不動産市場にのしかかる影
韓国では、人の霊、即ち「霊魂(ヨンホン)」までかき集めて、つまり使えるものは全部使って、借金しまくって何かに投資することを「ヨンクル」と呼びます。今の韓国の経済を語る際に、「ヨンクル」という単語を外すことは出来ません。韓国では、「マンションを買うことこそが身分上昇である」という考え方があり、身分上昇を目指して「霊魂(ヨンホン)」までかき集めて、マンションを買うのです。
しかし、韓国には少子化問題、すなわち人口減少問題があり、それが韓国の不動産市場に暗い影を落としています。国の人口が維持できる合計出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)は2.1人ラインと言われていますが、韓国のそれは、2021年基準で0.81人、2022年基準で0.78人となりました。(⇔日本の2021年基準の合計出生率は1.3人)
そもそも、結婚を遅らせる、又は結婚しない(できない)人口も増えており、韓国の30代男性の未婚率は50%を超えています。住宅価格が高くなり、就職も難しくなり、結婚は必須ではないという価値観が広まり、さらに男女比率の問題もあるからです。通常、女性100人あたり男性103~107人の男女比率が望ましいとされていますが、現在30代の彼らが生まれた頃、1980年、1990年代はこの男女比率が大幅に崩れており、ピークとされる1990年は、女性100人に対し、男性116.5人でした。これは、男の子を望む社会意識が強すぎたために、出生前に胎児の性別を鑑定し、女児の場合はおろしてしまっていたからです。
地下・半地下、考試院を住居にする「地獄庫(ジオッコ)」
韓国では、自分で生活費を負担できずに誰かの助け、多くは親の助けで生活する人のことを、「カンガルー」と言います。カンガルーは成人全体でみると7.5%(313万9,000人)で、20代では38.9%、30代では7.0%、40代では2.2%います。(「2020人口住宅総調査標本集計結果」(2021年9月27日、統計庁発表))
カンガルー等青年貧困に関連し、「地獄庫(ジオッコ)」問題があります。ジオッコとは、地下・半地下、屋上部屋、考試院の頭文字(ジ・オク・コ)です。屋上部屋とは、屋根裏部屋、又は建物の屋上に仮設用の資材で作った施設の事です。考試院とは、国家試験等の受験のために缶詰めになって勉強するための小部屋ですが、狭く、施設も劣弱なので、住宅脆弱施設に分類されます。これらジオッコに住む人の数は、過去12年間の間に23%増え、86万世帯に及びます。
「この日チェウンヒョン韓国都市研究所長は、『住居脆弱階層の居住実体と対応課題』というテーマ発表で住宅脆弱階層に分類される全国のジオッコ居住者が、2020年基準で85万5,553世帯に達すると集計されたと明らかにした。考試院に代表される非住宅施設居住者が46万2,630世帯で最も多く、地下及び半地下32万7,320世帯、屋上部屋6万5,603世帯だった。非住宅施設には、居住に適していない考試院とビニールハウス、コンテナ・・・非宿泊用施設(ネットカフェなど)が含まれる。2010年と比較して、ジオッコ居住者は23%増加した。半地下は40%近く減ったが、考試院など非住居居住者が何と4倍近く増えた。」
(「東亜日報」2022年9月29日)
なお、半地下に住む人が40%も減ったのは、ジョンセ保証金、即ち部屋等を借りるための費用があまりにも高くなったからです。既に2021年から1億ウォン(約1,000万円)を超えています。ジョンセ保証金を用意するために結局はローンに頼るしかないのが現状で、半地下が、「高くて住めない」存在になりつつあります。そしてジオッコ脱出はどんどん難しくなる、そんなところではないでしょうか。
とんでもない人口の首都圏集中率
日本の場合、ニュース番組でもないと、まず首都圏という言葉を聞くこともそうありませんが、韓国では人を「ソウルに住んでいるのかどうか」で判断する社会風潮があり、住んでいる場所がソウル(せめて首都圏(=ソウル、京畿道、仁川))であるか否かは、人の人生に大きな影響を及ぼします。
そのため、とんでもない人口が首都圏に集中しており、首都圏人口集中率は、日本が28%なのに対し、韓国は50.3%です。
「住宅・交通・環境などにおいて、過ぎた競争は社会的ストレスを増やすことになり、それは、やがて深刻な葛藤と分裂を招くことだってある。これらの問題は、結局、人口減少というもう一つの問題を生み出すことになる。我が国は、昨年末基準、全体人口のうち、半分を超える50.3%(2,605万人)が首都圏に集まっている。これは、同じく首都圏集中化を巡って悩んでいるイギリス(12.5%)、フランス(18%)、日本(28%)に比べても圧倒的な数値だ。このような人口集中現象は、各種指標をみると当然の結果でもある。まずは働き口。釜山商工会議所が分析した昨年、全国1,000大企業の分布をみると、ソウルに過半数の529社があった。売上基準で見てみると、ソウルの比重は65.4%に達する。京畿道182社(19.7%)、仁川40社(2.6%)を合わせると、1,000大企業の内751社(87.7%)が首都圏に密集しているわけだ。」
(CBS「ノーカットニュース」(2022年12月8日))
参考文献:シンシアリー著『韓国の借金経済』(発売日:2023年3月1日)
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