金融広報中央委員会より、令和3年度(2021年度)の家計の金融行動に関する世論調査が発表されました(2022年2月14日)ので、関連データと合わせ、以下の4つのポイントで中身を見ていきます。
家計の金融行動に関する世論調査について
「家計の金融行動に関する世論調査」は、(1)家計の資産・負債や家計設計などの状況を把握し、(2)家計行動分析のための調査データを提供することを目的として、金融広報中央委員会が、昭和38年から毎年実施している調査です。
金融広報中央委員会とは、都道府県金融広報委員会、政府、日本銀行、地方公共団体、民間団体等と協力して、中立・公正な立場から、暮らしに身近な金融に関する幅広い広報活動をするための組織です。
金融資産の平均値と中央値(二人世帯・単身世帯)
2021年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、二人世帯と単身世帯それぞれにおける、金融資産の平均値と中央値は以下の表のとおりです。
なお、本調査における「金融資産」とは、「運用または将来に備えて蓄えている部分」です。事業のために保有している金融資産や、土地、住宅、貴金属等の現物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分は除きます。
また前年(2020年)と比較すると、金融資産の平均保有額が増加していることが分かります。(二人以上世帯では127万円、単身世帯では409万円それぞれ増加。)これは、2020年の調査対象が世帯主が20歳以上70歳未満だったのに対し、2021年の調査対象は世帯主が20歳以上80歳未満であることも関係しています。
金融資産保有額の分布
単身世帯、二人以上世帯のそれぞれの金融資産保有額の分布は次の通りです。
単身世帯は、先ほどの<2021年 金融資産保有額>の図の通り、平均値1,062万円、中央値100万円ですが、分布をみると、金融資産を保有していない、将来のために何ら蓄えをしていない世帯が圧倒的に多いということが分かります。
二人以上世帯は、先ほどの<2021年 金融資産保有額>の図の通り、平均値1,563万円、中央値450万円ですが、分布をみると、単身世帯と同じく金融資産を保有していない、将来のために何ら蓄えをしていない世帯が圧倒的に多いということが分かります。
※このデータは、「家計の金融行動に関する世論調査」の調査対象である、二人以上世帯5,000、単身世帯2,500、合計7,500世帯の金融資産の分布を表したものです。
ミクロデータとマクロデータの乖離
「家計の金融行動に関する世論調査」は、標本数が7,500しかないミクロデータですが、野村総研が出している下図の日本の富裕層に関するデータは、マクロデータを元に推計されたものです。
上図を表にしたのが、下図です。
2019年データなので少し古いのですが、これによると1世帯当たり平均純金融資産は約2,876万円です。つまり、ミクロデータでの「金融資産」の平均値1,563万円や1,062万円と、野村総研が元にしているマクロデータでの「純金融資産」の平均値2,876万円には、相当大きな乖離があるといえます。
この理由としては、以下が考えられます。(参考:野村資本市場研究所|富裕層の実像を探る(PDF) (nicmr.com))
- ミクロデータには、事業用金融資産が含まれていない
- ミクロデータには、家計が意識していないため年金準備金が含まれていない
- ミクロデータでは、超少数の超富裕層が標本(サンプル)に入ってこない
日本の1世帯当たり平均純金融資産は、マクロデータの方がより正確だと考えられますので、「家計の金融行動に関する世論調査」のデータの平均値をそのまま鵜呑みにせず、一つの目安として参考にするのが良いと思います。(中央値、分布等はミクロデータでも参考となると思います。)