子供を生み育てるというのは、何と多くのお金が必要なのだろう。それは出産直後に始まる。ミルク、紙おむつ、病院費用・・・、この3つだけで約5万元(約95万円)、幼稚園に入園すると学費だけで年間8,000元~1万元(約15万円~19万円)、小学校は学費だけで年間3万元(約57万円)、中学高校では私立では年間6万元(約114万円)、大学まで行かせるなら学費が年3万元(約57万円)は軽く超す。
(中国中間層のママの憂鬱)
教育費に加えて、家も買わなければいけない。大都市の場合、300~400万元(約5,700万円~7,600万円)、地方都市でも140平米で100万元(約1900万円)は下らない。そして子供が男の子だったら、結婚にさらにお金がかかる・・・・
中国には「子供二人、人生崩壊」ともいえるような、一人っ子政策をやめた今でも子供が増えない事情があります。
2050年には高齢者だけで5億人?
2021年5月、中国で10年に1度となる第7回国勢調査の結果が発表されました。
総人口は14億1,178万人、2位のインドを1,000万人ほど上回る、世界一の人口です。前回調査を行った2010年より7,206万人増加しているが、年間平均人口増加率は1982年の2.09%から2020年の0.53%まで下がり続けています。
着目すべきは新生児の出生数であり、一人っ子政策が解禁された2016年は1,786万人と増加したものの、翌年以降は17年1,725万人、18年1,523万人、19年1,465万人、20年1,200万人と、4年連続で大きく下がり続けています。
中国人の平均年齢は、2020年は38.8歳を記録しました。このままいくと2050年には平均年齢は50歳に達する見込みで、60歳以上の高齢者は人口の1/3程の5億人以上になるだろうと言われています。(中国発展研究基金会<CDRF>2020年発表)
各国の高齢化の速度については、倍加年齢でよく比較されます。倍加年齢とは、高齢化率が7%を超えてからその倍の14%に達するまでの所要年数を言います。それによると、フランスは115年、スウェーデンが85年、アメリカが72年、イギリスが46年、ドイツが40年、そして日本はなんと24年です。つまり日本は世界でもまれに見る倍加年齢の短さだったのですが、中国はその日本を凌ぐほどのスピード、23年となると言われています。
中国の保護者はお受験熱心派ばかり!
前述の国勢調査の結果を受け、中国のメディアは「若者たちはなぜ子供を作らないのか」という特集を組みました。社会人8年目、半年前に2人目を生んだ女性のドキュメンタリー番組です。
彼女は2人目を産んでから、子供の面倒を見てもらうため、夫の両親との同居を決め、60平米の賃貸住宅に計6名が住むという生活になりました。日々の細かい摩擦、大きくのしかかる経済的負担で、彼女は心身ともにむしばまれていく自分を感じていました。日々の生活に忙殺される中、ある日地下鉄で美しく装った若い女性を見かけた時、彼女の中にこんな思いがよぎります。
「私は一体何年新しい服を買わず、化粧もしなくなったのだろう」
中国で専業主婦はセレブの証で、ほとんどの女性は定年まで働いています。彼女たちの収入は、それぞれの過程において最大で5割を占め、住宅費と子供の教育費に費やされています。
一人っ子政策撤廃後、中国人に「2人目を産むか」と聞くと、大抵こう言います。
「住宅費と教育費が高すぎて、とても産めない」
もちろん日本でも同じ状況はあり、子供たちは塾に通い、お稽古事に放課後の時間を費やしています。しかし、日本の場合は教育に熱を入れる保護者もいれば、どちらかというと放任主義で自由にさせている保護者もいる中、中国はほぼすべての親が教育に命を懸けていると言います。
月給の1/3が教育費で消える
「人々は二子女政策ではなく、今日の中国において子女を育てる費用があまりにも高いことから、子女を生むことが出来ない」
(上海ニューヨーク大学の社会学者、リィ・イフェイ)
中国人ネット民は、これをもっと的確に表現しています。
「不動産価格と教育費は、一番効く避妊薬だ」
子供一人の養育費に凡そどのくらいの費用がかかるのかという概算があります。
0~22歳合計金額、70万3,200元(約1,336万円)(某ネット民の試算)。
これは基本的な金額です。子供一人に、総費用102.5万~249.5万元(約1,947万~4,740万円)という試算も出ています。日本では、子供1人に2,000万円から3,000万円かかると言われていますが、中国はそれを超えつつあります。しかし、平均年収がまだ日本に追いついていない状況を考えると、これがいかに酷な数字かということが良く分かります。
「宿題禁止令」という通達
2021年7月、「義務教育段階の児童・生徒の宿題負担と郊外教育の負担軽減に向けた意見」という通達が発せられました。「意見」という名の「絶対命令」です。この「意見」でいう「軽減」とは、宿題と課外授業、つまり塾とお稽古事を軽減せよということです。
<「絶対命令」の内容> ・保護者は宿題のチェックや指導をしてはいけない ・国がオンライン授業を開始する ・塾の費用も政府が基準額を示して管理下に置く ・学習塾の株式上場による資金調達を禁じる ・教師の学外での学習指導を厳禁する。見つかった場合は、教師の資格を剥奪する・・・等
通達から約3か月後の10月半ば、4名の先生が禁じられていた学外での授業を行った疑いで関係当局の取り調べを受けました。国は本気です。
一方で、中国では学歴が人生を変えます。
子供たちは、生まれたその日から、「いい大学」に入るための道を歩まされています。大学入試は「絶対負けられない運命の2日間」なのです。そこが変わらない限り、教育費改革といっても結局は「笛吹けど踊らず」になってしまう可能性があります。
少子高齢化は、中国の未来像を大きく変えています。
参考文献:青樹 明子著『家計簿からみる中国 今ほんとうの姿 』
本日のオマケ
私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う