年齢層で急増しており、彼らのローンで問題が生じた場合、金融システム全般の問題になる可能性があるといわれています。
参考文献:シンシアリー著『韓国の借金経済』(発売日:2023年3月1日)
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