韓国では、人の霊、即ち「霊魂(ヨンホン)」までかき集めて、つまり使えるものは全部使って、借金しまくって何かに投資することを「ヨンクル」と呼びます。今の韓国の経済を語る際に、「ヨンクル」という単語を外すことは出来ません。
「ヨンクル」は不動産投資だけに限られる言葉ではありませんが、2021年初夏頃まで続いた低金利・住宅価格上昇期に、20代・30代の間で無理してマンションを購入する投資が流行り、この「青年層とマンション」がヨンクル問題の最も中心に存在します。
韓国では、「マンションを買うことこそが身分上昇である」という考え方があります。だから身分上昇を目指して「霊魂(ヨンホン)」までかき集めて、マンションを買うのです。朝鮮末期、貴族の家系図をお金で買う人たちが増え、身分社会が崩壊する事態となりましたが、その状況と似ているようです。
ヨンクル族はどれくらいいるのか
ヨンクルがどれくらいいて、どれくらいの債務を背負っていて、その中でリスクがあるものはどれくらいなのかを示す公式データはありません。しかし、不動産投資に限った人数と債務規模であれば、次のような推測値が出ています。
「・・・住宅価格の上昇期に住宅担保ローンを新規に受け取ったり増額した借主が226万人以上だと分かった。ローン金額では約394兆ウォンに達した。基準金利の引き上げでローン金利が急速に上がり、いわゆる「ヨンクル」たちが、大きな経済的な困難を経験するだろうとの懸念が提起される。・・・問題は、来年も金利引き上げが持続し、景気低迷の懸念などで、国内外の高強度緊縮基調が続くということだ」
(「ソウル経済」)
ヨンクルには、不動産以外の分野に投資した人たちも多いため、全体規模からするとこれは一部に過ぎないでしょう。ただ、大まかに規模を把握するためには役立ちそうです。
高金利と住宅価格下落による「ヨンクル」たちのリスク
「昨年あたりに貸出しを受け家を買ったヨンクルたちの悩みは、しばらく続くものとみられる。去る2日、米国中央銀行である連邦準備制度理事会が4連続ジャイアントステップ(基準金利0.75%引き上げ)を行い、韓国銀行も今月24日に開かれる金融通貨委員会で金利を引き上げると予想されているためだ。そのような最近の傾向からすると、今年末の住宅担保ローンの最高金利は、2008年から14年ぶりに、年8%線を突破すると予想されるという点だ。この場合4億ウォンを30年満期、元利金均等条件で借り入れた人は、月々の利子だけで266万ウォン、元利金にして293万ウォンを納付しなければならない。韓国銀行のデータ統計結果では、金利が上がる前の去年には年4%金利だったので、それと比較すると、1人あたりの平均年利子負担増加額は約163万ウォンに達する。
(「毎日経済」)
追加の金利引き上げは、既に低迷期に入っている不動産市場を更に凍り付かせると予想される。特に自己資本が少なく、購入費用の相当部分をローンにした20、30代のヨンクルたちは、受ける影響も大きいだろう。不動産関連シンクタンク「ブテントク」のジョン・ソンジン代表は、「金利引き上げの影響を受けた彼らは、最近数年間、不動産価格が急騰していた時期にノウォン・ドボン・カンブク等ソウル外交地域を中心に『急いで購入しないと』と、パニック買いをした人がほとんどだ」「相次ぐ政府の措置にも、住宅価格が下がらなかったので、今買わないといつまでも家が買えなくなると思ってしまい、マンション購入に走ったのだ」「しかし、最近は金利が相次いで上がり、その買った家を売りたくても、買おうとする人もいなくなった」と話した。
借金で投資する「ビットゥー」
無理をしての投資は、不動産だけではありません。ヨンクルとほぼ同じ意味で「ビットゥー」という言葉があります。主に不動産、マンション購入関連では「ヨンクル」を、それ以外の株式やコイン等では「ビットゥー」という言葉を使うようです。
経済紙「韓国経済」の2022年11月3日の記事によると、若い世代の基礎生活受給者(日本の生活保護のようなもの)が、急激に増えています。その原因が、ヨンクルやビットゥーです。
韓国社会保障情報院が11月に発表したデータによると、基礎生活受給者に選定され、政府支援を受けている人の内、20代~30代の若者は2022年7月基準で24万5,711人おり、5年前の2017年同時期に発表されたデータ16万2,750人と比較すると、51%も増加したことになります。
日本の場合、令和2年時点で20代・30代の生活保護は約14万9,000人ですので、人口比で考えると、韓国には、日本の約4倍の生活保護受給者がいるということになります。
青年の2割以上が「法的に住宅でないところ」に住んでいる
青年貧困については、「ソウル研究院」という機関の調査が2022年初頭から話題になりました。同調査では、中位所得(所得の真ん中になる人の所得)の半分以下の所得を「貧困」とし、住宅の場合は「法的に住宅でないところに住んでいること」を「貧困」とする等々の判断で、ソウルに居住する18~39歳の青年3,000人の貧困を調べたものです。
2022年1月3日発表データによると、ソウルに住む青年10人のうち8人は何らかの貧困状態にあります。教育・力量(ニートなど)、労働(失業など)、住居、健康(うつなど)、社会資本(孤独など)、福祉(食生活の欠乏など)の7つの領域のうち、1つ以上の貧困状態にある青年が86%、3つ以上の領域が欠乏した青年は42.5%、更に5つ以上の領域で貧困状態の青年も10.5%いました。
内訳は、経済52.9%、教育・力量22.9%、労働35.4%、住居20.3%、健康40.3%、社会的資本37.4%、福祉22.4%です。つまり調査対象の青年のうち2割以上が「法的に住宅でないところ」に住んでいるということです。
なお、2020年7月のソウル市の成年人口は311万4,704人ですので、5つ以上の領域で貧困状態の青年10.5%とは、約32万7,000人ということです。
韓国人にとって「人生に意味を与えるもの」
ピュー・リサーチ・センターが2021年11月18日に公開した「人生に意味を与えてくれるものは何か」というレポートがあります。
経済的に発展したとされる17か国で、①職業や経歴、②家族と子供、③物質的な豊かさ、④友人やコミュニティー、⑤体と精神の健康、⑥地位、⑦自由と独立、⑧趣味、⑨社会、⑩サービスとエンゲージメント、⑪教育、⑫自然や野外活動、⑬魅力的なパートナー、⑭旅行や新しい経験、⑮引退、⑯宗教や信仰、⑰ペットの中で人生に意味を与えてくれるものは何かを選んでもらったものです。
17か国中14か国で「家族と子供」が1位に選ばれました。(日本含む)
韓国は、「物質的な豊かさ」が1位でした。17か国中唯一です。
参考文献:シンシアリー著『韓国の借金経済』(発売日:2023年3月1日)
本日のオマケ
私の取引
以下のファンドを毎営業日自動買付しています。
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私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う