某年某月、某日本人訪中団が北京を訪れた時のこと、観光の際、通訳の劉くんは近くにいた中国人学生からこう聞かれて驚きました。
「この人たち、日本人ですよね。いったいどういう階層の人なんですか?あんな安物の携帯使っていて。今じゃ学生だって持たないですよ。」
『家計簿からみる中国 今ほんとうの姿 』より
この時某日本人訪中団が使っていた携帯は、空港でレンタルしたもの。中国人にとって携帯はステイタスシンボルです。「携帯を見ればその人が分かる」とされているので、どんなに生活に窮していても携帯電話にかけるお金は惜しみません。
携帯だけではありません。生活が苦しくてもメンツを大切にするという国民性は、多くの面で表れています。割り勘を嫌うところもそう。また大きな特徴として、男性は女性にお金を払わせません。
お金の使い方には、その人の性格、人生観が見て取れ、ひいては国家間、地域性も出てくるから面白い。近年急激に増えてきた「新中間層」と呼ばれる人々の財布は、そっくりそのまま中国社会を投影しています。
『家計簿からみる中国 今ほんとうの姿 』、まずはコロナ禍への対応のために可視化された感染者の行動記録をもとに、新中間層とその対極にある農民工の生活実態から、話が始まります。
コロナが暴いた格差の現実
2022年1月、北京でオミクロン株感染者第1号が確認されました。
感染拡大を抑えるためには、第1号感染者の「濃厚接触者」を割り出し、封じ込めをしなければなりません。中国では徹底した感性経路の追跡が行われ、第1号と、翌日発覚した第2号の患者について、「発症前2週間の行動履歴」が北京市人民政府の記者会見によって中国中のメディアに公表されました。
皮肉なことに、この第1号と第2号の二人の患者は、社会の両極端に位置していました。第1号は典型的な中間階級の、どちらかといえばエリート階級に属する金融関係に勤める若い女性であり、翌日に感染が認められたのは農民工、つまり出稼ぎの40代男性でした。
行動履歴が公表されると、人々は第1号患者の華麗なる日々(頻繁に一流レストランで食事をする、高級ブランド店でショッピングをする等)に羨望の目を向け、第2号の過酷な実態(1日の休みもなく、23か所の現場を渡り歩いてひたすら働く)に涙するという現象が起きました。社会問題となっている格差が、コロナによって目に見える形で公になった格好です。
第2号の男性の行動履歴に「家」の記載はありません。財産は二輪のオートバイのみ、疲れたらそこで寝て、食事は簡単な弁当で済ませるという日常でした。外食は1度のみ、小さな食堂で一人で済ませていました。
彼の行動履歴の裏には、さらに過酷な現実がありました。彼は、3年前に失踪した息子を探すために北京に来ていた最中にコロナに感染したというのです。世論に後押しされ、警察も動いて大規模に捜索活動が行われた結果、既に息子が死亡していることが確認されました。
第2号感染者の男性は、まだ44歳にして頭髪は真っ白に変わっていたと言います。
中国中間層の規模
日本人が考える「中間層」とは
中流の定義は時代を追って変化していきますが、2000年代以降、日本人は中間層をどうイメージしているのでしょうか。
もちろん時代や社会状況によって変化はあるでしょうが、日本の中間層とは、おおよそ年収500万~600万円程度稼ぐ人という、一応の定義がありました。
しかし日本の「中流」は減少の一途であり、特に2005年以降は200万~300万円が19%増えたのに対し、800万~900万円は17%減ったと言います。(しぼむ「中流」 年収650万円以上の世帯減る: 日本経済新聞 (nikkei.com))
国際通貨基金(IMF)の統計によると、日本のGDPはアメリカ、中国に次ぐ世界第3位であるものの、1990年の数字との比較では、30年間でアメリカは3.5倍、中国は37倍になったのに対し、日本は1.5倍にとどまります。また賃金も、経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の平均賃金は3万8,514ドルで、当時の加盟国35か国中22位という体たらくです。
中国の「中間層」とは
中国国家統計局の算出した数字(2021年5月20日)によると、2020年、全国都市部と農村部の非市営機構や企業などの就業者の平均年収は9万7,379元(約185万円)で、前年比で7.6%上昇したと言います。賃金の上昇は、中等収入者の規模が大きくなることを表しています。
「我が国の中等収入者が現在4億人に達している」
(2021年8月、中国・国務院発展研究所幹部)
では、中等収入者の標準はどのようなものなのでしょうか。
2019年1月15日に国家統計局が発表したデータによると、低収入層を月収2,000元(約38,0000円)以下とし、中等収入者は月収2,000元から5,000元(約38,000円~95,000円)、少々高めの中等収入者を月収5,000元から10,000元(約95,000~19万円)、高収入者は月収1万元(約19万円)以上とし、人数を算出した結果が、中等収入者4億人ということです。
しかし中国の場合、「月収」以外の収入(副業、キックバック、投資の報酬)があまりにも多く、公表された数字だけを見ると、見誤ってしまいます。しかも基本的に中国の過程では女性も働いているので、家庭収入でいえば、2倍です。
中産階級の生活様式
オンライン百科事典「百度百科」によると、中国の中産階級とは、
・衣食住各方面で必要最低限の条件が満たされている
・生存する上で安全であるという条件が満たされている
・感情が落ち着いている
・内なる自尊心が満たされ、外からも蔑視されない 等
ではあるものの、「自らが理想とする領域には達していない」人達なのだと言います。
彼らの多くはホワイトカラー、つまり頭脳労働者であり、一定の教育もあり、家庭を持ち、消費能力もあります。
そんな彼らは、日本製品の愛好者です。自動車を所有し、個性を十分出せる衣服を好み、住宅には資金と時間と労力を使います。彼らの住宅は、120平米が平均値です。食関係においてもハイレベルなものを求め、「友人たちの口コミ」でレストランを選びます。彼らはマーケットリーダーです。
参考文献:青樹 明子著『家計簿からみる中国 今ほんとうの姿 』
本日のオマケ
私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う