売れば売るほど赤字になる電力会社「韓電」
韓国には、事実上1つの電力会社しかありません。韓国電力公社(韓電)という韓国最大の公企業です。その韓電が、売れば売るほど赤字になる、非常に安価な価格で電気を提供しています。これまで電気料金を安く抑えてきたのは、外国企業を誘致するための手段でもありました。しかし、それがいよいよ限界を迎えつつあります。
2020年基準データによると、韓国の産業用電気価格はOECD平均の約88%で、メガワットあたり94.3ドル、(日本は161.9ドル)家庭用電気はOECD平均の約60%で、メガワットあたり103.9ドルです。(日本は255.2ドル)韓国の電気価格が安いのは、「効率性が高いから」ではなく「赤字で電気を供給しているから」であり、2022年11月時点の予測値で、韓電は30兆ウォン(約3兆円)もの赤字を抱えています。韓電の社債(韓電債)は信用格付けが最上位(AAA)であり比較的資金が集まりやすいのですが、それでも最近は、発行した債券が完売できないことも多い。
この、韓電の累積する債務問題を根本的に解消するためには、利益が出る水準にまで電気料金を引き上げる必要があります。しかし、韓国ではインフレ対策のために2022年だけで基準金利を6回引き上げたことから、企業も家計も債務返済が大幅に増えており、(参考:現在の基準金利は3.50% (jetro.go.jp))そんな状態で、電気料金など光熱費まで上がれば、更に消費が冷え込むことになりかねません。
政府が目指す2026年までの赤字解消の1段階目として、2023年1~3月期、電気料金1kwhあたり13.1ウォンの引き上げ(引上率9.5%)が実行されました。しかし、2026年までに目標を達成するためには、2023年に1kwhあたり51.6ウォンの引き上げが必要だと言われています。この成否は、世論が「今までが安すぎた」ことを理解出来るかどうかが勝負になるでしょう。
参考文献:シンシアリー著『韓国の借金経済』(発売日:2023年3月1日)
韓国企業の悪化スピードが速すぎる
2022年11月25日に発表されたIIF(国際金融協会)の世界負債関連データによると、韓国のGDP対負債比率は119.1%で、香港(278.1%)、中国(159%)、シンガポール(150.3%)に続いて、世界4位です。韓国が4位になったのは集計が始まって以来初めてで、経済崩壊してIMFに経済主権を引き渡した時でさえ、4位まで悪化したことはありませんでした。
韓国企業の債務は、最近数年間で急激に悪化しました。それを最も分かりやすく教えてくれるデータが「利子補償倍率」です。利子補償倍率が1に満たない場合、その企業が1年間で獲得する営業利益で、借入金の利子を返済できないことを意味します。そんな企業を「ゾンビ企業」と言い、この状態が3年間続けば「限界企業」と言います。
ゾンビ企業、限界企業はどれほどあるのでしょうか。
日本の場合、2020年基準で日本の全企業の11.3%が限界企業です。(出所:帝国データバンク)多いと感じるかもしれませんが、世界規模で見た場合、世界中に存在するすべての会社の約16%は限界企業ですので、(2022年7月28日、日本経済新聞)日本はかなり少ない方です。
一方韓国の場合、2021年末基準で韓国の全企業の18.3%(4,478社)が限界企業です。(出所:2022年11月25日、産業銀行未来戦略研究所)一見それ程驚くほどではありませんが、増加スピードが速いのです。2016年末基準で2,165社だったので、5年間で106%も急増したことになります。
また上場企業に絞っても、全上場会社の14.8%(304社)が限界企業、1年間利子補償倍率が1に満たなかったゾンビ企業に至っては、全上場会社の32%(693社)にもなります。さらに、時価総額基準上位100大企業でも、10社が利子補償倍率1未満、又は営業赤字でした。この10社の中には、日本の家電量販店などでよく目につくLGディスプレイ、ロッテグループのロッテケミカル、ロッテショッピング、重工業大手の現代重工業も含まれます。
韓国で基準金利引き上げによる問題が本格的に報じられるようになったのが2022年10月以降ですので、まだまだこれらのデータは基準金利引き上げの影響が十分に反映されていません。その影響が現れる2023年から、限界企業はまたも急増するのではないかと思われます。
参考文献:シンシアリー著『韓国の借金経済』(発売日:2023年3月1日)
参考文献:シンシアリー著『韓国の借金経済』(発売日:2023年3月1日)
本日のオマケ
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