日本のシングルマザーは世界で最も高い就業率でありながら、最悪の貧困状態に置かれています。解決策はどこにあるのでしょうか。
参考文献:黒川 祥子著『シングルマザー、その後』(発売日:2021年12月17日)
日本の子供の貧困率
『子供の相対的貧困率』のデータから分かるのは、日本では子供の約6人に1人が相対的貧困状態にある家庭で暮らしており、この貧困率は先進諸国の中でもかなり高いということです。
『基礎的な7つの教育資源全てをもっている子供の割合』をみると、日本はOECD諸国の中で最下位になっています。ここでいう7つの教育資源とは、「勉強机、勉強に集中できる静かな環境、宿題をするためのパソコン、勉強のためのソフトウェア、ネット接続、辞書、教科書」です。OECD諸国の平均は44.6%ですが、日本はわずか12.2%と最下位です。先進国と言いながら、実は十分な教育投資を受けていない子供たちがいかに多いのか、一目瞭然だと思います。
参考文献:黒川 祥子著『シングルマザー、その後』(発売日:2021年12月17日)
なぜ日本のシングルマザーは貧困なのか
OECD加盟国全体で共通しているのが、教育水準の高いシングルマザーの就労率は90%に近く、この層であれば、仕事をして普通に暮らしていけます。これは日本でも例外ではありません。ただし、日本だけ顕著に現れている特徴があります。それは、高卒や高卒未満のシングルマザーの就労率が高いということです。
「OECDのどの国でも高卒や高卒未満のシングルマザーの就労率が60%を超えている国はなく、彼女たちに向けた社会保障が少なくともある程度は機能していることがうかがえます。ところが、日本では83%。高卒・高卒未満のシングルマザーの就労率が他の国と比べて30%以上高いわけです。」
(畠山勝太(比較教育行財政/国際教育開発専門))
他国では、収入面で不利になる高卒や高卒未満のシングルマザーに対し、福祉的な支えがあります。しかし日本では、そのようなシングルマザーが低賃金の非正規労働市場で働いているので、「働いているのに貧しい」状況になるのです。総数で見ると、正規で働いているシングルマザーは5割にも満たない。これは、日本だけです。その理由の1つは教育水準の違いで説明できます。日本の女性の教育水準は実は、先進国で最低レベルなのです。
OECD35か国の中で、女性の方が男性より大学進学率が低い国というのは、韓国とトルコ、日本ぐらいで、日韓が並んでいて、トルコは日韓より上です。また大学院まで視野を広げると、韓国は日本よりも女性の進学率が高いので、日本は先進国の中で、最も女性の相対的な教育水準が低い国と言えるでしょう。
例えば、米国のハーバード、英国のオックスフォード、ケンブリッジ等のトップスクールは男女が半々なのに対し、日本の東大、旧帝大で女子学生比率が1/3を超えているところはありません。とりわけ理系における大学院の女子の進学率は最低レベルです。
日本のシングルマザーでフルタイムの正規雇用と言えば、限られた職業になります。そして、一握りの正規雇用につくためには、学歴が求められます。
参考文献:黒川 祥子著『シングルマザー、その後』(発売日:2021年12月17日)
足を引っ張る日本の労働慣行
日本の場合、長時間労働が出来ないと正規職員になれない、逆に言うと、正規職員になるには長時間労働が出来ることが前提になっているという労働慣行が、厳然とあります。そのため、家のことを全て面倒を見てくれる専業主婦がいるか、自分の親の支援を受けられる人でなければ、なかなか長時間労働には耐えられません。高度経済成長期に確立した労働モデルが、今でも続いているのです。
変えるためには国が企業に対してきちんと税金をかけて、それをもとに助成金を出して、それで労働慣行を変えるというやり方しかないのですが、日本では企業にそれほど高率の税をかけていないため、減税などの優遇措置によるインセンティブを設けることも出来なければ、そもそも財源も確保できません。国による雇用慣行に対する働きかけが強くは出来ません。そのしわ寄せが、シングルマザーにのしかかってくるのです。しわ寄せは、弱い層にくるものですから。
また、子供が生まれると女性はキャリアの中断を迫られますが、キャリア構築上重要な20代後半から30代前半に第1子を産んだ場合、それ以外の年齢帯で第一子を産んだ場合と比べてペナルティが大きくなります。女性は母親になることで、貧困に陥りやすくなると言えるでしょう。
では、どうすれば貧困の連鎖を止めることが出来るのでしょうか。
「一番の突破口になるのは、やはり女子教育、多様な進学機会の保証だと思います。結局、女性に対しての差別的な賃金も『女性の教育水準が低いから、高い賃金を出さなくていい』となっているわけです。女性の教育水準が改善すれば、女性への扱いが良くなるはずですし、シングルマザーへの厳しい雇用慣行というのも改められることも考えられます。『女の子に教育はいらない』というのは、シングルマザー問題の一番根本にあると思っています。」
(畠山勝太(比較教育行財政/国際教育開発専門))
参考文献:黒川 祥子著『シングルマザー、その後』(発売日:2021年12月17日)
本日のオマケ
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