愛は技術である。人間の存在理由は、愛。『愛するということ』

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どうしたらもっと人に「愛されるか」ばかり気にしていて、どうしたらもっと人を「愛せるか」を学ぶ人は少ないのが現実です。これが現代の不幸を生み出しています。

愛は技術です。愛こそが、現実の社会生活の中で、より幸福に生きるための最高の技術です。訓練を積むことにより、人を愛せるようになります。なぜなら、人間の存在理由は「愛」だから。

世界的ベストセラーの一つである、エーリッヒ・フロム著『愛するということ 新訳版』を、以下の3つのポイントでご紹介します。

  • 愛」は技術である
  • 人間の存在理由は「愛」
  • 「愛」の4つの要素

「愛」は技術である

フロムは、「愛は技術であり、練習するものである」と言います。愛する能力を高めるためには、全人格的な能力を成長させる必要があります。

愛が人生で最も重要なものだと分かってはいても、ほとんどの人は、愛は学ぶべきものであり、知識をつけることによって愛する能力が高まるとは考えていません。その理由は、主に3つあります。

1.愛することより愛されることに重点を置いているから

ほとんどの人は愛の問題を、愛する能力の問題としてではなく、愛されるという問題としてとらえています。どうすればもっと人から愛されるのか、どうすればモテるのか、という愛されるテクニックばかりに努力が向けられています。

これを達成するために、男性は稼ぎ、社会的ステータスを高め、女性はルックスを磨きます。社会の中での自分という商品の価値を高める方向にしか目がいっていません。

愛する方向に努力を向けず、愛される方向に努力を向けていることが、愛ある人生にできない理由であり、社会から愛をなくしていく根本原因でもあります。

2.愛が芽生えない理由を、自分の能力のなさではなく、対象の問題だととらえているから

これはつまり、愛が芽生えないのを相手のせいにしているということです。愛するにふさわしい相手さえ見つかれば、愛が芽生えるのは簡単だと考え、愛が生まれないのを、自分の能力の欠如だとは考えないのです。

一度親しくなったのに破局を迎えそうなら、相手の人格ではなく、自分の愛する能力の方を疑ってみる必要があります。

恋人関係や結婚生活が続かないのは、本当は相手のせいではなく、自分の人格的な成長が出来ていないせいです。人を愛するための訓練が足りていないということです。

3.恋に落ちると、愛しているを混同しているから

恋に落ちるのは比較的簡単で、生きていれば誰にでも起こることです。しかし本当は、そこから先の「愛している状態」を「継続」することが難しいのであり、ここにこそ「本当の愛」があります。

この「継続的な愛」には、お互いの「努力」や「全人格的な成長」が不可欠です。

二人が性的に惹きつけあって互いに夢中になり、頭に血が上った状態を愛の強さの証拠だと思い込んでいますが、互いに夢中になっている初期の恋人関係は、それまで二人がどれほど「孤独」であったかを示しているにすぎません。普段「孤独」を強く感じており、毎日が「充実していない」人ほど、初期の恋愛状態において、相手に夢中になりやすいからです。

要は、「夢中」になったり「燃え上がるような恋」は、「本当の愛」ではないということです。

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人生において本当に大切なのは、自分から湧き出る、対象を愛するパワーです。これは訓練によって高めることが出来ます。自分の愛する能力を磨けば、自然と人から愛されるようにもなります。愛が技術であることを知り、車の運転技術を学ぶのと同じように、「愛の技術」について学びましょう。

現代人が力を注ぐのはほとんど、富や名声を得ることだけで、愛する訓練を積んでいる人はほとんどいません。富や名声をえれば、愛は自然についてくるものだと勘違いされています。しかし、愛とはそういう次元のものではありません。金儲けや成功とは別個に、愛だけについて学習しなければなりません。「愛」こそが、人生に最も幸せをもたらしてくれるものです。

ではなぜ、愛こそが最も大事と言い切れるのでしょうか。

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Photo by Jill Wellington on Pexels.com

人間の存在理由は「愛」

「愛、それは人間の実存の問題に対する答えである」

人間の全ての活動が、愛を知るためのものです。愛を知ろうと近づき、他と一つになろうとします。その理由は、人は愛を表現しないと、孤独を感じるようにプログラムされているからです。私たちは、「誰が好き」「何が好き」を表現しないと、孤独を感じるのです。

孤立を避けるために恋愛をするし、成功しようとするし、他者と共感しようとするのです。

多くの人は、家で一人きりでひたすら瞑想したりする等、とにかく一人でただ過ごすことが出来ません。なぜならこの、他とは分離された感覚、孤立しているという意識から、多くの苦しみが生まれるからです。孤立を解消するための活動に、例えば次のようなことがあります。

1.お祭り

皆との一体感が得られると不安が消せるので、お祭りは時代・地域を問わずどの民族にも見られます。これらの「人が集まる空間」が好きな人は、日常生活で孤独を感じているパターンが多いということです。

2.SEX

SEXでしか孤独感を解消できない人はSEXに依存してしまい、執着してしまいます。依存や執着になってしまうと、そこに「愛」はなくなります。愛のないSEXだと、一瞬の孤独の解消は出来ても、本当の孤独の解消にはつながりません。

