投資や経済分析をする際に、最も大切なのは目先のイベントに振り回されることなく、「大局観」を持つことです。戦前の日本人には、これらの分野に優れた知識人や政治家がたくさんいました。今は、個人が参考に出来るような意見を述べる専門家が、日本にはほとんどいません。
投資とは「戦」のようなもの。短期決戦ではなく長期で戦う際に戦術よりも重要になるのが「戦略」です。そして戦略とは、大局観を読むことです。
今はトレンドが大きな転換点に差し掛かりつつあります。株価だけではなく、世界経済の構造そのものが大きく変わろうとしている。そういう時期だからこそ、経済指標を読むことが大事なのです。
参考文献:エミン・ユルマズ著『世界インフレ時代の経済指標』(発売日:2023年5月10日)
今、経済大転換が起きている
今の世界経済は、50年に1度とも言うべき、大きな転換点に差し掛かっています。1970年代から1980年に経験して以来の大インフレ時代を迎えつつあるということです。
2008年のリーマンショック以降、多くの先進国は低成長率とデフレリスクに悩まされました。少しでも成長率を高め、2%のインフレ目標を達成するために積極的な金融緩和を行ってきたわけですが、2021年5月あたりから米国は急激なインフレへと転じ、2022年7月の消費者物価指数は、前年比9.1%の上昇となりました。
日本はというと、少なくとも今の米国の状況と比べると、ほとんど上昇していないのも同然ですが、円安、つまり円の通貨価値低下は起きており、それはインフレの元凶になりえます。2022年3月あたりは1ドル=115円前後でしたが、同年10月21日には1ドル=151円94銭まで円安が進みました。
今後さらに円安へと向かうのか、それとも円高に転じるのかは分かりませんが、40~50年ぶりのインフレが起こりつつある中で、私たちは今まで以上に為替相場や、その値動きに大きな影響を及ぼす、世界経済の動きを注視していく必要性が生じてきました。
2022年以降、世界的にインフレが進行した一番の理由は、金融緩和によるものです。新型コロナウイルスのパンデミックに対し世界があまりにも過剰反応し、世界経済を止めたので、経済活動に大きな爪痕を残す結果になりました。その後遺症が、インフレなのです。
そして今回のインフレは、米中間の新冷戦や、ウクライナ戦争と言った構造的な要因をはらんでいるように見えます。そうであれば、世界的に物価水準はコロナ問題の状態に戻ることはありません。
今回のインフレが起こる前、世界的にデフレが加速していた最大の要因は、中国の存在です。「世界の工場」とも呼ばれる中国は、これまで安い労働力を利用して、極めて低廉な価格で世界に製品を輸出していました。中国はまさに人類史上最大のデフレ輸出マシーンと言っても良いでしょう。ところがこの数年、欧米諸国と中国という対立軸が先鋭化し、中国とデカップリング(切り離し)する動きが出てきました。デフレ輸出マシーンだった中国をサプライチェーンから外すことになれば、必然的にモノの値段は上がらざるを得ないのです。
もう1つ、ウクライナ戦争の問題があります。ウクライナと戦争をしているロシアは、世界最大の資源国の1つです。欧州各国はロシアからパイプラインを通じて天然ガスを輸入していましたし、パラジウムは生産の4割がロシアです。半導体製造のレーザー光源に用いられるネオンは、ウクライナが生産の7割を、同じ用途のクリプトンは、ロシアとウクライナの合計で生産の8割を占めています。ウクライナ戦争が終結しない限り、あるいは画期的な代替物が出てこない限り、そこで採掘される希少資源の価格は高騰し続けるでしょう。これも構造的なインフレ要因であると言えます。
参考文献:エミン・ユルマズ著『世界インフレ時代の経済指標』(発売日:2023年5月10日)
経済指標を読む前に知っておくべきこと
「経済指標」と言っても、本当にたくさんの種類があります。有効求人倍率、失業率などの雇用関連、企業物価指数や消費者物価指数、GDP、鉱工業生産指数、機械受注統計、日銀短観、景気動向指数・・・等々。
これらは日本の経済指標ですが、日本のみならず、米国には米国の、中国には中国の経済指標が存在します。経済活動やグローバル化が進む中では、日本の経済指標だけを見ていては世界経済の実像を把握することは出来ないでしょう。
マクロ経済の流れ、現状を把握するためにまず見るべきなのは、米国の経済指標です。なぜなら、世界経済の大きな流れは、米国を見ないと分からないからです。
例えば中央銀行のトップは世界中の国の数ほどいますが、最も注目度が高いのはFRB議長の発言です。他の国の中央銀行総裁は、常にFRB議長の意見に耳を傾けています。そしてその傾向は、中央銀行に限った話ではありません。ビジネスの最前線においても、あるいは政治の世界においても、常に米国は各界のリーダー的存在であり、だからこそ、その一挙手一投足が注目されているのです。
米国の次に注目されるのは日本です。米国がトレンドを作った後、日本がそのトレンドに沿った方向に、政策などの舵を切っているのかどうかという観点で、日本の経済指標をチェックします。
その次が中国。中国は世界の工場として、様々な国から仕事を受注しています。つまり中国の製造業が今、好景気にわいているのか、不景気に苦しんでいるのかという点を見るだけで、世界経済の状況、各国の景気動向が大まかに分かります。
最後にEUです。米国や日本、中国に比べて、欧州のプレゼンスは低いですが、それでもEU全体で見れば、その経済規模は米国の7割に相当します。中でもドイツはEUの中で最も強い経済力を持っています。ですので、ドイツの鉱工業生産やPMI等は必ず目を通すようにするのです。
参考文献:エミン・ユルマズ著『世界インフレ時代の経済指標』(発売日:2023年5月10日)
参考文献:エミン・ユルマズ著『世界インフレ時代の経済指標』(発売日:2023年5月10日)
本日のオマケ
私の取引
以下のファンドを毎営業日自動買付しています。
1.日本株式インデックスファンド 5,000円(自動買付)
(ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド)
2.世界株式インデックスファンド 5,000円(自動買付)
(SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
また以下のファンドを、月1回三井住友VISAカードで積立しています。
1.世界株式インデックスファンド 50,000円(自動買付)
(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))
私の投資方針
1.投資対象は、主に株式インデックスファンド、又は個別株式とする。
2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない
3.レバレッジ、信用取引等はしない
4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う
5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる
6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』
・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する
2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』
・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め
3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』
・基本的に売らない
4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』
・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる
5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』
・素晴らしい会社を適正な価格で買う