ヴァンダービルト家の没落
1877年1月4日、鉄道と交通の先駆者として生涯で1億ドルを超える資産を築いた世界一の大富豪、コーネリアス・ヴァンダービルトが亡くなり、資産の大部分である9,500万ドルを息子のウィリアム・H・ヴァンダービルトに残しました。息子は鉄道事業をさらに発展させ、父親から受け継いだ財産を2億ドル近くに倍増させました。しかし、ウィリアム・Hが他界すると、ヴァンダーヴィルト家は次第に没落していきました。
20年も経たないうちに、一族は米国を代表する大富豪の座から1人残らず姿を消し、1973年には、子息の家族120組のうち、億万長者は1人もいなくなりました。その大きな理由は、「ライフスタイル・クリープ」と呼ばれる現象によるものです。
ライフスタイル・クリープとは、収入が増えた時にその分だけ生活レベルを上げようとすることで、周りに対する見栄が原動力になっていることが多い。莫大な遺産を相続したヴァンダーヴィルト家の人々も、贅の限りを尽くし、そして没落していきました。この一族の物語は、人は収入が増えると、簡単に支出を増やしてしまうことを教えてくれます。
「ライフスタイル・クリープは絶対に避けるべきだ」とアドバイスする専門家は多いようです。しかし、『JUST KEEP BUYING』の著者、ニック・マジューリ氏は、「それは違う」と言います。働いた成果を享受できないなら、一生懸命働く意味を見出せないからです。
収入がアップしたら、どれだけ生活レベルを上げていい?
当初の計画通りリタイアするには、収入が増えた時、そのうちどのくらいを使い、どのくらいを貯蓄すれば、必要なリタイア資金が得られるでしょうか。
最も重要なポイントは、現在の貯蓄率です。
上の表から、例えば、現在収入の20%を貯蓄している人は、リタイア時期を変更せずに将来の収入アップ分の48%(約半分)を使うことが出来ることが分かります。そして現在の貯蓄率が低い人ほど、現行のリタイア計画を維持しながら収入アップに合わせて生活レベルを上げやすいことが分かります。その理由は、収入アップ分の一部を支出する際、総支出に及ぼす変化は、貯蓄率が低い人の方が、貯蓄率の高い人よりも小さくなるからです。
シンプルに50%を貯金する
収入アップに対する適切な貯蓄率の割合を細かく導くには複雑な計算式が必要です。しかし、ほとんどの人は50%を目安にすれば良いでしょう。世の中の大半の人が収入の10~25%を貯蓄しているとすると、収入アップの内50%を貯蓄できれば、ほぼ計画通りにリタイアできるからです。
家は借りるべきか買うべきか
持ち家のコストとリスク
住宅を所有すると、住宅ローン以外にも、一時コストと継続的コストがかかります。一時コストには頭金や購入手数料などがあり、継続コストには税金、維持費、保険料、修繕費などがあります。
こうした一時的、継続的なコストを考慮すると、住宅は時に資産より負債になることが分かります。もちろん、だからと言って、賃貸にすればこうした金銭的コストがなくなるわけではなく、当然月々の家賃を払わなければなりません。
しかし、リスクの観点からは、賃貸派と持ち家派の住宅費に関するコストの意味合いは大きく異なります。
例えば次の1年間であれば、住宅に関して生じうるコストは、賃貸の場合は月々の家賃の12倍と予測できますが、持ち家の場合の継続コストは変動するでしょう。つまり、短期的には賃貸派より持ち家派の方が住宅費に関するリスクが高くなります。
しかし長期的に見ると、この立場は逆転します。
賃貸派が常に抱えるリスク
賃貸生活をする時、毎月の家賃以外の主なコストは、長期的なリスクです。このリスクとは、将来の住宅費が不透明であることと、生活状況の不安定さ、引っ越し費用などです。
賃貸派は、今後1、2年の住宅費を固定することは出来ます。しかし、10年後の住宅費がどうなっているかは分かりません。常に変動する家賃相場に応じて支払いをしていかなければなりません。家賃が大幅に上がったために引っ越さざるを得なくなることもあります。
投資としての住宅の魅力
ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラーによると、1915~2015年の米国の実質住宅収益率は、年間わずか0.6%であったと試算しています。
著者の祖父母は、過去数十年間で米国の不動産史上最高レベルのリターンを上げているカリフォルニアに家を購入しましたが、その家がもたらしたリターンは米国株式インデックスファンドへの同額の投資から得られるものの約1/4に過ぎませんでした。
つまり不動産は、株式と比較し、長期的に富を手に入れられる可能性は低いのです。
家を買う社会的理由
米国国勢調査局の2020年調査によると、収入が中央値よりも多い世帯の持ち家率はほぼ80%です。住宅を所有することがこれほど一般的な理由は、政府の補助金制度や社会的規範によって促されているからです。
持ち家に住んでいることは社会から肯定的に受け入れやすく、持ち家に住んでいるからこそ可能になる地域社会との深いかかわり合いがあります。こうした理由のために、経済的に余裕のある人たちは家を買います。
家を買う時期
次の条件を満たしている場合、住宅購入に踏み切る時期です。
・10年以上、その土地に暮らす予定
・公私ともに安定した生活を送っている
・経済的余裕がある
経済的、私生活的に不安定だと、家を買い換えなければならなかったり、ローンが破綻したりするため、最終的に取引コストがかさみやすくなるためです。なお、頭金として住宅価格の20%を支払え、収入に対するローン比率を43%未満に抑えられれば、経済的余裕があると言えます。
家を買うことは、人生で最大の買い物になる場合が多い。それだけに、精神面に及ぼす影響も大きい。だからこそ、じっくりと検討を重ねるべきです。
参考文献:ニック・マジューリ 著 『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(発売日:2023年6月28日)
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