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low angle photography of gray concrete building

2つの老いに追いつめられるマンション『老いる日本の住まい』

2020年1月、国内で初めて行政執行によるマンション解体が行われました。

対象となったのは、滋賀県野洲市の「美和コーポB棟」。1972年に立てられた鉄骨3階建て、全9戸の小ぶりな建物は解体の10年ほど前から無人になっていました。誰もいなくなったマンションは劣化が進む。2018年6月には、大阪府北部地震の影響で県道に面した外壁が全て崩れ落ち、室内に捨て置かれた家具や家財があらわになりました。

同年8月、市が行った調査で、むき出しになった鉄骨の吹きつけ材から基準値をはるかに上回るアスベストが検出されたため、市は自主解体を求める説明会を開催。所有者9人中7人が参加し、その場の全員が解体に賛成したが、解体するには所有者の4/5以上の賛成が必要であり、欠席者は反対とみなされるため、解体の決議には至りませんでした。

その後結局、行政代執行による解体に踏み切りました。かかった費用は1億1,800万円に上ります。各所有者に解体費用納付命令を出していますが、全額回収のめどはたっていません。現在も7,900万円が未回収のままです。

都内のマンションの17.4%は管理不全の兆候あり

国交省の調べによると、2022年末時点で築40年以上のマンションは全国で約125.7万戸に上ります。これは全マンションの20%近くにあたり、10年前の29.3万戸から4.3倍に増加しました。今後も増え続け、20年後には現在の約3.5倍、450万戸近くまで増加する見込みとなっています。

築40年が目安になるのは、給水管や排水管などの設備の耐用年数が一般的に40年程度であることが理由の1つです。築40年を境にすべてのマンションが老朽化するわけではありませんが、建物を維持するためには長年にわたるこまめな管理や修繕が欠かせません。

ところが、築年数の古いマンション程管理が行き届いていないのが実情です。東京都では、1983年以前に建てられたマンション約12,000等に対し、管理状況の届け出を義務付けています。届け出のあった10,440棟中1,811棟、約17.4%が「管理不全の兆候あり」との評価になっています。管理状況の届け出を行っていないマンションも1,500棟近くあることを考慮すると、管理不全マンションは更に多い可能性が高いでしょう。

いずれ出ていくはずの場所が終の棲家に

多くの分譲マンションが管理不全の兆候にある背景には、「住宅すごろく」があります。

戦後、1970年代からマンションブームがスタートしましたが、当時マンションの将来を考える意識は低く、管理組合の必要性に対する理解も広がっていませんでした。なぜなら分譲マンションは住宅すごろくにおいて庭付き1戸建てという「上がり」の1つ手前の駒に過ぎなかったからです。

戸建て購入に向けて貯金をするために管理費や修繕費は出来るだけ安い方が良い。いつか出ていく場所だから濃密な近所づきあいも別にいらない。当時、若い区分所有者の大半はそう考えていました。だから、古いマンションほど管理組合がなく、修繕積立金が不足しているケースが多い。

ところが、通過点だったはずの家は今は終の棲家になりました。国交省の「平成30年度マンション総合調査」によると、1980年には全国のマンションの区分所有者の内、「永住するつもりである」とした世帯は21.7%でしが、2018年には62.8%まで上昇。これを裏付けるように、年齢別で区分所有者を見ると1999年には60歳以上の世帯主は25.7%でしたが、2018年には49.2%になっています。

これらのデータを重ねて浮かび上がるのは、古いマンションほど高齢世帯が多く、資金不足で管理が行き届いていないということです。これは同時に、今マンションに住んでいる誰にとっても他人事ではなくなる可能性が高いことを示しています。

認知症、孤独死・・・もう一つの老い

マンションが終の棲家になり、住民の高齢化が進むことで生じるトラブルは建物に関するものだけではありません。築40年を超えるマンションの管理組合の1/4が、「高齢者・認知症の方への対応でトラブル」を経験しています。

マンション未来価値研究所が実施したマンション管理員へのアンケートでも、「認知症及び認知症の疑いのある方の対応をしたことがある」という割合は約27%に上ります。その内容で最も多かったのは「同じ話を何度も繰り返す」(70%)で、以下「徘徊」(52%)、「指定日以外のごみ出し、ごみの散乱」(35%)、「自分の部屋に戻れない」(31%)と続きます。

認知症の住人の存在が与える影響は近隣トラブルだけにとどまりません。現在の区分所有法では管理組合が物事決める際、集会を欠席した人は反対に数えられます。行方不明者や認知症で意思表示が出来ない住民がいると決議しづらくなるのです。

そしてもう一つの大きな問題が孤独死です。東京23区では65歳以上の孤独死が2003年から2018年の15年間で1,441件から3,867件と一挙に増加しました。全国的な統計は取られていませんが、同じような状況でしょう。

「自死や他殺(自然死又は不慮の死以外)が起きた場合」と「特殊清掃等が発生した場合」は事故物件になります。つまり高齢者が自室で自然死していた際、発見が遅く特殊清掃が入れば、事故物件になってしまうということです。

孤独死の発生は思わぬ形で後を引くこともあります。警察に遺体を引き取ってもらった後、部屋を含むその後の処理を依頼するべき親族がいない場合、最終的に管理組合が遺品の整理などをせざるを得ません。相続人が見つからない、あるいは見つかっても全員が相続放棄するケースは増えています。新たな所有者が見つからないと管理費は滞納状態が続き、総会の決議にも支障が出るため、管理組合が相続人を調査したり相続財産管理制度を利用したりして対応する必要があります。法律知識が必須のため弁護士や司法書士に依頼することになりますが、その費用も管理組合が支払わなければなりません。

最大の敵は「無関心」

マンション管理関係者たちの口からよく聞かれるのは「最大の敵は『無関心』」という嘆きです。

あくまで自分の持ち物は自分の部屋のみで、共有部分を含めた管理は関知しない。そんな認識の区分所有者は少なくないのだと言います。「自分が生きている間もってくれればいい」といった言葉を高齢住人から告げられることも度々あるそうです。この家に住むしかないのだから、とりあえず1日1日が平穏無事に過ぎていけばそれでいい、と。


参考文献:NHKスペシャル取材班『老いる日本の住まい 急増する空き家と老朽マンションの脅威』(発売日:2024年1月25日)

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