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お金で幸福は買えませんが、幸福になるためにお金は欠かせません。
ただし、単純にお金を増やすことにエネルギーを費やすことは本末転倒であり、自分が求める将来像を設定した上で、そこに到達するためのプランを考えること、年金のことを考えておくことが大切です。
以前、金融審議会・市場ワーキンググループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容により、老後資産として2,000万円が必要だということで大騒ぎになりました。この報告書では、平均収入・支出の状況をもとに年代ごとの金融資産の変化を推計し、男性65歳以上、女性60歳以上のモデル夫婦が年金依存した生活を送ると月約5万円の赤字が出るため、30年で2,000万円が不足するというものでした。
数字ばかりが独り歩きするのもいかがなものかと思いますが、自分がどのような年金受給者であり、受給開始年齢を何歳といた場合にどの程度の生活水準となるのかということを予め知っておくことが大切です。
そこで、日本の年金制度と投資税制についてご紹介します。
年金制度
日本の年金制度が「3階建て」ということを耳にしたことがある方は多いと思います。ただし、全ての人に3階建ての構造が当てはまるわけではありません。
下図が年金制度の全体の構造です。
1階部分
年金制度の基盤は、1961年に国民皆年金政策に基づいて始まった「国民年金」です。
国内の居住者の内、20歳以上60歳未満の全員が被保険者となり、雇用や扶養の状況に応じて、次の3つの区分に分かれます。
- 第1号被保険者(自営業者など)
- 第2号被保険者(会社員、公務員等)
- 第3号被保険者(第2号被保険者の扶養配偶者、つまり会社員等の妻等)
そしてそれぞれの加入者は、保険料を納めた期間や免除された期間が合計10年以上などの受給資格を満たせば、「老齢基礎年金」が受け取れます。
国民年金保険料(2021年度の月額保険料は16,540円)は毎月又は一括で支払うことになっていますが、学生は免除申請を行うことで支払いをする必要がなくなります。
また第2号と第3号の被保険者は、厚生年金保険の保険料と一緒に合算して毎月徴収されます。つまり、国民年金保険料として保険料を納めることはありません。なお、厚生年金保険の保険料は、雇用主(会社等)が半分負担してくれるので、被保険者は残りの半分を負担することになります。
受給開始年齢は65歳ですが、60歳から繰り上げで受け取ることが出来ます。ただし、この場合は受給額が減額されます。また、75歳まで受給開始年齢を繰り下げることも可能です。この場合は受給額が増額されます。
なお国民年金保険の満額は、令和4年度(2022年度)において、月額64,816円です。(参考:令和4年4月分からの年金額等について|日本年金機構 (nenkin.go.jp))
2階部分
基礎年金に追加されるのが2階部分で、自営業者などが加入を選択できるのが「国民年金基金」です。1階部分の「国民年金」と名称が似ていますが、異なるものです。
この年金は、第2号被保険者のように、国民年金に上乗せして厚生年金に加入している人との年金額格差を解消するために、1991年に創設されました。
企業で働く従業員や公務員、私学教職員の人達にとっての2階部分は、「厚生年金保険」です。基礎年金の上乗せとして、所得(報酬)に比例して老齢年金を受け取る制度です。
なお、「国民年金基金」が任意加入であるのに対し、厚生年金保険は強制加入となります。
こちらも、65歳から基礎部分の老齢基礎年金と厚生年金部分である老齢厚生年金を受給可能となりますが、繰り下げや繰り上げも可能です。
3階部分
公務員等については、「退職等年金給付」が3階建て部分に該当します。
元々、「共済年金」等の制度がありましたが、2015年の「被用者年金制度の一元化」に伴い、現行の制度に変更されました。
民間企業の従業員が対象の企業年金は、次の3種類の制度が3階建て部分に加わります。
① 確定給付企業年金
これは、企業が独自の年金基金等を通じて従業員に一定の決まった年金額を給付する制度で、企業年金を設立する「基金型」と、年金規約に基づき実施する「規約型」の2種類があります。
② 確定拠出年金
これは、DC(Defined Contribution)プランとも呼ばれ、企業の年金規約に基づく制度です。
①の確定給付型とのとの違いは、従業員自身が資産運用の選択を行う制度で、運用の結果責任は従業員が追うものです。
③ 厚生年金基金
これは、①の確定給付企業年金と同じく確定給付型の年金制度です。①と異なる点は、企業や業界団体等が厚生労働大臣の許可を受けて設立する「厚生年金基金」が年金資産の管理・運用を行う点です。
国の年金給付の内、老齢厚生年金の一部を代行しながら、厚生年金基金独自の上乗せを行います。
この代行部分が存在している理由は、運用額がまとまった金額になることで運用の効率性が向上すると考えられたからです。
しかし、この代行部分も企業の決算上の負債に計上されるようになったこともあり、代行部分を返上し、多くの厚生年金基金が①の確定給付企業年金へ移行しました。
※厚生年金基金制度は2013年の法改正に伴い、2014年4月1日以降の新規設立は認められなくなりました。
④ 個人型確定拠出年金(iDeCo)
これは、個人事業主、会社員、公務員、主婦(主夫)を含む全てを対象とする年金制度です。
個人型確定拠出年金は2001年に導入された制度ですが、その根拠法である確定拠出年金法が2016年に改正されました。改正ポイントは、ほぼ全現役世代を対象とした制度となった点です。
iDeCoは、それぞれの人が加入済みの年金制度に上乗せして老後の資金を得る目的で設計されたもので、自らが拠出した掛け金を、自らの選択で運用、その果実を老後に受け取る制度です。
掛け金は60歳になるまで拠出し、以降老齢給付金を受け取ることが出来ます。
iDeCoとNISAは、それぞれ課税上のメリットがるため、同様の制度との誤解が生じている場合がありますが、本質が異なります。
共通しているのは、運用で得られた利益である「金融所得」に対する課税が免除されている点です。
相違しているのは、NISAが運用後の資金を自由に使える一方、iDeCoは60歳まで引き出すことが出来ません。他方、iDeCoは掛け金そのものが給与所得などから控除されるため、老後資金としての認識であれば、大きな税制上のメリットを享受できます。
なお、法改正により、2022年からは年齢要件が撤廃され、国民年金被保険者であることのみが主な加入要件となりました。
本日のオマケ
私の本日の取引
1.日本株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う