『JUST KEEP BUYING 』で主張していることは、とにかく早く投資を開始し、買い続けることです。
とはいえ、投資の旅を続けていく中で、資産を売却することが必要になることは訪れるでしょう。しかし、「いつ売るか」ほど、投資家の頭を悩ませることはありません。なぜなら、売りに際して、私たちは投資の世界で最も強力な2つの行動バイアスに直面するからです。
それが、「上昇期を逃すことへの恐怖」と「下降期で損をすることへの恐怖」です。こうした精神的混乱を避けるためには、不安に突き動かされて何かをする前に、売却条件をあらかじめ決めておくことです。条件を決めておけば、プランに従って冷静に資産を売却できるようになります。
お勧めできる条件は次の3つです。
1.リバランスのため
2.集中投資(又は損失)状態から抜け出すため
3.自分の経済的なニーズを満たすため
すぐ売るか、少しずつ売るか
投資をする時は、時間をかけて少しずつ投資するより、一度に今すぐ投資するのがセオリーです。なぜなら、ほとんどの市場は、ほとんどの期間上昇しているため、買うのをためらっていると、その間の上昇分を後逃してしまうからです。
売却する時も同じ原理が当てはまります。しかし、結論は逆になります。
ほとんどの市場は、ほとんどの期間上昇しているので、「出来るだけ遅く売る」ことが最善策になります。つまり、すぐ売るより、時間をかけて少しずつ売る方が良いということです。
リバランスのために売る
「完璧にバランスが取れている。すべてのものがそうであるべきだ。」
(by 『マーベル・シネマティック・ユニバース』のサノス)
ポートフォリオを組むときは、自分の目標配分に従います。例えば、米国株60%、米国債40%を目標配分としたとして1,000ドル投資する場合、米国株に600ドル、米国債に400ドル投資することになります。
しかしリバランスをしなければ、時間の経過とともに、リターンの高い投資資産の割合が増えていくために、ポートフォリオは目標配分からずれていくことになります。30年間1度もリバランスしない場合、期間の終わりには、ポートフォリオのほとんどが株式が占めることになってしまうでしょう。
米国株式60%、米国債40%のポートフォリオに30年後にもたらすリターンについて、①一度もリバランスしない、②毎年リバランスするという2つの戦略を、米国市場の過去の実績に基づいて比較すると、ほとんどの期間、①の方がリターンが高かったことが分かっています。
つまり、リバランスをしてもほとんどの場合、リターンは向上しません。なのになぜ、人はリバランスをするのでしょうか。それは、リスクを減らすためです。リバランスをしないと、毎年リバランスする場合よりリスクが大きくなる、つまり最大下落率も大きくなるということです。それを避けるためにリバランスをするのです。
では、リバランスをする場合、どのくらいの頻度で行えばいいのでしょうか。残念ながら、これについてははっきりした答えは分かっていません。
「ポートフォリオのリバランスの頻度が毎月、四半期、毎年であるかは、リスク調整後のリターンに有意な違いをもたらさない。ただし、リバランスの頻度が多いと、結果として生じるコストは大幅に増加する。」
(by 資産運用会社「バンガード」)
なお、『JUST KEEP BUYING』の著者は、年に1度のリバランスを推奨しています。
集中投資状態から抜け出すために売る
例えば、株式報酬のある会社で働いている(または経営している)場合、個人資産の大部分が自社株というケースは珍しくありません。それで十分なリターンが得られているなら素晴らしいことですが、長期で考えると、この株式の一部を売りたいと思う時も出てくるでしょう。その場合、どのくらいの割合を売るべきでしょうか。
それは、あなたの目標次第です。
例えば、住宅ローンの負債があり、資産の大部分を1銘柄の株式で持っている場合、株式を売るのは良い選択肢になり得ます。なぜなら、この株式から将来的にどれくらいのリターンが得られるかは分からないが、住宅ローンは確実に払わなければならないからです。これは、リスク管理の面からは良い選択だと言えるでしょう。
具体的には、自分なりの売却時のルールを設けてそれを守ることです。毎月10%売ってもいいし、半分売って残りを保有し続けるのもいいでしょう。いずれにしても、安心して眠れそうなルールを定めるのがいいと言えます。
自分の経済的なニーズを満たすために売る
投資資産を売るべき最後の理由は、自分の経済的なニーズを満たすため、自分が生きたい人生を生きるためです。
お金を増やした成果を生きているうちに楽しめないなら、何のために投資をしているのでしょうか。過度に贅沢な暮らしをしようとして大きなリスクを背負うのではなく、十分な暮らしが出来るお金を確実に得ることを重視しましょう。
豊かな生活がある程度まで実現されると、それ以上はあまり幸福度が上がらなくなります。資産を増やす場合も同様です。資産0の状態から100万ドルに増える時は、100万ドルから200万ドルに増える時よりはるかに大きな幸福感が得られます。増加額は同じでも、0から100万ドルになった時の方が、大きな人生の変化を経験することになるからです。
資産が一定額を超えると幸福度があまりあがらなくなっていくという事実は、時には資産売るべきだという考えに説得力を与えてくれます。
参考文献:ニック・マジューリ 著 『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(発売日:2023年6月28日)
Amazon
にほんブログ村
投資信託ランキング