日銀保有国債が含み損
2022年11月28日に発表された日本銀行の4~9月期決算によると、9月末時点の保有国債の簿価は545兆5,211億円で、時価は544兆6,462億円、差額の8,749億円が含み損でした。2022年3月末時点では4兆3,734億円の含み益でしたので、半年間で状況が大きく変わったことになります。この原因は、金利の上昇です。
巨額の評価損をどうするのか
日銀の雨宮副総裁は、2022年12月2日の衆院予算委員会で、イールドカーブ全体が上方にシフトした場合の評価損を問われ、1%で28.6兆円だと答えました。
ところで、2022年9月末の日銀の純資産は約5兆円です。仮に日銀が国債を時価で計上しているとすれば、国債評価損が5兆円を超えれば、債務超過になります。つまり単純計算で、長期金利が12月20日までの上限値0.25%から0.175%上昇して0.425%になれば、評価損が5兆円を超えるということです。
ただし、日銀は決算書で国債を簿価で計上していますので、国債を実際に売却しない限り、含み損にとどまります。
満期まで保有しても
日本銀行は、バランスシート上で資産として国債を保有していますが、負債が銀行券の場合、利子の支払いは必要ありません。しかし2022年9月末時点において、日本銀行の負債は、銀行券が120兆円、当座預金が493兆円と、当座預金残高の方が多い状況です。
当座預金は基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高という3つに区分され、現在それぞれ0.1%、0%、△0.1%が付利がなされています。
金利を引き上げると当座預金に対する付利の支出が増えます。他方で既発行国債の利子収入は変わらりません。従って、日銀の収支は悪化します。
付利増加額の合計額は「当座預金残高×金利上昇幅×国債の平均残存期間」と計算できます。そのため仮に1%金利が上昇すると、493兆円×1%×5.24年=25.8兆円、日銀の収支は悪化することが分かります。これは、上述した雨宮副総裁の回答「1%(の金利上昇)で28.6兆円」の損失が出るという発言と、ほぼ一致します。つまり、今売却せず満期まで保有した場合でも、トータルではほぼ同額の損失増になるということです。
結局国民負担が増加する
もし日銀が債務超過に陥れば、日銀納付金はストップします。2021年度の日銀納付金は1兆2,583億円でしたが、これがストップするということです。
防衛費増額など歳出増加の時に、納付金がストップすることの影響は、決して無視できません。政府は、これを補填するための財源を探さなければなりません。何が選ばれるにせよ、国民負担は増加します。さらに日銀への信認が揺らげば、為替レートや金利の急変動などのリスクも高まります。
参考文献:野口 悠紀雄著 『日銀の責任 低金利日本からの脱却』(発売日:2023年4月27日)
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