3.集団への同調

人が最も孤立感を克服する解決法として選ぶのが、集団への同調です。皆と同じような思想を持ち、同じような服装をし、同じような生活をして集団に同調すれば、孤独から救われると妄想しています。このような人は、他の活動で自力で孤独感を解消できないタイプの人であり、人一倍孤独感を感じており、その自分の中の感覚に気づいていません。この孤独感の解消の仕方が最も意味がないとフロムが言うのは、偽物の一体感だからです。

4.クリエイティブ

人は、自分の「クリエイティブ」を発揮している時、世界と一体化するので孤独を感じなくなります。クリエイティブを発揮しない決められた仕事や与えられた仕事では、世界との一体感は得られません。

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これらの孤立を解消する方法は全て、完全なものではありません。

完全な一体感を得るための方法は、「他者との融合」すなわち「本当の愛」です。「他者と融合したい」というこの欲望は、人間の最も強い欲望です。地球に引力があるから人が経っていられるのと同じように、人間同士の惹かれあう力があるから、家族や社会が成り立っています。

だから人間は、愛を中心に生きなければなりません。出世や金儲けもある程度大事ですが、愛についての勉強が最も大事です。人生における多くの苦しみを取り去り、幸せになりたいなら、愛について学ぶのが一番の方法です。

『人間の実存とは、それは「愛」の表現である』

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Photo by Charlotte May on Pexels.com

「愛」の4つの要素

本当の愛には、基本的な4つの要素が常に含まれています。その4つの要素とは、①配慮、②責任、③尊重、④知、です。

1.配慮

配慮、つまり「どのくらいその人のことを気にかけているか」が、愛しているかどうかを示します。ただし、全ての人が1日24時間しか与えられていないので、家族、友人、恋人など、全ての人を同じ時間だけ気にかけてあげることはできません。だからせめて、自分が一番愛している人だけは、1日の内に何回か、気にかけるのは当然というニュアンスです。

「愛している」と口では言っているのに、1日のうちに一瞬も気に掛けることがないのであれば、その愛は本当の愛とは言えません。

「愛とは、愛する者の生命と成長を積極的に気にかけることである。この積極的な配慮のないところに愛はない。」

2.責任

責任、つまり「愛する心」を持つ人は、相手の求めに応じます。

3.尊重

尊重、つまり「ありのままのその人を認めて、リスペクトすることです。相手が、「自由に自分らしく成長するのを、応援しなければいけません。「その人らしさ」や、相手の「自由」を認めないところに愛はありません。

そしてこれが出来るためには、互いの「自立」が不可欠です。自分が「自立」していないと、どうしても相手をコントロールしないといけなくなるからです。「自立、自由、尊重」は密接にかかわっています。「自立」して初めて「自由」が手に入るし、「自由」出会って初めて人を「尊重」出来るようになります。

「愛は自由の子であり、決して支配の子ではない」

4.知

知、つまり「愛」には相手を知ることであったり、知識が必要だということです。学ぶ意識のない人の心には、「愛」はありません。

「自分!自分!」というナルシスト状態から「人に関心を持つこと」へシフトし、相手の立場に立ってその人を見てみるのです。これにより初めて、相手を本当に知ることが出来ます。

この「相手を知る」という興味関心の欲求は、人間の根本的な欲求である「人間の秘密を知りたい」という欲求に基づいています。そしてこの「相手の全てを知りたい」という欲求がないところに本当の愛はありません。

つまり、「この人はどんなことで怒るのだろう」、「どんなSEXで本当は一番興奮するのだろう」、「人生で一番大切にしていることは何だろう」、「本当にやりたいことは何だろう」、「相手の将来がどうなるかを側で見ていたい」等、相手の全てを知ろうとしないことに、本当の愛はありません。

「人間を知るための唯一の方法が愛である。愛とは、能動的に相手の中へと入っていくことであり、その結合によって、相手の秘密を知りたいという欲望が満たされる」

「融合において、私は貴方を知り、私自身を知り、全ての人間を知る。命あるものを知るための唯一の方法は、結合の体験によって知ることである。それは、考えて知ることではない。」

「愛の行為において、つまり、自分自身を与え、相手のうちに入っていく行為において、私は世界の全てを発見する」

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Photo by Acharaporn Kamornboonyarush on Pexels.com

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フロムが指摘するように、私も、愛するということより、人から愛されることばかりに目が向いている人が多いように感じます。でも本当は、人を愛することこそが、自分を幸せにするのですよね。

愛することだけでなく、他のあらゆる物事に対して能動的になると、「コントロールできること」が増えるので、楽になると思います。

上述した通り、「自分の愛する能力を磨けば、自然と人から愛されるようになります」ので、恋愛関係だけではなく、他のどんな人間関係でも「愛する能力」は応用できます。

富や名声を得ることと少なくとも同じくらい真剣に、愛について学んで練習してみませんか? 人生における多くの苦しみを取り去り、幸せになりたいなら、愛について学ぶのが一番だからです。

本書に興味を持っていただいた方、詳細は 『 愛するということ 新訳版 』 をご参照ください。

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