スイスの世界的銀行大手UBSが2024年7月10日に発表した2024年版「グローバル・ウェルス・レポート」によると、世界の富は2023年度、前年比4.2%増加しました。
世界の資産は、その約20%を75歳を超える高齢者に保有されていますが、こうした資産の「大部分」が今後20~25年かけて移転されるといいます。より多くの人々が貧困を脱し、所得レベルの階段を上っていく見通しです。
富の平均増加率
下図は、富の平均増加率を、それぞれ自国通貨建、USD建で示したものです。
日本は、自国通貨建てでは富が約9%増加したものの、USD建てでは約2%にとどまることが分かります。2022年から2023年にかけての円安(自国通貨の下落)により、USD建てによると、自国通貨建てで見るほど大きく富は増えていないということです。
トルコも日本と同様で、自国通貨(リラ)建てでは約158%富が増加したものの、USD建てでは約63%にとどまります。(自国通貨の下落に負けず、USD建てで富が年間約63%も増加しているとも言えます。)
成人1人あたりの富の平均値と中央値による国別ランキング
成人1人あたりの富の平均値と中央値、上位25ヵ国のランキングが、下の図です。
例年通り、成人1人当たりの富の平均値(上図左側)ではスイスがトップの709,612ドル(約1億1,200万円)、2位のルクセンブルクは607,524ドル (約9,600万円)、3位の香港特別行政区は582,000ドル(約9,200万円)、4位の米国は564,862ドル(約8,900万円)、5位のオーストラリアは546,184ドル(約8,600万円)と続きます。日本は220,371ドル(約3,500万円)で、ランキング23位に入っています。
成人1人当たりの富の中央値(上図右側)によるランキングでは、富の不平等が少ない国が上位に来るため、異なる結果となります。
トップはルクセンブルクの372,258ドル(約5,900万円)、2位のオーストラリアは261,805ドル(約4,100万円)、3位のベルギーは256,185ドル(約4,000万円)、4位の香港特別行政区は206,859ドル(約3,300万円)、5位のニュージーランドは202,525ドル(約3,200万円)と続きます。日本は106,999ドル(約1,700万円)で、ランキング17位に入っています。
2023年の世界の富の分布
国によって平均的な富のレベルには大きな差がありますが、国の中でも同様に大きな富の格差があります。
上図、富のピラミッドは、世界の全成人の富の分布をまとめたものです。人数の多い低所得者層が、上になるほど少数になる高所得者層を支えています。
2023年は、全世界の成人の 39.5% にあたる 約15億人の資産が 10,000ドル(約150万円)以下であり、その次の 10,000 〜 100,000ドル(約1,600万円)の層が最多で、全世界の成人の42.7%の約16億人が該当します。100,000 〜 1,000,000ドル(約1億5,800万円)の層は16.3%の約6億人、それ以上の最上位層は、1.5%の約6千万人です。
約6千万人の最上位層のうち、約2,200万人が米国に、約600万人が中国に、約300万人が英国にいます。そして日本、ドイツ、フランスに300万を若干下回る人数、カナダやオーストラリアには200万を下回る人数の最上位層がいます。
富のピラミッドの頂点
最上位層をさらに階層分けしたものが、下図です。
世界の富のピラミッドの頂点は、1人当たり1,000億ドル(約15兆8,000億円)を超え、合計で2兆ドル(約316兆円)近くを所有するわずか14人で構成されています。次の層は、500億ドル(約7兆9,000万円)から1000億ドルを所有する12人で構成されています。その下は、10億(約1,580億円)~500億ドルを所有する2,600人強です。
全体として、過去30年間で、テクノロジー産業ブーム、金融市場の拡大、不動産価格の上昇、グローバリゼーション等により、これらの富裕層の資産は大きく成長しました。一般に、これら富裕層の資産の成長の多くは、起業家活動による有機的成長と、株式市場への上場の両面によるものです。その下には、100万ドル(約1億5,800万円)から10億ドルの間という極めて広範に定義された帯域があり、およそ5,800万人で構成されています。
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※このレポートの「富」とは、金融資産の価値に、家計が所有する実物資産 ( 主に住宅 ) の価値を加え、債務を差し引いたものと定義されており、いわゆる純資産です。また、個人年金基金の資産は含まれますが、公的年金の受給権は含まれません。