Data
2021年9月29日に、令和2年度(2020年度)の民間給与実態統計調査が発表されました。
その結果の概要、労働者一人あたり総所得、所得の分布は次の通りです。
民間給与実態統計調査結果の概要
令和2年 12 月 31 日現在の給与所得者数は、5,928 万人(対前年比 1.0%減、62 万人の減少)、1年を通じて勤務した給与所得者数は、5,245 万人(対前年比 0.2%減、10 万人の減少)で、その平均給与は 433 万円(同 0.8%減、33 千円の減少)となっている。
002.pdf (nta.go.jp)
男女別では、給与所得者数は男性 3,077 万人(同 1.5%増、44 万人の増加)、女性 2,168 万人(同 2.5%減、55 万人の減少)で、平均給与は男性 532 万円(同 1.4%減、75 千円の減少)、女性 293 万円(同 1.0%減、29 千円の減少)となっている。
002.pdf (nta.go.jp)
正規、非正規の平均給与についてみると、正規 496 万円(同 1.5%減、77 千円の減少)、非正規 176 万円(同 0.9%増、16 千円の増加)となっている。
002.pdf (nta.go.jp)
この民間給与実態統計調査の対象となっているのは、源泉徴収義務者(民間の事業所に限る。)に勤務している給与所得者です。民間の事業所の従事員(パート・アルバイトなどを含む)や役員は含まれますが、公務員や自営業者等は含まれておりません。
また、この調査は民間の給与所得者の給与について源泉徴収義務者(事業所)の支払額に着目し集計を行ったものですので、その個人の所得全体を示したものではありません。
例えば、複数の事業所から給与の支払を受けている個人が、それぞれの事業所で調査対象となる場合、複数の給与所得者として集計されます。(そのため、実態より低く算定されている可能性があります。)
そこで次に、「民間給与実態統計調査」では把握しきれない人の所得も含めたマクロデータと比較することにより、日本人の平均年収は凡そ433万円程度と言えるのか、不労所得等も合わせた労働者一人あたりの所得はどの程度になるのかを考えます。
マクロデータから計算される所得
内閣府から公表されているマクロデータ、家計可処分所得のデータを参考にすると、不労所得等も合わせた、労働者一人あたりの凡その所得が分かります。
(1)労働者一人あたりの総所得
家計可処分所得額は、下図「可処分所得」の316兆2,374億円です。
これは、オレンジ色の合計である家計所得合計(429兆1,959億円)から、黄色の合計(112兆9,585億円)である税金等を減算して求めます
家計所得合計(429兆1,959億円)を、2020年度の平均就業者数6,676万人で割ると、概算の労働者一人あたり所得合計(約643万円)が計算できます。これは、給与所得、不労所得、年金等、全ての収入を合わせた収入であり、額面です。
また、可処分所得合計(316兆2,374億円)を、2020年度の平均就業者数6,676万人で割ると、概算の労働者一人あたり可処分所得(約474万円)が計算できます。可処分所得とは手取収入です。
つまり、全ての収入を合わせた収入の額面が約643万円であり、税金等を控除した手取収入が約474万円ということです。これが、概算の労働者一人あたりの総所得です。ただし、実際はこれより少額であるはずです。なぜなら、「労働」せずに年金所得のみを得ている方も多く、それらの方々の人数が、先ほどの計算の分母に含まれていないためです。
(2)雇用者一人あたりの年収
同様に、上図「雇用者報酬」(282兆4,812億円)を、2020年度の平均雇用者数5,973万人で割ると、概算の雇用者一人あたりの年収(約473万円)が計算できます。
「民間給与実態統計調査」によると、平均年収は433万円でした。約473万円と比較しても、差額は40万円と、大きな差はありません。
この、「大きな差がない」結果から分かることは、ほとんどの雇用者が、1つの会社からのみ給料を得ているということ等です。
所得の分布(2019年度)
民間給与実態統計調査(2019)と、所得階級人員データ(2019)を用いると、所得の分布が分かります。
※民間給与実態統計調査の「年収」とは額面であるのに対し、給与所得は年収から給与所得控除を控除した金額であるため、年収と給与所得は一致しない(年収>給与所得)ですが、簡便的に、年収=給与所得 と仮定して集計しております。そのため、年間所得の中央値は300万円台前半と計算されたものの実際は300万円台前半よりも低いはずです。一方で、年間所得1億円を超える方も、2万人以上います。
※表中の人数=「給与所得者数+確定申告者数-確定申告者かつ給与所得者」により計算しております。
※所得階級別人員の最新データが2019年であるため、2019年度の所得の分布を計算しております。