2020年から始まったコロナ禍、2022年はウクライナ戦争の勃発、安倍晋三銃撃事件と想定外の出来事が続き、これまでは経済予測が難しかったのが正直なところでした。しかし、現在に至って問題なく言えるのは、これから日本の大逆襲が始まるということです。日本経済がこのまま進めば、近い将来の現実として、株価4万円台は夢ではありません。
日本の未来が絶対に明るい理由
量的緩和と資源高がトリガーに
2022年9月1日の日経平均終値は27,661円でしたが、10か月後の2023年6月末には33,000円を超えてきました。約20%の上昇です。
この状況は、アフターコロナにおける対策として世界の国々で行われた「量的緩和」の影響が大きい。コロナによる厳格なロックダウンが行われていた時には需要の減退でだぶついていた資源が、ロックダウンが解消された瞬間に一転して供給不足になり、そこに量的緩和が重なったため、コロナ禍の終わりとともに資源価格は急上昇しました。
こうした資源高に対応するため、アメリカは2022年3月から急激に利上げを始めています。その結果、資源価格は漸次落ち着いてきているものの、これまでのような急激な経済成長は見られなくなりました。
欧米諸国が金融引き締め政策をとってインフレ退治に奔走する一方で、日本は量的緩和策を継続。それにより、企業の収益は急激に上がりました。日本企業の多くは海外に巨額の投資をしており、これが為替効果として企業業績を押し上げる結果になったということです。そして企業の含み資産の増加が、株価上昇の大きな要因となっていたのは疑いないことです。
ただし、2024年初頭にも日銀は大きな政策転換を行う可能性があります。既に、消費者物価指数は目標とする2%を大きく超えており、需給ギャップも解消されました。つまり、既にデフレではなく、インフレに突入しています。
この状況で量的緩和策を継続するのはインフレを加速させることになりますが、日銀は大量の国債を抱えており、欧米のような急激な利上げが出来る環境にはありません。利上げをすると、日銀が債務超過に陥るからです。だから、当面は欧米との金利差が継続するのが大方の予測です。このため、為替的には円安の水準が継続するとみられており、輸出の好調と資産効果による好業績が続くと予想されています。また、円安の長期化は製造業等の国内回帰を大きく支援するので、これもプラス要因と言えます。
急激な利上げがなければ、日本株は上がり続ける
日本に回帰する日本企業
今日、数多の日本企業が中国に生産拠点を持っています。ところが米中のデカップリングが進行する中で、大手製造業に国内回帰の動きが見られるようになってきました。そうなれば当然のこと、その下請け企業などの周辺産業にもプラスの影響が出てきます。バブル崩壊後の失われた35年の不振が、うまくいけば一気に解消される流れになってきました。
とりわけ近年の中国による半導体輸出規制は、中国国内での物の生産に継続的信頼を置くことには重大なリスクが伴うことを世界に知らしめました。そしてその対策として、アメリカがTSMC(台湾積体電路製造)をアリゾナなどに、日本は熊本に誘致することを決定し、ヨーロッパではドイツがドレスデンにTSMCの工場建設を決めるなど、様々な国に、半導体生産における「中国離れ」の動きが出ています。
バイデン再選は厳しい
2024-25の国際政治・経済の最大のポイントは、11月の米大統領選です。この結果が、その後の世界の流れの根本になります。
現在は、2022年11月の中間選挙で共和党が下院の過半数を制したことから、アンチGND(グリーン・ニューディール)、アンチESG(環境・社会・企業統制)の動きが強まっています。
米国は議会の権限が大統領の権限よりも大きく、その議会では下院に予算先議権があります。つまり実質的に下院が予算の成否を握っています。従って、民主党のバイデン大統領は、共和党が過半数を占める下院でどうやって予算を通せばいいのかという、厄介な問題を抱えています。予算が下院を通らないと、米大統領は完全なレームダックになってしまうからです。
また、バイデン大統領の再選はさすがに厳しいでしょう。大統領としての実績は物足りないものだし、2024年の大統領選が終わった11月下旬には82歳になっています。さらに体調問題を抱えています。
歴史的に民主党よりも共和党の方が日本との相性が良く、「バイデンのピンチ」は日本にとってチャンスになる
バイデン退場で中東関係は改善する
中国と湾岸諸国の近年の接近は、バイデン政権の中等に関する無策に起因します。
