富を築くために何より重要なのは、米国株をいつ買うかではありません。カギを握っていたのは、買い続けることです。企業価値評価の高低は問題ではなく、強気市場か弱気市場かも問題ではありません。重要なのは、とにかく株を買い続けることです。これは、あなたが全世界のどこにいようと、経済状況を根本から変えられる投資哲学です。
何を重視するべきか
例えば1000ドルの金融資産しか保有していなかった場合、例え年利10%で運用できても1年で100ドルの投資収益しか稼げません。夕食代との飲み代と交通費を払うと、1年分の投資収益が吹き飛んでしまいます。逆に言うと、一晩仲間と飲み食いするのを我慢するだけで、1年分の投資収益と同額のお金が手に入ったことになります。
一方資産1,000万ドルの場合はどうでしょうか。この人のポートフォリオが10%減ったら、100万ドル失うことになります。この人は、1年で100万ドルの貯金が出来るでしょうか。相当な高収入でない限り、まず無理でしょう。だからこそ、資産が1,000万ドルの人は、100万ドルの人に比べて投資先の選択に多くの時間を費やさなければなりません。
つまり、何を重視するべきかは、その時点の経済状況次第であるということです。投資資産が少ないなら、貯金を殖やすことに注力すべきだし、既に大きな投資資産があるのなら、投資計画に時間を費やした方が良いということです。
あなたの場合
では、自分がこの「貯金か投資か」の問題のどの地点にいるのか、どのように判断すれば良いでしょうか。次の簡単な計算式を参考にしてください。
1.今後1年間に無理なく貯金できる額を算出する。 2.今後1年間に予想される投資収益を決定する。 3.1と2の数値を比較する。
1の方が多い人は貯金をふやすことに集中し、2の方が多い人は、所有している投資資産の配分調整に多くの時間を割くべきです。一般的には、年齢とともに焦点は貯金から投資へと移っていきます。
どのくらい貯金すれば良いのか
グーグルで「どれくらい貯金すればいいか」と検索すると、「収入の2割を貯金しよう」、「最低でも収入の1割は貯金に回すべきだ。出来れば2割、3割まで伸ばそう」等というアドバイスが表示されます。
これらの主張には共通する誤った前提があります。まず、長期的に安定収入が見込めることを前提にしています。第2に、どの収入レベルの人も同じ割合で貯金できることを前提にしています。しかし研究結果は、これらの前提の正しさを証明していません。
例えば、「所得動態に関するパネル調査」のデータによると、近年多くの人達の所得が不安定になっています。また連邦準備制度理事会(FRB)や全米経済研究所(NBER)の研究によると、下位20%の所得者は毎年収入の1%を貯金し、上位20%の所得者は24%貯金し、更に上位5%の所得者は37%を、上位1%の所得者は51%の所得を貯金しています。つまり、富が増えれば増えるほど貯蓄率も増えるのです。
これが、「収入の2割を貯金しよう」といった貯金に関するアドバイスが見当違いである理由です。では、私たちはどのくらい貯金すればいいのでしょか。
貯金をたくさんできる時はそうする、そうでない場合は少なく貯金をするということです。このアドバイスに従えば、ストレスが大幅に減り、幸福度も格段にアップします。
米国心理学会によると、『ストレス・イン・アメリカ』が2007年に調査を開始して以来、景気の状況に関わらず、米国人の1番のストレス要因は一貫してお金です。また研究から、経済的な苦しさより、貯蓄率の低さからくるストレスの方が悪影響を与えることが分かっています。ストレスを感じない形でやってこそ初めて多く貯金が出来るのです。
貯金額の決め方
自分がどれくらい貯金が出来るかは、次の単純な方程式に従えばいい。
貯金 = 収入 ー 支出(=固定費+変動費)
正確な支出額を計算するのは手間なので、固定費と変動費に分けて毎月大体どれくらい貯金できるかを把握するのでお勧めです。人はお金が足りないことを心配していると、簡単に理性的な思考を忘れてしまうからです。
米国の成人1,000人に「お金持ちだと思われるにはどのくらいのお金が必要か」と尋ねると、平均額は230万ドルになります。しかし、同じ質問を百万長者1,000人にすると、その額は750万ドルに跳ね上がります。つまり人はいくら豊かになっても、まだ十分ではないと感じるのです。
貯金しすぎている可能性がある
引退して年金生活を始めたばかりの人にとって大きな心配事は、お金を使いすぎて老後資金がなくなってしまうことです。しかし実際には、それとは逆の事実を示す圧倒的なデータがあります。
テキサス工科大学の研究によると、年金受給者の資産は、老後生活期間中に使い果たされるより、変化がないか、むしろ増えています。インベストメント&ウェルスインスティテュート社は、米国で1年間に資産を減らした年金受給者の割合は、7人に1人前後しかいないと報告しています。さらにユナイテッド・インカムの調査によると、年金受給者の死亡時の年齢別平均遺産額は、60代で29万6,000ドル、70代で31万3,000ドル、80代で31万5,000ドル、90代で23万8,000ドルです。
つまり年金受給者にとって、実際にお金がなくなることよりも、お金がなくなることの恐怖の方が大きな脅威だと言えます。
貯金に関する重要な2つの答え
連邦準備制度(FRS)の資産に関する統計によると、同年齢の時点で比較すると、1人あたりの資産は、ミレニアル世代(1980~1990年代半ば生まれ)と、ジェネレーションX世代(1965~1975年生まれ)、ベビーブーマー世代(1950~1964年生まれ)で同等です。
つまり、ミレニアル世代が資産を築くペースはこれまでの世代よりも遅いわけではなく、全体的に見れば、メディアで日常的に報道されているほど悲観的なものではありません。社会保障面でも自体はそれほど深刻ではありません。そのため、自分たちが思っている以上に貯金する必要はありません。
「出来る範囲で貯金する」と「自分が思っているほど貯金する必要がない」が、「どれくらい貯金すべきか」という質問に対する重要な2つの答えになります。
参考文献:ニック・マジューリ 著 『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(発売日:2023年6月28日)
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