多くの人にとって老後の最大の不安は、「健康」を別格とすると、やはり「お金」でしょう。サラリーマンであればお金の問題は過剰に心配することはないと、こちらの記事で書きましたが、頭では分かっていても気持ちの上では、それでもやはり不安という人は多いと思います。
ではどうすれば老後の不安を完全に解消することが出来るでしょうか。答えは簡単で、「老後をなくせばいい」のです。老後というのは、年齢で区切るのではなく、仕事を辞めて完全に引退した後のことを言います。
70歳まで働くのは不思議ではない
55歳で定年といっても、平均寿命が60歳そこそこであれば、残された人生は5年しかありません。しかしながら、現在では男性でも平均寿命が81歳を超えています。仮に60歳が定年だとしても、そこから20年以上もの時間があるのです。
公的年金もありますので、60歳あるいは65歳で仕事を完全引退しても日常生活に困るということはあまりないと思います。ただ、「働く」ということに対する考え方が変わっても良いのではないでしょうか。
今の仕事が楽しいという方は、60歳以降も現在の会社で仕事を続ければいいと思います。最近では少なくとも65歳、場合によっては70歳まで会社に残って仕事を続けることが出来ます。
今の仕事が楽しくない方は、生活のために仕事をするのではなく、「楽しむために仕事をする」という発想をしてみてはいかがでしょうか。例えば60歳を過ぎての独立は、決してリスクは高くありません。30代や40代で独立するのと違って、生活のために稼がなければいけないわけではないので、仕事がなければ辞めてしまえばいいのです。
長く働くメリット
長く働くことの最大のメリットは、3大不安(病気、貧困、孤独)がある程度解消されるというところにあります。
① 孤独
世の中の多くの仕事は自分1人だけの作業で行うわけではなく、様々な人と連携しながら進めていきます。働いていれば、連携とか連帯というつながりによって、孤独に陥ることが少なくなります。
② 健康
働くということは、程度の差こそあれ、多少のストレスはかかってきます。軽いストレスであれば、それを解決したり乗り越えたりするときの満足度が幸福感をもたらしてくれるという面があります。
③ 貧困
生活費を補うために働くというケースはおそらくそれほど多くはないと思います。「遊ぶために働く」「楽しむために働く」のです。そのため、収入は少なくてもいいのです。
長く働くことによるお金面での最大のメリットは「年金」です。i) 厚生年金の加入期間が長くなることによる増額と、ii) 年金の受給開始年齢を65歳から70歳に繰り下げることによる増額というダブルの恩恵があります。特に繰り下げ効果は大きく、5年間(70歳受給開始)で42%増、10年間(75歳受給開始)で84%増です。
50歳になったら成仏しよう
成仏するとは、会社における地位や立場に対するこだわりを捨てるということです。
サラリーマンにとっては仕事で頑張って昇進するのが目標という方は多いと思います。昇進すれば給料が増えるからということもありますが、それ以上に自分の権限や責任が大きくなることについて、高い満足を得ることが出来るからだと思います。30代~40代ぐらいまでは出世に励むのも良いかもしれませんが、50代にもなると、はっきり言ってもう勝負はついています。だからこそ、そこから気持ちを切り替えた方がいい。それが成仏するということです。
成仏する、すなわち気持ちを切り替える必要があるのは、定年後の人生が昔よりもはるかに長くなったからです。早く成仏しないと、定年後の長い人生を幸せに過ごすことが出来なくなるからです。
50代でも仕事を頑張る
50歳になると、それまでとは違って働きづらくなることは事実でしょう。その理由は、①働き盛りは30代~40代であること、②役職定年があり、責任ある立場を離れること、③体力が衰えること等があります。
しかし、仕事は今まで以上に頑張るべきです。長く働こうということなら、再雇用では無理だからです。再雇用では、多くの場合65歳までしか雇用されません。65歳以降も働こうとすると、定年後に他の企業へ移ったり、自分で事業を始めたりすることが必要です。
そしてシニアの転職で最も重視されるのは「専門性」です。それが技術であれ、営業であれ、庶務業務であれ、どんな種類の仕事でも高い専門性を持っていることがとても重要です。そのため、50歳からは自分の仕事の専門性に磨きをかけていけばいいのです。
「壁」は気にしない
長く働くことは人生において色々な面で非常に重要ですが、これと同じぐらい、あるいはそれ以上に重要性が高いのが、パートナーがいる場合の「共働き」であることも疑う余地がないと思います。共働きには、経済的には2つの大きなメリットがあります。
まずは生涯賃金の違いです。夫婦が共に正社員で働いた場合と、女性がその間ずっと専業主婦であった場合とを比べると、2億円余りの差が生じます。(参考:『専業主婦は2億円損をする』)
そして年金受給額の違いです。厚生労働省が発表している2023年度のモデル年金額は月額22万4,482円ですので、仮に年金を65歳から90歳まで受給する場合、累計額は約6,734万円になります。これが共働きの場合、月額約27万9,000円ですので、累計額は約8,370万円になります。やはり「共働き」は最強なのです。
また、これまでは専業主婦が働くと言えば、パートで配偶者控除が適用される限度額や社会保険料の負担が発生しない範囲、俗に言われている「〇万円の壁」を超えない働き方をするのが一般的でした。これからは、こういう「壁」は気にせず積極的に働いた方が良い時代になりそうです。
確かに壁を越えて働いた場合、社会保険料の負担は増えます。しかし、それによって厚生年金が受け取れることになります。106万円をぎりぎり超えるかどうかというところであれば意図的に抑えるのもありでしょうが、もし積極的に働ける機会があり、もっと稼げるのであれば、稼いだ方がずっと得です。法律や税制は今後も変わっていきます。
「職業の道楽化」が人生最高の幸せ
「人生の最大幸福は『職業の道楽化』にある」
(by 本多清六著『私の財産告白』)
仕事が楽しみになれば、人生でこれほど幸せなことはないということです。
在職中に副業で始めてみるのもよし、定年後にのんびりと準備して起業するのも良し、あるいは今から定年までの間に社外の人とのつながりを作って、そこから転職するのもいいでしょう。「組織人」としての軛から離れて、自分によって楽しい仕事を見つけるというのも、50歳からの大いなる楽しみと考えるべきです。
参考文献:大江 英樹著『50歳からやってはいけないお金のこと』(発売日:2023年5月16日)
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