「幸福に生きるにはどうすれば良いのか」という問いに答えるためには「幸福とは何か」を定義しなければなりません。橘玲氏の前著『幸福の「資本」論』では、「金融資本」、「人的資本」、「社会資本」を幸福の土台として、この条件がある程度揃った状態を「幸福」だと定義しました。本人が「自分は不幸だ」と思っていても、3つの「資本」を持っていれば、それは「幸福」なのです。
人生の8つのパターン
幸福の3つの土台(「金融資本」「人的資本」「社会資本」)から、人生を8つのパターンに分類することが出来ます。
①貧困: 金融資本、人的資本、社会資本が何一つない状態。「不幸=貧困」てとは、幸福の土台がどこにもないことです。 ②プア充(社会資本のみ): 貯蓄も収入もほとんどないが、恋人・家族・友達関係は充実している状態。地方都市で中学・高校時代の「いつものメンバー」とつるみながらバイトや非正規の仕事をしているヤンキーやジモティーがその典型です。 ③ソロ充(人的資本のみ): 専門職などでそれなりの収入はあるものの貯蓄はなく、友達もあまりいない。地方から都会に出てきた大卒エリートの若者がその典型。1人暮らしでも、仕事や趣味で充実した生活を送っており、「仕事は出来るけど異性としての交際にはあまり興味がなく、友達付き合いも苦手」というのもこのタイプです。 ④孤独なお金持ち(金融資本のみ): 仕事はしておらず、家族も友人もいないが、経済的な不安はない状態。独身の退職者のほか、親と同居し、アルバイト程度の仕事しかしていない裕福な引きこもりも、これに当てはまります。 ⑤リア充(人的資本+社会資本): バリバリ仕事をしていて、なおかつ恋人や友達に囲まれている状態。東京生まれで私立の中高一貫校から有名大学に入り、一流企業に勤めている若いビジネスパーソンがその典型。SNSで「リア充アピール」に余念がなく、インスタ映えする生活を維持するのにコストがかかるので、資産はあまりありません。 ⑥ソロリッチ(金融資本+人的資本): 高い収入によって資産形成に成功したものの、独身のまま友人もあまりいない状態。医師・弁護士などの専門職によく見られる。一見孤独に見えますが、生活に何の不安もないため幸福度は高い傾向にあります。 ⑦マダム(金融資本+社会資本): 「働いていないけれど、お金はあるし友達もたくさんいる」状態。夫の稼ぎを金融資本に、ママ友を社会資本にするマダムがその典型。裕福な退職者のほかに、親のお金で好き勝手に暮らしているドラ息子、娘(友達から人気がある場合)もこのタイプに含まれます。 ⑧超充(金融資本+人的資本+社会資本): 幸福の「資本」をすべて持っている状態。その生活は超充実しているはずですが、このレベルに至るのは簡単でありません。
この関係を整理したのが下図で、金融資本、人的資本、社会資本が増えるにつれて幸福度は上がっていきます。
主観的には幸福だとしても、幸福の「資本」が1つしかない状態では極めて不安定です。このように考えれば、幸福の「資本」を2つ持てるようにするというのが当面の目標になります。そうすれば、離別や失業、経済危機などで一方の資本を失ってしまっても、残された資本を使って再起を図ることが出来ます。
人生の6つの資源
精神科医で進化医学を研究するランドルフ・ネシーは、心の不調に悩む患者がどこに問題を抱えているのかを知るために、人世を以下の6つの資源に分類しました。
①収入: 食料、住居、お金などの物的リソース ②能力: 外見、健康、時間などを含む個人的なリソース ③職業: 収入とやりがいをもたらす仕事 ④社交: 評価や承認を得られる人間関係 ⑤愛情: セックスを含む親密な関係 ⑥子ども: 家族との関係
『幸福の「資本」論』でいうなら、①は金融資本に、②③は人的資本に、④⑤⑥は社会資本に該当します。ネシーは、「人生とはこの6つの重要な価値の選択だ」と述べています。なぜなら、私たちは極めて厳しい資源制約を突き付けられているからです。
人世に無限の資源を投入できるなら、全ての価値を均等に最大化することで幸福を実現できるでしょう。しかし現実には、誰もがこの中から、何かを選び、何かを諦めなくてはなりません。私たちは皆、ある価値を重視し、別の価値を軽視することで、何とか人生のバランスを保っています。生きるために死活的に重要なものと、どうでも良いものがあるのです。
ネシーによると、精神的な不調は、重要な価値が毀損した時に起きます。例えばキャリアを大事に考えているビジネスパーソンが仕事に失敗して会社内での地位を失ったら、心を病むことになります。逆に、そのような価値観を持つ男性が、妻から離婚を突き付けられたとしても、心理的にはほとんど影響をもたらしません。なぜなら、その出来事は彼にとってそれほどの価値がないからです。
終わりよければすべてよし
例えば、最初に氷水の中に手を入れ(かなり痛い)、次に常温の水に手を入れた時と、この順番を逆にして、最初が常温の水で、次に氷水の時とでは、痛みの感覚は全く違います。物理的な刺激としては痛みの総量は同じはずなのに、最初に痛みが来ること耐えやすく、最後に痛みが来るのははるかに苦痛が大きい。脳は直近の出来事に強く影響され、過去の出来事程影響は薄れます。「終わりよければすべてよし」なのです。
今つらい思いをしている人に向かって「それは幸福への単なるステップだ」というわけではありませんが、いつか成功を手にした時、その体験は人生の「物語」を更に魅力的なものにしてくれるはずです。自分の人生を魅力的な物語にするためには、どうすれば良いでしょうか。この問いを出発点に、金融資本、神石資本、社会資本の土台をどのように合理的に設計すれば良いのかを考えましょう。
参考文献:橘 玲著 『シンプルで合理的な人生設計』(発売日:2023年3月7日)
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