あまり収入が高くない人でも幸せな人がいる一方、人が羨むような高収入を得る人でも不幸な人はいます。
世間では、「お金をどうやって手に入れるのか」という悩みを抱えている人が多いですが、「お金を何に使ったらいいのか」と悩んでいる人はほとんどいません。
そのため、「お金をどうやって手に入れるのか」に関する書籍、番組等は多い一方、「お金を何に使ったらいいのか」に関するものは多くありません。
しかし、「お金をどうやって手に入れるのか」よりも、「お金を何に使ったらいいのか」の方が難しく、大事だと思います。なぜなら、私たちが幸せになるか不幸になるかに直結する問いは、「お金を何に使ったらいいのか」だからです。
「お金を何に使ったらいいのか」を考えるヒントとなるお話を3つご紹介します。
宝くじに当たった人の人生
宝くじに当たってから身を持ち崩す人は多いといわれていますが、ビリー・ボブ・ハレル・ジュニアはその一人です。
彼が47歳の時、テキサスの宝くじで3,100万ドル(約40億円)が当たります。それまでは、奥さんと3人の子供たちを養うつつましい生活をしていましたが、それが一変します。仕事を辞め、ハワイに移住し、車や家を次から次へと買います。そして、親戚にお金を配り、慈善団体に法外な寄付をします。そのうち、彼に関係のない人たちまでが、どんどん寄ってきて、やがて電話番号も変えなければならなくなりました。そしてある時ある会社ととんでもない契約を交わし、大失敗をします。これにより、当選から1年後に奥さんと離婚、家族と離れて暮らすことになり、それから1年後に自殺します。彼は亡くなる直前、「宝くじの当選が、人生で最悪の出来事だった」と、ファイナンシャルプランナーに言っていたそうです。
このような、宝くじに当たった人が身を持ち崩す話というのは、アメリカだけでなく日本でも良く知られています。このような話を聞くたびに、私たちは「自分ならこんなバカなことはしない」と思う人は多いと思います。「3,100万ドルもあれば、ある程度贅沢するものの、ちゃんと老後の資金まで蓄えて貯金や投資をしてうまく運用するよ」と。しかし現実として、多くの宝くじに当たった人が身を持ち崩しています。これは、いかに「お金を何に使うのか」ということに無知であるのかということです。
(参考:まさに天国から地獄…巨額の宝くじに当選して人生を破滅させた10人 – ライブドアニュース (livedoor.com))
極端に投資し続けた人の人生
お金の使い方は、大きく分けて3つあります。浪費、消費、投資です。
先ほどの宝くじに当たった人のように浪費に使ってしまえば、後悔するでしょう。
消費は、衣食住の生活費ですので、生きていく以上当然かかってくるものです。
ではその生活費分の消費以外の金額を何に使うと良いのでしょうか。
浪費に使うか、投資に使うかでその人の人生が別れるのだということは、良く言われます。
お金の一番賢い使い方というのは、お金でお金を儲けることなのだという方は、結構いると思います。しかし、極端に投資のためにお金を使う生き方は、本当に賢い人生と言えるのでしょうか。
ヘティ・グリーンさんは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した投資家です。世界でもっとも資産を持つ女性であり、その投資手腕や風貌などから、「ウォール街の魔女」と呼ばれました。生涯投資で稼いだお金は1億2,000万ドル(現在の日本円の価値に換算すると約1兆円)という当時世界屈指の財産を持っていたにもかかわらず、常軌を逸したケチであったことでも有名で、ギネスブックにも「世界一のドケチ」として掲載されました。
- 真っ黒なドレス1着を20年間も愛用したと言われ、冷える日にはドレスの下に新聞紙を詰め込んで防寒していたそうです。「黒」の理由は、汚れても目立たないから。
- 光熱費が勿体ないからと、主に冷たいオートミールを食べていました。
- 息子が足のケガをした時に、医療費が勿体ないということで無料診療所を訪ねていくうちに、ケガはどんどん悪化していき、ついには切断しなければいけない状況になってしまいました。
- 夫の浪費癖に我慢が出来ず、彼を追い出します。別居後、彼女は夫の財産を取り上げ、最低限の生活費を送るのみで、正式離婚に至ります。
- 彼女自身もヘルニアを患っており、激痛だったらしいのですが、医者に行くお金がもったいないということでいつも我慢していたそうです。
このように倹約に倹約を重ねた結果、莫大な遺産を残して亡くなりました。
彼女の息子さんはというと、莫大な遺産を引き継ぎ幼い頃の極貧生活の反動からか、放蕩にふけるようになり、伝説的浪費家として名を残すことになりました。
この人の話を聞くと、一体何が楽しくて生きていたのかと思いませんか?彼女はきっと、貯金通帳の残高がどんどん増えていくのが快感であり、それによって安らぎを覚えていたのだと思います。お金を投資して、さらに大きなお金を得て、それを元手にまた大きなお金を得て・・・ということを繰り返してきたのですが、果たしてこれも、お金の使い道として良かったのか、考えさせられます。
ラ・フォーンティーヌの寓話
ラ・フォンティーヌの寓話は、17世紀フランスの詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌが、イソップ童話をはじめ、インド、ペルシア、東洋の寓話を素材として制作した、約240編からなる大寓話詩集です。その中にこんな寓話があります。
あるところに、何の贅沢もせずにお金を貯めることを生きがいにしていた男がいました。そして貯めたお金を山の中にもっていって、山の奥深くの隠し場所に隠していました。そして時々その山に行ってはお金を見て楽しんでいました。ところがある日、その山の中のお金が盗まれてしまいます。泣き崩れて嘆き悲しんでいる男(A)のところに、もう一人の男(B)が寄ってきて、「どうしたんだ?」と尋ねました。
A「お金を盗まれてしまったんだ。」
B「どうしてこんな山の中にお金を隠したんだ?家の中においていれば、そのお金はすぐに使えたのに。」
A「使うなんてとんでもない。使ったら減ってしまうじゃないか。」
B「それなら、盗まれた金の代わりに石を置いて隠しておいたらどうだ?使わないお金なら同じことだろう。」
お金は貯めるためにあるものではなく使うためにあるものであり、使わないお金はそこらの石ころと同じではないかという、なんとも風刺のきいた話です。