投資判断とは、一言でいうと今投資してもいい時期なのか、それともやめておいた方が良いのかを見極めることです。これが適切に出来れば、株式投資で100%勝つことが出来るわけですが、ちょっとやそっとで身につくようなスキルではありません。ただ、「このタイミングでは絶対に投資すべきでない」ということだけは判断できるようにしておくべきでしょう。投資の基本は「安く買って高く売る」です。その基本を忠実に守るとすれば、「高く買う」ことだけは絶対に避けなくてはならないからです。
バブル崩壊の余波
日経平均が最高値をつけたのは1989年12月29日、大納会の日の事です。終値は38,915円と、4万円台目前でした。史上最高値に「年明けには日経平均4万円を超えるに違いない」と誰もが疑いもしませんでした。ところが、翌1990年1月4日の大発会で日経平均はマイナスでスタートし、1月の最安値まで2,000円を超える下落を記録。これが長く続く不況の始まりでした。
アメリカが、2008年にリーマンショックを経験しながらも3年で立ち直ったのに引き換え、日本は35年近く前の日経平均最高値を更新できたのはごく最近です。ここ数年、「だから日本株はダメなんだ。アメリカ株に投資すれば間違いない」と主張する声が大きかったのですが、2022年にはアメリカの株式相場が下落、急激なインフレにも襲われました。
日経平均とNYダウ平均のチャートは酷似している
日本はバブルの崩壊、アメリカは1929年の世界大恐慌による株価の大暴落を経験しており、なおかつ大暴落前に株価が高値を付けた共通点があります。そして、日経平均とNYダウ平均のチャートは酷似しています。
暴落前の最高値から最安値までの下落率は日経平均が81.9%、NYダウはさらに激しく89.2%に及んでいます。1929年9月の世界大恐慌直前のNYダウ最高値は381.17ドル、対して日経平均は1989年12月の38,915円。当時のNYダウに100をかけると、1989年の日経平均に似た数字になります。最安値までのスピードは、NYダウが3年で割と早かったのに対し、日経平均はかなり時間がかかって2009年3月となっています。
では、最高値を更新するまでの期間はどうでしょうか。NYダウは世界大恐慌前の最高値を更新するまで25年強かかっています。日本は最高値を更新するまで約34年かかりました。米国と日本は動きは似ていても3~4割増しくらいの期間がかかると考えた方が良いかもしれません。
日経平均は高値を更新した後、そこから加速度的に上がる可能性があります。NYダウは、世界大恐慌前の最高値から最安値まで値幅で340ドル下落しました。ところがいったん最高値を更新するや否や、下がった分を倍返しする勢いで上がっていきました。倍返しするまでの期間は3年3か月です。
株式市場がここまで大きな暴落をして回復した例は、世界広しと言えどもNYダウの1929年の記録的大暴落と、日本のバブル崩壊による株価下落の2例しかありません。しかも、株価チャートの形が酷似しています。だから1929年のアメリカと似た動きをするのはほぼ確実とみています。
日経平均の下げ幅は、38,915円 – 7,054円 = 31,861円。この分を倍返しするとしたら、70,776円。日経平均が一気に5万円を超えることも夢ではないと思います。そして、倍返しの始まるタイミングにいる今こそ、株式投資の始め時と言えるでしょう。
大底狙いは×、順張りが◎
2022年の大納会(12月30日)の終値は26,094円、その後多少のジグザグはありますが、ほぼ右肩上がりに伸びています。このことから「網株価は上がってしまっているから、今から始めても無駄なのでは?」と考える人も少なくないかもしれません。ですが、そんな考え方をするのはやめましょう。
いくつかの大型株はもう上昇基調に入ってしまっているので、今から大底を狙うのはそれこそ無理というものです。既にそんなことを言っている場合ではないのです。とはいえ、株価は一直線に上がっていくという者でもありません。上がったり下がったりジグザグを描きながら上がっていくので、いったん上がった株が下がってくるのを待って買うというやり方もあります。
日経平均で見れば、もうすでに大相場がスタートしているところなので、こういう時は上がったものを買う「順張り」で良いのではないでしょうか。一方で、下がったものを買う「逆張り」が出来るのであれば、中小型成長株の多くは大きく株価が下落していますのでチャンスかもしれません。
景気は繰り返す
景気は経済活動が拡張する「好況」と、収縮する「不況」を交互に繰り返す性質があり、「好況」→「後退」→「不況」→「回復」の4つの局面が順番に繰り返し現れる循環的な動きをします。
好況の最頂点を「景気の山」、不況の最低点を「景気の谷」といい、景気の谷から次の谷までを1つの周期で捉えます。景気サイクルには次の4つがあります。
① チキンサイクル
一番小さいサイクルで、期間は4年弱です。チキンサイクルは企業による在庫への投資と関わっているため、「在庫循環」とも言われています。企業は在庫残高を調整しており、自社が適正と考える在庫残高を下回ると在庫の数を増やし、上回ると在庫の数を減らします。こうした在庫の増減により、4年弱の周期でチキンサイクルが循環するというわけです。
② ジュグラールサイクル
一般にジュグラールサイクルは、企業の設備投資に起因すると考えられており、周期は約10年です。設備は10年もすると古くなるので、新旧設備の交換が行われる際、関連企業を巻き込んで景気の波を作り出すというのがその理由です。
③ クズネッツサイクル
約20年周期であり、住宅や商業施設の建て替え時期に相当するため、一般に建設需要に起因するサイクルと考えられています。
④ コンドラチェフサイクル
約50年周期であり、要因は技術革新をあげています。
景気と株価サイクルとの関係
景気にサイクルがあるように、株価にもサイクルがあります。株式投資をする上でこのことを良く理解しておくことが大切です。
① 金融相場
株価が上がる局面で最初に現れるのが「金融相場」です。景気が悪いと、中央政府は金利水準を引き下げます。景気を下支えするために金融緩和によって市場に大きなお金が供給されるため、それが株式市場にまで流れ込んで株価が上昇します。
② 業績相場
次に出てくるのが「業績相場」です。金融緩和の効果で企業業績が回復し始めます。この局面では、個別銘柄の業績など、ミクロ要因を背景に株価が上昇することが多くなります。
③ 逆金融相場
業績相場が拡大しすぎると、政府や金融引き締めにかかります。この時に出現する相場が「逆金融相場」です。市場からお金が引き上げられるため、全体的に相場が下がります。
④ 逆業績相場
金融引き締めによって、景気も企業業績も悪化した時に現れてくるのが「逆業績相場」です。この時買われるのは、景気悪化の影響を受けない医薬品やインフラ、生活必需品などです。
長期的に見た場合、アメリカは現在逆金融相場を過ぎて、中間反騰から逆業績相場にあるように、日本は逆金融相場にも思えますが、実際はまだ業績相場の時期にいるように見えます。
金融相場の始まりの大底で仕込めるのが理想ですが、必ずしもこのサイクル通りに動くとは限らず、個別で見れば割安株が多く存在していますので、日本株を仕込むのは今がチャンスなのです。
参考文献:渡部清二 著『プロ投資家の先を読む思考法』(発売日:2023年12月7日)
Amazon
にほんブログ村
投資信託ランキング