中国人が日本の不動産を欲しがる理由として、中国の医療体制について、中国人自身があまり信頼していない、という点も関係しています。
中国の病院事情
北京には、全国的にも有名な三級病院である協和病院があります。中国の病院は一級から三級まで分類されており、三級が最も医療レベルが高いが、人口に比較してその数は非常に少なく、大都市圏に集中しているうえ、中国全体の病院の10%未満しかありません。
協和病院の入り口には、座って待っている人達がいます。農村では治療できない病気のため、数十時間かけてやってくるが、順番待ちをしている数日間、ホテルに泊まるお金もないので、そこに座って待っている人達です。夜になると、玄関ホールに布団を敷いて寝る人もいます。
また医療費は、一部の病院を除いて基本的に前払い制です。入院中も同様で、支払いをしないと治療は一切してもらえません。さらに、中国では看護師に介護してもらえるわけではなく、着替えや食事の介助、診察の付き添いなどのためにはヘルパーを雇うのが一般的です。ヘルパーの1日の日当は360元(約6,840円)、5日入院すると、5,400元(約10万2,600円)かかります。
玄関に置き去りの患者と、優遇されるVIP患者
23年初頭、中国各地でコロナの観戦が急速に拡大している時、病院の廊下や玄関ホールまでベッドや担架、車いすを並べて点滴をしている様子を日本のテレビニュースで見たという人もいたでしょう。玄関ホールに入りきれず、屋外で点滴をしている人もいました。このように、中国では、感染爆発して病床がひっ迫している時でなくても、患者がぞんざいな扱いをされることは珍しくありません。
一方で、中国の病院の特徴と言えるのが、VIP専用の診療室や病棟です。政府の高官、富裕層、特定のコネを持つ人が利用できる診察室で、大混雑する一般外来と違ってほとんど待ち時間なく、有名教授に診察してもらうことが出来ます。日本にも病院により最上級クラスの個室は存在しますが、お金を払えば使用できます。中国では、どんなにお金があっても、使用できない場合があります。重視されるのは、行院や政府とのコネの有無だからです。
かつてある省庁のナンバー2という高官だった人が骨折して入院した時、「手術にどんな器具を使いますか?」と聞かれたそうです。「安い器具は国産だから品質が悪いですよ。錆びるかもしれませんから、高い器具で良いですか?高い器具は輸入品です。保険はききません。」と言われ、通常の20倍の費用を払って手術してもらったそうです。
お金とコネがあれば、いい医者に診てもらえます。日本でも保険がきかないことはありますが、中国では日本以上に保険で賄える範囲は狭く、常に医者から「国内製にするか、外国製にするか」二者択一を迫られます。
他に特権ルートというものも存在します。22年に江沢民元国家主席が白血病で亡くなったことが報じられましたが、江氏にかかった治療費は1億元(約19億円)を下らないだろうと言われています。これは全て政府のお金で賄われました。医療品に限らず、『中南海(政府要人の居住地域)』にいる人々には『特別供与』というものがあり、どんなものでも入手できるそうです。
外国人にも丁寧な医療を提供する日本
中国では相当なお金を出しても、ごくわずかな特権階級の人々を除き、十分な治療をしてもらえないこともあります。コロナ禍でロックダウンされた都市では、数億円の資産がある富裕層でも救急車を呼ぶことさえできませんでした。
中国の人々がお金儲けに熱心なのは、いざという時に大金が必要になるからですが、たとえ大金があっても手に入らないものは多い。そのため、富裕層の中には、外国人であってもお金を払えば高度な医療を提供してくれる日本に、健康診断や精密検査、治療などのためにやってくる人がいます。そうした需要を受け、訪日医療をサポートしている在日中国系企業も多数あります。
中国人が日本で治療を受けたい最大の理由は、日本の医療を信じているからです。治療効果も日本の方が高いし、医療の環境、医療サービスも中国より断然日本の方が良い。翻って、中国では患者の数が多すぎて、トップレベルの病院は常に患者が溢れていて、1人の治療にかけられる時間は非常に短い。もし同じ癌患者がいたら、日本の方が早く治療を開始できます。また中国にはVIP専用の診療部門はありますが、日本よりも治療費が高いのです。
参考文献:中島 恵著『中国人が日本を買う理由』(発売日:2023年5月9日)
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