米国史上最高額の宝くじに当選した男の末路
2002年、ジャック・ウィテカーは、単一の宝くじとしては米国史上最高額となる3億1400万ドル(税引後1億1,300万ドル)を受け取りました。しかし、賞金を手にしてから2年も経たないうちにジャックの孫娘が薬物の過剰摂取で亡くなり、ジャックはギャンブルや娼婦に湯水のごとくお金を使うようになり、妻とも疎遠になり、酒に酔って車を運転するのも当たり前になり、結局賞金は全てなくなりました。
宝くじの当選者が道を踏み外すのはよくある話ですが、ジャックのケースが少し他と異なるのは、彼が宝くじに当選する前から既に1,700万ドル以上の資産を持つお金持ちだったことです。社長として事業で大きな成功を収め、既に多額の報酬を得ていました。
ここから分かるのは、十分な良心、経歴、分別のある人でさえ、お金で人生を破綻させることがあるということです。お金はこれほどまでに、人を変えてしまう魔力があります。
もしジャックが、既に自分が十分に裕福だと気づいていたら、こんなことにならなかったでしょう。しかしジャックは自分のことをお金持ちだと思っていませんでした。なぜなら、1,700万ドルもの資産を持っていたのに、宝くじを買っていたからです。
億万長者でも「自分は金持ち」と実感できない理由
「億万長者になったら、自分はお金持ちだと実感できるはずだ」と考えている人は多いかもしれません。しかし現実には必ずしもそうではありません。
例えば、ゴールドマン・サックス元CEOで億万長者のロイド・ブランクファインは、2020年2月のインタビューで、莫大な資産を持っているにもかかわらず、「自分はお金持ちではない」と語っています。彼が接する機会が多いのは、ジェフ・べゾスやデビット・ゲフィン(米国のレコード会社経営者、映画プロデューサー)のような大富豪が多く、レイ・ダリオやケネス・グリフィンといった金融界の大物と同じ世界に生きていると、10億ドルは大した資産に思えないはずだからです。しかし客観的に見れば、ブランクファインは米国のトップ0.01%のお金持ちです。
このように「実際は裕福なのにそうだとは思えないという問題」を抱えているのはブランクファインだけではありません。所得層の上位に位置する人の大半は、実際より自分はお金持ちではないと考えています。もっと裕福な人の存在は、いくらでも目に入ってくるからです。
一番重要な資産
「この中で、ウォーレンバフェットと自分の人生を今すぐ交換してもいいという人はいないはずです - たとえ、それによって彼の全財産が手に入るとしても。バフェットも、全財産を失うことと引き換えに20歳に戻るかと尋ねられたら、すぐに『ぜひそうしたい』というでしょう」
(by ピーターアッティア)
この質問について考えた時、お金より時間の方がはるかに価値があると直感的に理解できるのではないでしょうか。時間があれば、お金では絶対に出来ないことも出来ます。お金は後からでも稼げますが、時間は取り戻せません。
なぜ、50代で人生が好転するのか
ほとんどの人の幸福度は、20代後半で低下し始め、50歳の時に底を打ち、その後増加すると述べています。つまり生涯の幸福度はU字カーブのようになります。
しかし、なぜ20代後半から幸福度は下がり始めるのでしょうか。それは、歳をとるにつれて、人生が高い期待に応えにくくなっていくからです。
「若者は常に将来の生活満足度を過大評価している。これはとてつもなく大きな誤差になりうる。近い将来、シアトルに住み、毎日日光浴をして暮らしているような未来を期待している。20代の若者は、将来の生活満足度を平均して約10%過大評価している。だが、時間の経過とともに、この過度の楽観主義は薄れていく。ただし、人は落ち込むわけではない。現実的になっていくのだ。」
(by ジョナサン・ラウシュ)
しかし50歳前後を境に、今度は期待しているよりも実際の生活満足度が高いという嬉しい驚きの時期がやってきます。私たちは、自分が思っている以上に人生が豊かなものであることに気づいていきます。
参考文献:ニック・マジューリ 著 『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(発売日:2023年6月28日)
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