Column
「今の世の中の相場の仕組みの最大の問題は、世界経済が巨大なキャリートレード化していることだ」と、Tim Lee, Jamie Lee, Kevin Coldiron共著『The Rise of Carry』には書かれています。
キャリートレードとは、金利が低い通貨でお金を借りて、金利が高い通貨に投資することです。日本の投資家が、FXにおいて日本円でトルコリラ等を買うのは、典型的なキャリートレードと言えます。また日本の銀行も、日本円で集めたお金で、政策金利の高いトルコ、オーストラリア、南アフリカ、ブラジルなどの国債を買う等をします。
日本の金利が限りなく0に近いため全く利益が取れないのに対し、金利の高い国の国債を購入すれば金利の差額で儲けられます。さらに短期的には、政策金利の高い国にお金が集まるので、その国の通貨は能力以上に上昇します。そうすると、金利の差額で儲け、為替差益でも儲けられるという2度おいしい状況が出来ます。これは1990年代から盛んに行われてきており、日本円でのキャリートレードが流行っていました。
しかし、キャリートレードはいつまでも続くものではなく、いつか必ずクラッシュします。
理由は、「短期的に儲ける」意図をもってそのトレードが行われているだけであって、経済の実力(ファンダメンタルズ)に基づいてその国にお金が向かっているわけではないからです。
例えばトルコのケースでは、2000年代にキャリートレードにより外国からお金が集まってきて、トルコの銀行は、円建てやドル建てのシンジケートローンで資金調達できるようになり、その資金を国内に貸し付けることが出来ました。人々はモーゲージローンも借りやすくなり、クレジットカードの使用も普及し、トルコ国内ではちょっとしたバブルが起きました。車を買い、家を買い、やがてお決まりの不動産バブルにつながっていきます。
しかし、キャリートレードは必ずどこかでクラッシュする運命にあります。なぜなら、ねずみ講のように、継続的に外から(海外から)の資金流入が不可欠だからです。経済の実力で海外から資金流入が起きる状態ではない場合、どこかでその流れが変わるタイミングが訪れます。トルコリラも、例にもれず2018年に暴落しました。
日本人が良く知っているのは「円キャリートレード」です。
なぜ、リーマン・ショック後に日本円が急上昇したのでしょうか。
リーマン・ショックが起きるまで、世界での円キャリートレードは膨大に膨らみ、トータルで1.5兆ドルもあったと言われています。しかしリーマン・ショックにより各国中央銀行は経済を支えるために政策金利を大幅に下げたことから、日本との金利差が縮小されて円キャリー取引の巻き戻しが起こりました。巻き返しとはつまり、日本円で借りたお金を返し、他通貨を売って日本円を買い戻すことです。これにより、日本円が高騰しました。
今世界では、通貨のキャリートレードだけではなく、あらゆる相場、特に株の世界でキャリートレードが盛んに行われています。
「中央銀行の刺激策で上昇したものは、インフレや弱気相場にかかわらず、必ず下落する。それは時間の問題であり、どれだけ(下落が)深刻なのかという問題である」
経済学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス
相場で大切なことは、大きな利益を得ることよりも、大きな損をしないことだと私は思います。大きな損をすると、投資効率が死んでしまうからです。
参考文献(エミン・ユマルズ著『エブリシング・バブルの崩壊』
本日のオマケ
私の本日の取引
1.日本株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド) 2.世界株式インデックスファンド 10,000円(自動買付) (SBI-SBI・全世界株式インデックス・ファンド)
私の投資方針
1.投資対象は、株式インデックスファンド、又は個別株式のみ 2.世界株式インデックスファンドは、老後まで基本的に売却しない 3.レバレッジ、信用取引等はしない 4.財政状態、経営成績が良く、PER及びPBRが低めの割安株式を買う 5.平時は、預貯金の残高が減らないペースで積み立てる 6.暴落等により含み損が発生した場合、含み損状態を脱するまで、平時より積立額を増額する
投資方針の根拠
1.ジェレミー・シーゲル著『株式投資 第4版』 ・長期の実質トータルリターンは、他の資産に比べ株式が圧勝する 2.山崎元、水瀬ケンイチ著『全面改訂 第3版 ほったらかし投資術』 ・世界株式インデックスファンド、特に(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)がお勧め 3.厚切りジェイソン著『ジェイソン流お金の増やし方』 ・基本的に売らない 4.ジョン・C・ボーグル著『インデックス投資は勝者のゲーム』 ・インデックスファンドは98%の確率で、アクティブファンドに勝てる 5.チャーリー・マンガー著『マンガーの投資術』 ・素晴らしい会社を適正な価格で買う