最大の脅威は円安の長期化
日本株投資にとって、最大の脅威は円安の長期化です。
日本人は、2023年6月末時点で2,115兆円の個人資産を保有しており、そのお金の97%が円建てで資産運用されています。53%は預貯金です。株式で運用されているのは12%、外貨建てで運用されているのが3.5%程度です。2000年時点では、この外貨建て運用比率は0.9%でしたので、20年かけてそれが約4倍になりました。
そしてここ数年、日本人投資家は熱心に米国株で運用するようになっています。この流れが危険なのです。1,000兆円のキャッシュの何割かがドルにかわったら、ひどい円安になります。
円安は、日本人の円売りにもつながるので、円安を加速します。日本人の間に円離れが起きてしまったら、新NISAの導入は「本末転倒」でしかなくなります。円が外貨に雪崩れ込んでいったら終わりなのです。
円安株高は大いなる誤解
今の円の実力は、1ドル=360円時代よりひどい有様です。こうした無残な状況を作ってしまっている要因は、主に金融政策によるものです。日本円を魅力的な通貨に戻さないと、本末転倒、全てが崩れてしまいます。
円安になれば日本株は上がると誤解されている人が多いですが、円安が続けば、むしろ日本株は上がらなくなります。日本人は日本株を買わないといけないのです。日本で眠っている2,115兆円の何%かを、日本株に向けて欲しいわけです。
今日本人は少しずつインフレ脳になってきているところです。それに加えて、日本円はダメだと、日本人に浸透しつつあります。あなたは日本円をトルコリラのようにしたいのでしょうか?円安容認、円安歓迎の流れを是が非でも断ち切らなければなりません。
都内の1億円越え物件が買い占められる背景
トルコもそうですが、実質金利が大きくマイナスになっている国では結局、お金は「不動産」に向かいます。つまり、それしか手立てがないほどお金が目減りするのです。
資産家は、そこをしっかり理解しています。お金がひどく目減りしているフェーズでは、株式ではなく不動産を買います。そのため、当然不動産価格は上がります。今、日本で不動産価格が、特に都心を筆頭に大都市部で高騰している原因はこれです。これにより、局地的な不動産バブルが起きます。港区、中央区、千代田区あたりのプライムロケーションの物件だけはなく、これまで比較的安かった品川区、大田区、江東区などの物件のほとんどが、1億円を超えています。
資産家が不動産を何件も買い占める理由は、実質金利が大きくマイナスに陥っているからです。日本の今のコアコアCPI(エネルギーと生鮮食品を除く消費者物価指数)は4%前後で推移している一方で、政策金利はマイナス0.1%ですので、実質金利はマイナス4.1%前後です。この状態に、お金を持っている人達は焦りに焦りるので、株などは見向きもせず、とにかく不動産を買うことに奔走し、不動産バブルを作ってしまいます。
「日本円のトルコリラ化」が起きると何が起こるでしょうか。トルコでは、リラ安が続く中、外国資本の大半がトルコ株から撤退しました。だから今のトルコ株はトルコ人が買っているだけです。日本の場合も、今後も円安政策を続ける、あるいは加速させるならば、外国から日本に資本が来なくなります。なおかつ日本人の資本が外国に逃げます。
ゼロサムの世界ではない株式市場
バブル崩壊後の日本では、適切な金融政策、財政政策が打たれなかったために、景気は低迷を続け、長期的に株価が低迷し続けました。30年も賃金上昇がなかったというのも先進国では珍しいですが、30年日経平均が過去最高値を更新できずにいることも世界的に非常に珍しい事象です。
私たち日本人は、こうした不幸な経験をしてしまったがために、その「トラウマ」で投資は損をするものだという認識を植え付けられてしまいました。しかし、インフレの時代には当然ながら資産価格は上がるので、誤った政策さえとらなければ必ず株価は上昇していくものです。
株式投資の長所を一言でいえば、株式市場は「ゼロサム」の世界ではないということにつきます。世界経済は常に伸びています。スランプに陥る期間があるにせよ、それは短くて、基本的にはずっと伸び続けています。ゼロサムとは、誰かが勝ち、誰かが損を被らなければなりませんが、株式市場はそうとは限りません。全然違います。
企業が付加価値を高めて魅力あるビジネスを展開すれば、収益が上がり成長します。すると株価が上昇するのが自然です。ゼロサムゲームではないので、株式投資では皆が儲かる構図も描けます。
アベノミクス・黒田日銀の登場で日本株が上がり始めました。ようやく私たち日本人も「トラウマ」から脱却できそうです。若い世代はこのトラウマがありませんので、抵抗なく株式市場に参入できているようですが、株式投資は危ないという考え方に縛られている世代の方も、一歩踏み出してください。資本はインフレとともに膨らんでいくのです。
参考文献:エミン・ユルマズ、大橋 ひろこ著『無敵の日本経済! 株とゴールドの「先読み」投資術 』(発売日:2024年2月21日)
Amazon
にほんブログ村
投資信託ランキング