そもそも中東和平を成功させたのは共和党のトランプ政権でした。イスラム教は1枚岩ではなく、スンニ派とシーア派に分かれています。トランプ政権はイスラム教内の対立を利用し、シーア派の核であるイランとの対立を鮮明にすることにより、スンニ派との交渉に成功、サウジアラビアや湾岸諸国との融和、国交回復を実現しました。
ところがバイデン政権は、中東政策を玉虫色の路線にしたことで、アラブ諸国は不信感を抱き、当てつけのように中国に接近を図るようなポーズをとっていると考えられます。なぜポーズかというと、湾岸諸国の資産であるペトロダラーや湾岸通貨は、ドルと一蓮托生の関係にあり、米ドルで富を蓄積しているに等しいといえます。そのためアメリカに本気で喧嘩をうれば、過去の資産が全て召し上げられてしまうからです。
中央銀行が複数ある時点で無理
ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国による首脳会議をBRICS首脳会議と言います。2023年8月24日、このBRICSにアルゼンチン、エジプト、イラン、エチオピア、サウジアラビア、アラブ首長国の6か国が2024年1月から加入することが発表されました。このようなニュースを耳にすると、一見、新勢力の勢いに追い風が吹いているかのように見えますが、そうではありません。
最近、BRICS通貨などという話も出てきていますが、それを成立させるためには、EUで行われたように、BRICSで中央銀行を統一しなければならないので、地政学的にも出来るはずがありません。
頼清徳以外の勝利は不幸な結果となる
2024年1月に台湾総統選が行われます。そして今のところ、現副総統の頼清徳氏が優勢です。頼清徳氏は1959年10月生まれの64歳、台湾大学医学部出身で、ハーバード大学公共衛生大学院卒業という、台湾の典型的なエリート。彼は、蔡英文総統の取る現状路線を守り、対中関係において緩和路線は取らないとしています。
南北融和は望ましくない
歴史を振り返ると、北朝鮮という国家は、ソ連(ロシア)と中国のフロントであり続けています。ところが今、北朝鮮の両親と言っていい中ロ両国がおかしくなり始めており、もともとあまりうまくいっていないそのフロントは、さらに不安定になるので、いつ暴発してもおかしくない状態にあります。
北朝鮮は、2023年1月時点で核弾頭30発を保有しているので、存亡の危機に陥れば実際に使用する可能性はあります。しかし韓国の存在によって、日本にとっては安全保障上のラインが北緯38度線まで上がっているから、北海道から九州までの地政学的安定が保たれてきました。もし韓国が中国側につけば、そのラインが対馬海峡まで下がってくることになります。これが朝鮮戦争以降一貫して日本が韓国を支援してきた理由です。
新同盟「チップ4」の狙い
世界の半導体、SoC(システムオンチップ)の7割近くは台湾と韓国で作られています。最新鋭のファウンドリはTSMCとサムスンの2社であることは間違いありません。
日本の半導体関連メーカーは、これまで最終生産にこだわらず、素材や設備等に特化するという選択をしてきましたが、昨今の半導体不足を教訓に、自国に半導体工場を戻す動きが本格化、その流れを受けて、国産半導体への支援が日米で始まりました。
実際、ソニーグループやトヨタ、NTTなど日本の主要8企業が出資してラピダス株式会社をつくり、政府の3,300億円に上る支援を受けて北海道千歳市に新工場を建設しています。アメリカも技術やコスト面から言えば開発は可能であったが、あえて進めてこなかったという側面がありますが、現在ファウンドリ事業を再開しようという方向で動き始めています。
このような状況で、仮に韓国が経済面だけでも中国の支配下にはいると、世界中の半導体の需給バランスが崩れてしまうし、高度な技術も中国の手に落ちることになります。そうなればこれまでの半導体規制等の防止対策に大穴が開くことになります。
これを怖れたバイデン政権は、2022年に「チップ4」という、日本・アメリカ・台湾・韓国の4か国半導体供給網に関する協議体を形成しました。更に日・蘭・米の3か国が、先端半導体技術の対中輸出規制の強化に同意、対中国半導体包囲網を形成しました。これらはいずれも、高度な技術が中国に渡らないようにすることを狙いとしたものです。
参考文献:渡邉 哲也著『世界と日本経済大予測2024-25』(発売日:2023年11月2日)
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