クルマはコモディティではない
一般的にはまだ、テスラの電池技術がもてはやされていて、今後の主役となる順風満帆の商品のように見えています。しかしこのテスラの電池技術には、見落としてはならないデメリットが存在するので、早晩、トヨタの全個体電池の敵ではないということになると考えています。
テスラのEVは、ボディやシャーシは軽いアルミダイキャスト製で、それぞれ一体成型したパーツを溶接して出来ています。そこにユニット化された電池とシステムを搭載するので、修理時にはユニットごとの交換が必要になります。つまり、「EVはコモディティ」という思想で出来ているということです。
例えばテスラの700万の新車を軽くぶつけてへこました場合、へこんだのがボディでもシャーシでも修理が出来ないため、総取換えになります。修理代は軽く500万円を超えるでしょう。またぶつけなくても、いずれは電池の寿命が来て交換が必要になり、安くても230万円から300万円かかることになります。
EVは他にも、安全性に懸念点があります。EVが発火したら、簡単には消化できません。一度火が付いたら電池が燃え尽きるのを待つしかありません。運搬船内で発火すれば、手が付けられない状態に陥ります。現に過去2年間に2件大きな事故が発生したので、今後は保険や輸送に制限がかかってくるのは間違いないでしょう。
EVは衝突でも爆発するし、過充電でも爆発します。とにかく衝撃に弱いのが現在のリチウム電池の特徴です。仮にビルの地下の駐車場で電気自動車が爆発したら、とてつもない被害が出ます。今のままでは、世界のどこかで大惨事が起きるのは間違いありません。
また、もし現在化石燃料で動いている自動車を全てEVに置き換えようとすると、その分のリチウムイオン電池の製造のために、世界の埋蔵推定量の3倍にあたる金属リチウムが必要になります。
これらの一連の問題を受け、欧米でもこれまで絶対主義であったEVに対する見方が変わりつつあり、トヨタの全方位戦略がプラスに働く可能性が高いと考えます。
プラットフォーマーの淘汰が始まる
ニュースを見るならYahoo!ニュースかX(旧ツイッター)、暇つぶしにはYoutubeやNetflixという人が増えています。テレビを置いてNHK受信料に1カ月1,100円かかるなら、テレビを置かずにNetflixのベーシックプラン990円にと考える方が自然でしょう。しかし、Netflix等のプラットフォーマーも安泰とは言えず、当面は淘汰が進むと考えられます。
理由は簡単で、プラットフォーマーの多さに比べてコンテンツが足りないからです。「ディズニープラス」でさえディズニーの持つコンテンツだけではやっていけないのか、Huluとの接近を図っているとみられています。
プラットフォーマーが生き残るためには、そこにどれだけ優秀な店子を入れられるかにかかっており、いい店子を確保して初めて、優れた収益モデルをどう作るかという話になります。現時点で生き残るのではないかと思われているのがHuluとNetflixで、これから店子の奪い合いで国内も含めて淘汰が進んでいくのは間違いありません。
これまではプラットフォーマーが幅をきかせていましたが、今はコンテンツホルダーの方が優勢です。コンテンツが足りないから、高くても買いたいという売り手市場になっているためです。同じようなことは、パソコンのハードとソフトの関係でも起きました。
Windows95が発売され爆発的な人気となった1995年、日本ではまだハードの方が優勢でした。パソコンを作っていたのがソニー、東芝、NEC等で、例えばソニーの1995年の売上は3兆9,905億円でした。一方、マイクロソフトの同年の売上は59億ドル(当時のレートで約5,600億円)でした。
あれから28年の月日が流れたソニーの2022年の売上は11兆5,398億円です。一方、マイクロソフトの2022年の売上は概ね1,983億ドル(約28兆8,000億円)と、ソニーの売上を超えています。これは、ハードとソフトの力関係の逆転と考えて良いでしょう。
この先、プラットフォーマーが生き残るためには、他者との差別化が不可欠になります。
光半導体技術で日本が世界のトップになる
これからの技術革新の先導役となるのが量子コンピューターで、従来のコンピューターと全く異なる概念、仕組みで成り立っており、産業革命並みの変化をもたらす演算速度を実現すると言われています。
現在注目される開発中の2大技術があり、1つは非常に速い演算技術、もう1つは既存の技術の発展形としての光半導体です。後者はNTTが主導し、マイクロソフトやインテルなど世界的半導体企業が協力しています。これにより、これまでの半導体と異なり消費電力を大幅に低減でき、非常に速い演算が可能になります。
NTTでは、スマホなどのデバイス内から長距離通信網までの信号処理を光で行う通信基盤「IOWN」構想の実現に向けて動いています。この技術により、「死の谷」と呼ばれる電気における限界を超えることが可能になり、一般化できれば、日本の半導体は、再び世界一の座に返り咲くことが予想され、6Gの段階での実用化が大いに期待されている技術です。
実は光半導体計画が、国産半導体計画の呼び水となっている側面も強いのです。台湾のTSMCの日本への工場進出は、日本の半導体製造装置メーカーなどとの関係強化を目的としているとされています。
また2022年9月30日、通信規格を決める国際機関である国際電気通信連合(ITU)の事務総局長と電気通信標準化局長の選挙が行われ、事務総局長は米国が、電気通信標準化局長は日本が勝利しました。(以前は中国)これは通信の未来を決める歴史的な出来事だと言えます。
現在、6Cまでの中間規格である5.5Gの規格化が進んでおり、6Gの規格化も始まっています。6Gに対応するには半導体の高速化が必須であり、光半導体がその主役になると期待されています。
参考文献:渡邉 哲也著『世界と日本経済大予測2024-25』(発売日:2023年11月2日)
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