私たちは1人ひとり異なる複雑で陰影に富む性格(パーソナリティ)を持っていますが、それはいくつかの基本的な要素に還元できることも分かってきました。これはパーソナリティ心理学では「ビッグファイブ(パーソナリティの5因子)」と呼ばれていて、「外交的/内向的」「楽観的/悲観的」「協調性」「堅実性」「経験への開放性」のことです。その意味では、「私」はこれらの要素の組み合わせでしかありません。
なお、橘玲著『スピリチュアルズ』では、ビッグファイブの「協調性」を「同調性」と「共感力」の2つに分け、更に「外見」と「知能」を加えた8つの因子でパーソナリティを説明しています。
「外見」をパーソナリティの1つとすることに違和感を覚える人もいるかもしれませんが、「外見と性格は別」というのは、「政治的に正しい」イデオロギーによるものであり、パーソナリティ=キャラが、外見から大きな影響を受けるのは否定できないでしょう。また「外見」と同様に、ビッグファイブ理論には入っていないものの、極めて重要なパーソナリティが「知能」です。私たちが生きている「知識社会」は、定義上、高い知能に特権的な優位性が与えられている社会です。知能が高いものが社会的・経済的に成功する(可能性が高くなる)にもかかわらず、ビッグファイブだけで「どのようなパーソナリティが成功できるか」を論じても意味がありません。
これが「他者と出会った時(無意識に)注目する8つの要素(ビッグエイト)」で、そもそも人間はそれ以外の事を気にするようにはできていません。
①明るいか、暗いか(外交的/内向的) ②精神的に安定しているか、神経質か(楽観的/悲観的) ③みんなと一緒にやっていけるか、自分勝手か(同調性) ④相手に共感できるか、冷淡か(共感力) ⑤信頼できるか、あてにならないか(堅実性) ⑥面白いか、つまらないか(経験への開放性) ⑦賢いか、そうでないか(知能) ⑧魅力的か、そうでないか(外見)
・・・初対面の相手に対して、他に興味を持つことがあるでしょうか。
ビッグファイブに対する批判としてよく見かけるものに、「ナルシシズム(自己愛)」が入っていない」があります。しかし、もし自己愛がない人がいるとしたら、重度のうつ病に苦しんでいる可能性が高い。自己愛がない人間がいると考えること自体が荒唐無稽なものだと言えます。
だとしたら、パーソナリティとして問うべきは、「ナルシシズム」が前面に出ているか、隠れているかの違いでしょう。そしてこの「隠蔽」に関与するのが、協調性(同調性+共感力)や堅実性など、ビッグファイブの中の「向社会的感情」です。これらの特性が全て低いのは「非社会的」なパーソナリティであり、ナルシシズムを抑えることが出来ません。
また社会心理学で重要な論点となっている「自尊心」は、パーソナリティではなく舞台の出来栄えで決まります。自尊心が高いのは、「人生という物語」においてキャラと舞台がうまく合っていて、観客から高い評価を獲得できているからです。逆に自尊心が低くなるのは、舞台で失敗して観客からブーイングを浴びたからです。そして自尊心が安定しているか不安定かは、ビッグファイブの神経症傾向(楽観的/悲観的)で説明できるでしょう。
参考文献:橘玲著『スピリチュアルズ』(発売日:2023年8月4日)
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