全てがバブルになっている
金融市場にお金が溢れ、リスクオン、リスクテイク志向が高い時には、ありとあらゆるリスク資産は換金性が高くなります。昨年2021年の暗号資産等の暴騰はその典型です。しかし一度リスクオフになると、このようなリスク資産は、例えば中国不動産大手、恒大集団の社債のようなものは買い手がつかなくなります。換金性が低くなったからです。
今の米国は、インフレにはなっていますが、アセット(資産)バブルが崩壊するとデフレショックに見舞われる可能性があり、その陰りが見え始めています。
2021年まで米国で株価を上げていたのはGAFA(Google, Apple, Meta(Facebook), Amazon)でしたが、その後はITバブル同様、中身のない、ファンダメンタルズの伴っていない企業の株価も暴騰し始めました。いわゆる「ミーム株」です。そして実態があるとはいえ、GAFAの時価総額も馬鹿馬鹿しいレベルに達しました。例えばAppleの時価総額は一時3兆ドルを超えましたが、これはドイツのGDPに近い数字です。1社だけで、世界の経済大国の1つであるドイツの経済規模になるのはおかしな話です。さらに、ITバブルの時はIT企業株が特に高騰しましたが、今回はありとあらゆる分野でバブルが起きています。加えて、リーマン・ショック直前のように、米国では不動産までがバブルに陥っています。さらに、リーマン・ショック時には存在しなかった暗号資産やNFTも、一時期時価総額が2兆ドルにも達していました。この現象を、『エブリシング・バブルの崩壊』の著者エミン氏は、「エブリシング・バブル」と呼んでいます。
オプション投機
今回のバブル、何が起きているのかというと、株ではなくオプションが買われています。オプションとは「権利」です。コールオプションとは、あるものを「決められた時期までに決められた価格で買う権利」であり、プットオプションとは、あるものを「決められた時期までに決められた価格で売る権利」です。このうち、今回の米国株バブルの中で流行っているのがコールオプションです。
コールオプションは、現物株の10分の1等の小さな価格設定がされていて、少額で買うことが出来ます。オプション契約を作って販売するのは証券会社で、彼らはマーケットメーカーと呼ばれます。
コールオプションを販売した時、証券会社は自分がリスクを取っている状態になります。つまり、コールオプションを買った人は、株価が上がった時にそのオプションを行使したくなるので、その時に証券会社がその株を持っていないと、市場で高い現物株を買わなければならなくなります。そのヘッジのため、証券会社はオプションを売った時点で現物株を買うのです。
① マーケットメーカーが現物株を買うので、価格が上がる。→② オプション価値が高まる。→③ 株を空売りしていた人たちが、売りポジションを持っていると損が出るので、ポジションをクローズしようとする。→④ 売り圧力が減少し、更に株が上がる。→④ 更にマーケットメーカーが現物株を買う・・・
これが「ガンマスクイーズ」と言われるものですが、米国で起きていたのはこのような現象です。そしてこの仕組みが逆に回転し始めると、リーマン・ショックやITバブル崩壊とは比べ物にならない衝撃が襲ってきます。
ITバブルの時、投資家は信用取引を使ってはいましたが、株そのものを買っていました。信用取引では約3倍まで株を買えます。しかし今回のようにコールオプションを使うと、本来の何十倍ものレバレッジをかけることが出来ます。これは、かつての現物や信用取引が膨れ上がって起きたITバブルとは違い、米国の全ての証券会社を含む金融機関、自己売却部門を持つ企業をガタガタにする可能性があります。
避けられないグレート・クラッシュ
今回の米国におけるエブリシング・バブルは、ITバブル、不動産バブル、暗号資産バブル、脱炭素オルタナティブエネルギーバブル等、すべて足したものだと思えばよく、一言でいうと、今までに類を見ない「壮絶なバブル」と言えます。これが崩壊するのはまさに、「グレート・クラッシュ」です。その序章に当たる中国バブル崩壊は既に始まっており、悪影響は日本に伝播し、最後に米国発のエブリシング・バブル崩壊を迎えます。
しかしこの流れは日本にとって悪いことではありません。世界的なバブルが崩壊した後、お金の流れは日本に向かってきます。一度バブルが崩壊しないと、グロース株からバリュー株にお金が移動しません。これはサイクルだからです。この流れの中で、やがて日本のバリュー株が花開く時期がやってきます。バリューとはクオリティであり、質です。日本そのものがバリューの象徴です。
一方で、日本企業や日本人が流行の投資に手を出し始めるのは大抵天井付近だという過去の実績があります。2008年に日本企業がちょうど不動産担保証券に手を出し始めたところでリーマン・ショックが起きました。そんな過去を忘れてか、今日本企業や日本人投資家はしゃかりきになって米国の割高な金融商品を買っています。今、米国のETFに投資をする人が後を絶ちません。
もちろん、エブリシング・バブルが崩壊する時期をピンポイントであてることは出来ません。ここまで大きなバブルになってしまうと難しいのです。バブルの最後には必ずメルトアップ・フェーズが生まれます。そしてメルトアップの後には必ずメルトダウンが待ち受けています。
メルトダウンのきっかけは、FRBの金融政策の変更かもしれないし、何らかの外部的な要因かもしれません。時期は言い難いが、その崩壊はそんなに先の未来ではないはずです。なぜなら、例え今の米国株の水準でも、まだまだ割高であるからです。
データ:逆イールド
2022年11月現在、逆イールド現象が発生しています。
逆イールド現象(値がマイナスになる時期)発生から約1-2年の間には景気後退時期が来ます。
10-Year Treasury Constant Maturity Minus 3-Month Treasury Constant Maturity (T10Y3M) | FRED | St. Louis Fed (stlouisfed.org)
10-Year Treasury Constant Maturity Minus 2-Year Treasury Constant Maturity (T10Y2Y) | FRED | St. Louis Fed (stlouisfed.org)
参考文献(エミン・ユルマズ著『エブリシング・バブルの崩壊』)
本日のオマケ
私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う