半導体産業の危機
OECDが3年に1度発行する「OECDデジタル経済展望」によると、韓国は16年に続き19年にもブロードバンド普及率が世界1位となりました。他にも韓国は、ネット通信速度やモバイルデータ使用量(月平均24GB)等、4つの部門で1位を獲得し、「ITインフラ強国」としての立場を強固なものにしています。
スマホ普及率も95%で世界1位の韓国は、19年4月3日午後11時、米国よりも半日早く、世界初の5G商用サービスを開始しています。5Gとは、VR(仮想現実)/ AR(拡張現実)、自動運転、IoT(物のインターネット)などに活用される「夢の通信」と言われる高速通信です。21年11月時点で、韓国の5G加入者数は2,000万人を突破しており、21年夏の東京五輪で使用された5G関連の装備も、サムスン電子が日本のKDDIに納入したものです。
韓国の主力産業として定着したこれらの情報通信技術(IoT)産業は、新型コロナ下でも経済の大きな下支えとなっています。21年、輸出総額は6,445億4,000万ドルと史上最高額を記録しましたが、このうち半導体などのICT産業が輸出全体に占める割合は35.3%に達します。新型コロナで世界経済が迷走している間、韓国は半導体を筆頭としたICT産業群の輸出の好況に支えられ、21年には4%の経済成長を記録することが出来ました。
一方、韓国経済が半導体産業に過度に依存していることに対する懸念もあります。19年7月、日本政府が半導体の核心品目の輸出管理を強化したことに対し、経済構造の急所を突かれた韓国政府が激昂したことがありました。韓国の半導体部品における自給率は20%で大部分を日本などに依存しており、供給に異常が発生すればたちどころに経済全体に激震が走ることになります。
加えて、代表的な半導体企業であるサムスン電子に対しても、近年は危機がささやかれることが多くなりました。未来の半導体市場では、非メモリー半導体が主流になる可能性が高いと言われていますが、非メモリー半導体分野でサムスン電子は思うような成長を遂げられていません。その理由は、同社が積極的に戦略的M&Aや大規模投資を行って半導体事業を拡大させなければならなかった大事な時期に、実質トップだった李副会長の不在(朴槿恵の投獄事件に巻き込まれた)が続き、重要な決定が遅れたためです。
日本の経団連にあたる「全国経済人連合会」は21年、新産業分野の国際競争力に関する研究報告書「韓米中日の現在及び5年後の競争力」を発表しました。韓国、米国、中国、日本の電気自動車、産業用ロボットなど7つの新興産業分野を、企業経営のしやすさ、政府の支援、研究開発投資など6つの項目で予測した報告でしたが、全ての項目で1位を獲得したのは米国であり、韓国は全ての項目で3位と4位を占めるにとどまりました。
現在の韓国のIT産業は半導体を除いてグローバル市場で優位を占める分野がほとんどありません。ベンチャー産業に対する韓国の国際競争力が低くなっているという指摘もたえず出ています。2000年代半ば以降、IT大国を自任してきた韓国は、迷走の時を迎えています。
業界の地殻変動
2年以上世界を席巻しているコロナ禍は、私たちの日常の少なからぬ部分を「非対面・非接触」に変えました。ネットインフラが発達していた韓国は、コロナがもたらしたこのような「非対面社会」への対応も早く、そんな中、業界の地殻変動も起きています。
長らく流通業界のトップに君臨してきたロッテグループがオンラインサービス部門で後れを取って失速し、新世界グループが韓国流通業界の主導権を握りつつあります。新世界グループは10年にはすでにオンラインショッピングプラットフォームの構築に着手しており、21年には本社ビルを売却して4兆ウォン(約4,175億円)の資金をEコマース企業のM&Aに投下し、オンラインとデジタルを中心に事業構造を全面的に改変しています。その結果、21年に新世界グループは韓国のEコマース市場でネイバーに次ぐ2位のシェアに浮上しました。
フィンテック(金融+技術)ブームが起きている金融業界でも同様の動きが起きています。韓国は15年にネット銀行関連法が成立し、17年にKバンクとカカオバンクが、21年にトス・バンクがそれぞれネットバンクサービスを開始し、急成長を遂げています。21年末時点のネット銀行の顧客数は、カカオバンクが1,799万人、Kバンクが717万人の計2,516万人で、韓国の全人口の半分にあたります。
ネット銀行の最大手であるカカオバンクは、21年の上場と同時に、時価総額が金融関連銘柄の1位となりました。21年の純利益は、韓国最大の銀行である国民銀行の15分の1に過ぎませんが、その将来性が高く評価されたということです。
ネット銀行の台頭の裏で、一般銀行には負の影響があります。21年には、7大銀行と言われる大手7行が、40代以上の行員を対象に、4か月間で5,000人以上の希望退職者を募り、人員削減を行いました。実店舗数を減らし、デジタル化に対応するために行われたことです。
韓国では、新型コロナを契機に全産業分野でデジタル化が加速しています。時代の流れに乗り切れない企業は、消費者にそっぽを向かれて没落していくのです。
参考文献:金 敬 哲 著『韓国 超ネット社会の闇』(発売日:2022/7/19)
本日のオマケ
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